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- 新型コロナ接触確認アプリ(COCOA)利用意向をもつ人の評価ポイント
2020年10月16日
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1――接触確認アプリの利用意向は伸び悩む
9月の調査における接触確認アプリの利用意向を、6月の調査と比較すると、「ぜひ利用したい(もう利用している)」が12.7%から19.2%に上昇する一方で、「場合によっては利用したい」が28.6%から17.1%へ大幅に低下しており、これら2つを合わせた利用意向がある人全体の割合は、41.3%から36.3%に低下していた(図表1)。前回調査は、調査実施時期が接触確認アプリのリリース時期と重なっていたため、特に関心が高かった可能性がある。
「絶対に利用したくない」は5.0%と、6月調査と変わらなかったが、「今のところ利用したくない」は25.0%から28.5%に上昇していた。接触確認アプリを「知らない・聞いたことがない」は6.7%であり、この3か月間でアプリの認知が広まった様子は見られなかった。
「ぜひ利用したい(もう利用している)」が増加し、「場合によっては利用したい」が減少する傾向や、利用意向なし者が増加する傾向は、ほぼ全年代・地域でみられた(図表1)。
「ぜひ利用したい(もう利用している)」が9月に大幅に上昇していたのが東北地方と九州地方だった。東京や大阪等の特に陽性者が多い地域では、8月初旬に2回目の感染ピークがあり9月にはやや収まりつつあったが、東北地方ではそれよりやや遅い9月半ばに2回目の感染ピークを迎えたことで、9月の調査時に不安が高かった可能性がある。また、九州地方の2回目の感染ピークは、東京や大阪と同じく8月初旬だったが、台風10号で多くの世帯に避難指示が出たことから、避難時を想定してアプリ利用意向が高まった可能性がある。
「絶対に利用したくない」は5.0%と、6月調査と変わらなかったが、「今のところ利用したくない」は25.0%から28.5%に上昇していた。接触確認アプリを「知らない・聞いたことがない」は6.7%であり、この3か月間でアプリの認知が広まった様子は見られなかった。
「ぜひ利用したい(もう利用している)」が増加し、「場合によっては利用したい」が減少する傾向や、利用意向なし者が増加する傾向は、ほぼ全年代・地域でみられた(図表1)。
「ぜひ利用したい(もう利用している)」が9月に大幅に上昇していたのが東北地方と九州地方だった。東京や大阪等の特に陽性者が多い地域では、8月初旬に2回目の感染ピークがあり9月にはやや収まりつつあったが、東北地方ではそれよりやや遅い9月半ばに2回目の感染ピークを迎えたことで、9月の調査時に不安が高かった可能性がある。また、九州地方の2回目の感染ピークは、東京や大阪と同じく8月初旬だったが、台風10号で多くの世帯に避難指示が出たことから、避難時を想定してアプリ利用意向が高まった可能性がある。
2――接触確認アプリについてどのように考えているか
1|全体では、「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」が最多
接触確認アプリについてどのように考えているか聞いたところ、全体では「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」が24.8%と最も高かった(図表2)。次いで「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」が20.3%で続いた。
属性別にみると、女性と61~70歳の高年齢層で「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」「濃厚接触通知があった場合に、優先的に検査を受けられる」と、感染の早期発見や早期収束を期待しているようだった。一方、20~40歳では「周囲の人の多くが利用している」「家族や学校・職場等、身近な人に強く推奨されている」「どのようなものか興味がある」と、感染とは直接の関連が薄いと思われる項目で高かった。
51歳以上で「その他」が高くなっている。その内容を、自由回答からみると、「アプリ対応の機種を持っていない」が比較的多かったほか、アプリの不安定さ、利用者の少なさ、陽性者の登録の少なさ等否定的な意見が多く見られた。中には、「通知が来るのが不安」「陽性、あるいは濃厚接触とわかったら、仕事を休まなくてはいけない」「差別につながる」といった、濃厚接触や陽性がわかることに対する不安もあった。濃厚接触通知が来た場合の検査については、優先的に公費で検査を受けられることをメリットしてとらえる意見と、必ずしも検査を受けられないことに対する不満があり、濃厚接触が確認された場合の自治体による対応の差を見聞きしたことで、アプリに対する評価がわかれたようだ。
6月から9月にかけて「ぜひ利用したい(もう利用している)」が大幅に増加した東北地方と九州地方では「家族や学校・職場等、身近な人に強く推奨されている」が高いことが特徴的だ。
接触確認アプリについてどのように考えているか聞いたところ、全体では「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」が24.8%と最も高かった(図表2)。次いで「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」が20.3%で続いた。
属性別にみると、女性と61~70歳の高年齢層で「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」「濃厚接触通知があった場合に、優先的に検査を受けられる」と、感染の早期発見や早期収束を期待しているようだった。一方、20~40歳では「周囲の人の多くが利用している」「家族や学校・職場等、身近な人に強く推奨されている」「どのようなものか興味がある」と、感染とは直接の関連が薄いと思われる項目で高かった。
51歳以上で「その他」が高くなっている。その内容を、自由回答からみると、「アプリ対応の機種を持っていない」が比較的多かったほか、アプリの不安定さ、利用者の少なさ、陽性者の登録の少なさ等否定的な意見が多く見られた。中には、「通知が来るのが不安」「陽性、あるいは濃厚接触とわかったら、仕事を休まなくてはいけない」「差別につながる」といった、濃厚接触や陽性がわかることに対する不安もあった。濃厚接触通知が来た場合の検査については、優先的に公費で検査を受けられることをメリットしてとらえる意見と、必ずしも検査を受けられないことに対する不満があり、濃厚接触が確認された場合の自治体による対応の差を見聞きしたことで、アプリに対する評価がわかれたようだ。
6月から9月にかけて「ぜひ利用したい(もう利用している)」が大幅に増加した東北地方と九州地方では「家族や学校・職場等、身近な人に強く推奨されている」が高いことが特徴的だ。
2|利用意向がある人では「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」が最多
接触確認アプリについてどのように考えているかを利用意向別にみると、いずれも「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」が高く、利用意向による差は小さかった。また、当初から話題になることが多いセキュリティについて「セキュリティに配慮がある」と考えている割合も、利用意向による差は小さく、いずれも1割程度にとどまっていた。これらのことから、アプリを利用している人に対して直接的な感染予防の効果を期待できないことや、セキュリティの問題が、利用意向の違いに大きな影響を及ぼしていることはなさそうだ。
一方、「ぜひ利用したい(もう利用している)」と考えている人では、「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」「濃厚接触があった場合に、優先的に検査を受けられる」が特に高く、感染の早期発見や早期収束を期待しているようだった。また、「家族や学校・職場等、身近な人に強く推奨されている」も高かった。「場合によっては利用したい」も「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」「濃厚接触があった場合に、優先的に検査を受けられる」が高くなっていた。「どのようなものか興味がある」は「場合によっては利用したい」で特に高かった。
利用意向が「どちらともいえない」「今のところ利用するつもりはない」「絶対に利用したくない」と考えている人では、「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」のみが高く、感染の早期発見や早期収束に対してはあまり同意されなかった。周囲の人もあまり利用しておらず、身近な人から推奨もされていないようだった。また、「絶対に利用したくない」と考えている人で「その他」が多かった。「その他」は前述のとおり否定的な意見だった。
「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」や「濃厚接触があった場合に、優先的に検査を受けられる」等の自発的な考えと、「家族や学校・職場等、身近な人に強く推奨されている」等の他者からの推奨が利用意向に影響しているようだ。
接触確認アプリについてどのように考えているかを利用意向別にみると、いずれも「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」が高く、利用意向による差は小さかった。また、当初から話題になることが多いセキュリティについて「セキュリティに配慮がある」と考えている割合も、利用意向による差は小さく、いずれも1割程度にとどまっていた。これらのことから、アプリを利用している人に対して直接的な感染予防の効果を期待できないことや、セキュリティの問題が、利用意向の違いに大きな影響を及ぼしていることはなさそうだ。
一方、「ぜひ利用したい(もう利用している)」と考えている人では、「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」「濃厚接触があった場合に、優先的に検査を受けられる」が特に高く、感染の早期発見や早期収束を期待しているようだった。また、「家族や学校・職場等、身近な人に強く推奨されている」も高かった。「場合によっては利用したい」も「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」「濃厚接触があった場合に、優先的に検査を受けられる」が高くなっていた。「どのようなものか興味がある」は「場合によっては利用したい」で特に高かった。
利用意向が「どちらともいえない」「今のところ利用するつもりはない」「絶対に利用したくない」と考えている人では、「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」のみが高く、感染の早期発見や早期収束に対してはあまり同意されなかった。周囲の人もあまり利用しておらず、身近な人から推奨もされていないようだった。また、「絶対に利用したくない」と考えている人で「その他」が多かった。「その他」は前述のとおり否定的な意見だった。
「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」や「濃厚接触があった場合に、優先的に検査を受けられる」等の自発的な考えと、「家族や学校・職場等、身近な人に強く推奨されている」等の他者からの推奨が利用意向に影響しているようだ。
3――ダウンロードの動向
今回の調査結果から、接触確認アプリを「ぜひ利用したい(もう利用している)」は6月時点より増加していたが、「場合によっては利用したい」をあわせると減少していた。
アプリに対しては、全体では「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」と考えている割合が最も高かったが、アプリの利用意向がある人では、それ以上に、感染の早期発見や早期収束に対するメリットを感じていた。しかし、前稿のとおり、アプリ利用意向が低いのは、感染や検査体制、治療体制に対する不安が相対的に少ない人に多いことが推測され、そもそも新型コロナウイルスに対する不安感が低いので現行のアプリに対してメリットを感じていないと言えるだろう。
接触確認アプリは、リリース直後は関心が高く、ダウンロード数も多かった。7月に入ってからは、全国的に新規陽性者数が増加した7月にはダウンロード数も伸びたものの、陽性者数が減少基調に転じた8月以降はダウンロード数も急激に減少するといった推移をたどっている2。このまま感染が収まっていくことを願うばかりであるが、収まっていけばアプリ利用意向も低迷する懸念がある。
アプリ導入当時、6割の人がアプリを使えばロックダウンを回避できるといった研究結果が引用されたことで、「現状では、利用者が少なく、6割に到達しそうにないから無意味だ」という否定的な意見が聞かれるようになったが、他の対策を併用することで、もっと少ない普及率でも十分効果が得られるといった計算も示されはじめている3。利用者が多いに越したことはないが、6割に到達する見込みがないからと言って無駄ということではない。
秋・冬になれば、寒くなり部屋の換気は悪くなるほか、国内だけでなく海外との往来も活発化する等、油断できない状況が続くと考えられる。引き続き、感染対策をしながら社会活動を行う必要があるが、現在、私たちが感染収束のためにできることは、「密」状態の回避、手洗い、飛沫防止のための工夫以外では、こういったアプリを活用することによって濃厚接触の可能性をいち早く知り、周囲へ最大限の注意を払うことぐらいしかない。
アプリ普及に向けて、民間企業では、アプリを利用することで宿泊料金を割り引きしたり、キャッシュレス決済と連携する動きがあるようだ4。接触確認アプリをめぐる動向に今後も注目していきたい。
2 篠原卓也「新型コロナCOCOA普及の意義~接触確認アプリは、感染拡大防止にどのくらい役立つか?」ニッセイ基礎研究所 研究員の眼, 2020年10月1日
3 日本大学生産工学部「COCOA(接触確認アプリ)を利⽤したCOVID-19(コロナ)感染者数削減効果」2020年7月28日(http://www.ka.cit.nihon-u.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/07/COVID-19_COCOA_Omae.pdf)
4 日経クロステック「1000万DLまで来た接触確認アプリ、効果を阻む「あの問題」を平担当副大臣に直撃」(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/04406/)
アプリに対しては、全体では「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」と考えている割合が最も高かったが、アプリの利用意向がある人では、それ以上に、感染の早期発見や早期収束に対するメリットを感じていた。しかし、前稿のとおり、アプリ利用意向が低いのは、感染や検査体制、治療体制に対する不安が相対的に少ない人に多いことが推測され、そもそも新型コロナウイルスに対する不安感が低いので現行のアプリに対してメリットを感じていないと言えるだろう。
接触確認アプリは、リリース直後は関心が高く、ダウンロード数も多かった。7月に入ってからは、全国的に新規陽性者数が増加した7月にはダウンロード数も伸びたものの、陽性者数が減少基調に転じた8月以降はダウンロード数も急激に減少するといった推移をたどっている2。このまま感染が収まっていくことを願うばかりであるが、収まっていけばアプリ利用意向も低迷する懸念がある。
アプリ導入当時、6割の人がアプリを使えばロックダウンを回避できるといった研究結果が引用されたことで、「現状では、利用者が少なく、6割に到達しそうにないから無意味だ」という否定的な意見が聞かれるようになったが、他の対策を併用することで、もっと少ない普及率でも十分効果が得られるといった計算も示されはじめている3。利用者が多いに越したことはないが、6割に到達する見込みがないからと言って無駄ということではない。
秋・冬になれば、寒くなり部屋の換気は悪くなるほか、国内だけでなく海外との往来も活発化する等、油断できない状況が続くと考えられる。引き続き、感染対策をしながら社会活動を行う必要があるが、現在、私たちが感染収束のためにできることは、「密」状態の回避、手洗い、飛沫防止のための工夫以外では、こういったアプリを活用することによって濃厚接触の可能性をいち早く知り、周囲へ最大限の注意を払うことぐらいしかない。
アプリ普及に向けて、民間企業では、アプリを利用することで宿泊料金を割り引きしたり、キャッシュレス決済と連携する動きがあるようだ4。接触確認アプリをめぐる動向に今後も注目していきたい。
2 篠原卓也「新型コロナCOCOA普及の意義~接触確認アプリは、感染拡大防止にどのくらい役立つか?」ニッセイ基礎研究所 研究員の眼, 2020年10月1日
3 日本大学生産工学部「COCOA(接触確認アプリ)を利⽤したCOVID-19(コロナ)感染者数削減効果」2020年7月28日(http://www.ka.cit.nihon-u.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/07/COVID-19_COCOA_Omae.pdf)
4 日経クロステック「1000万DLまで来た接触確認アプリ、効果を阻む「あの問題」を平担当副大臣に直撃」(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/04406/)
(2020年10月16日「基礎研レター」)

03-3512-1783
経歴
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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