2020年10月27日

つみたてNISAとiDeCoとは?~長期・積立・分散投資が可能な2つの非課税制度

金融研究部 企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 梅内 俊樹

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Q1.最近、積み立てをはじめる人が増えていると聞きました。つみたてNISAとiDeCoは、どのような制度ですか?

■つみたてNISAとiDeCoは、長期の積立投資を支える非課税制度
つみたてNISAは、日本在住の20歳以上の方を対象とする少額から始められる積立投資の非課税制度です。毎年40万円を上限に投資信託を購入することができ、積み立てた年から数えて最長20年間は運用益が非課税になる仕組みです(図表1)。積み立て投資ができるのは2042年までとされていますが、2021年に積み立てをスタートすれば、最大で880万円(40万円×22年間)まで、2022年に開始する場合でも最大で840万円(40万円×21年間)まで、非課税投資枠を利用できるようになっています。積み立て時に購入した投資信託はいつでも売却することができ、必要な時にお金を引き出せる利便性も兼ね備えています。ただ、20年が経過する前に投資信託を売ってしまうと、非課税期間はそこで終了し、残りの非課税期間で別の投資信託を購入することはできません。

投資対象は、国が定めた一定の基準を満たした投資信託(ETFを含む)です。利用者が負担する手数料が低水準であることや分配金の頻度が毎月ではないことなど、長期の積み立てに適した商品に限られています。このため、投資初心者でも安心して購入できる商品ラインナップとなっています。なお、一定の基準を満たした投資信託(ETFを含む)は、2020年10月時点で200種類弱あり、その中のどの投資信託を購入できるかは、金融機関ごとに異なっています。
図表1 つみたてNISAのイメージ
一方、iDeCoは日本在住の20歳以上60歳未満の方を対象とする個人向けの年金制度です。個人が自ら積み立てを行い、自ら金融商品を選んで運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取る仕組みです。老後に備えた資産形成を目的とする制度であるため、積み立て可能な期間は60歳までに制限されており、また、資金の引き出しも原則として60歳になるまで認められていません。その反面、税制面で手厚い優遇措置が講じられています。運用益が非課税になるほか、iDeCoに積み立てる資金はすべて所得控除の対象となるため、所得税や住民税を節税できるメリットがあります。受取時には全額が課税対象となりますが、一時金で受け取る場合は退職所得控除が、年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用されるため、税負担は軽減されます。なお、iDeCoに拠出できる年間の掛金限度額は、自営業者、民間被用者、公務員、専業主婦(夫)などの違いにより異なります(図表2)。

投資対象は、各金融機関が独自の基準で選定しています。このため、金融機関ごとに選べる金融商品には違いがあります。ただ通常は、投資信託のほか、原則として元本が確保される預貯金や保険商品など、選べる金融商品の種類は豊富に取り揃えられています。
図表2 iDeCoの拠出限度額

Q2.老後に備えて資産形成をはじめる場合、つみたてNISAとiDeCoのどちらを利用すればいいですか?

■2つの制度の違いを理解した上で、自らに合った制度を選ぶことが大切
つみたてNISAとiDeCoは、いずれも個人の長期・積立・分散投資を支援するために設けられた非課税制度です。通常であれば運用益にかかる20.315%の税金が非課税になるところに共通の特長があります。しかし、詳細を比較すると相違点も多いため、利用にあたっては2つの制度の違いを理解することが大切です。

主な違いとして、運用時以外の税制優遇の有無や資金の引き出しの可否が挙げられます。つみたてNISAでは節税メリットは運用時に限られますが、iDeCoでは運用時だけでなく、拠出時や受取時にも税制優遇を受けられます。一方、つみたてNISAでは資金を自由に引き出すことができますが、iDeCoでは原則として60歳になるまで資金を引き出すことはできません。

こうした違いに着目すると、じっくりと腰を据えて老後に備えたいといった方は、60歳まで非課税メリットを広く受けられるiDeCo、一方、老後までに資金を引き出せる余地を残しておきたいと考えるのであれば、資金を自由に引き出せるつみたてNISA、というような使い分けが考えられます。ただし、所得水準や資産状況、積立目標、年齢、投資方針などによって、好ましい制度は異なります。悩むあまり始められないといったことは避けなければなりませんが、2つの制度の違いを確認した上で、ライフプランやマネープランを踏まえて、自らに合った制度を選ぶことが大切です。
図表3 つみたてNISAとiDeCoの比較

※ その他ジェロントロジー関連のレポートはこちらからご確認下さい。
https://www.nli-research.co.jp/report_category/tag_category_id=15?site=nli

(2020年10月27日「ジェロントロジーレポート」)

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金融研究部   企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

梅内 俊樹 (うめうち としき)

研究・専門分野
企業年金、年金運用、リスク管理

経歴
  • 【職歴】
     1988年 日本生命保険相互会社入社
     1995年 ニッセイアセットマネジメント(旧ニッセイ投信)出向
     2005年 一橋大学国際企業戦略研究科修了
     2009年 ニッセイ基礎研究所
     2011年 年金総合リサーチセンター 兼務
     2013年7月より現職
     2018年 ジェロントロジー推進室 兼務
     2021年 ESG推進室 兼務

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