コラム
2020年10月01日

新型コロナ COCOA普及の意義-接触感染アプリは、感染拡大防止にどのくらい役立つか?

保険研究部 主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   篠原 拓也

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新型コロナウイルスの感染拡大が始まって、9ヵ月以上が経過した。

世界では、死亡者数で、アメリカが20万人、ブラジルが14万人、インドが9万人に達している。感染者数では、アメリカが707万人、インドが622万人、ブラジルが474万人を超えている。インドでは感染拡大のペースが止まらず、いずれ感染者数でアメリカを上回るとみる研究者も多い。世界全体で感染者数は3350万2430人、死亡者数は100万4421人。日本の感染者数は8万3010人、死亡者数は1564人(横浜港に停留したクルーズ船を含まない)に達している。(9月30日現在/世界保健機関(WHO)の“WHO COVID-19 Dashboard”より)
 
日本では、7~8月に感染者数の増加がみられた。緊急事態宣言が出ていた4~5月を上回り、全国各地で感染者のクラスターが発生した。重症者や死亡者の増加が懸念されたが、これまでのところ、4~5月の水準には達していない。現在は、8月のピーク時に比べると感染状況はやや落ち着いている。
 
そんななか、政府と民間が一体となって進める消費喚起策Go Toキャンペーンも浸透しつつある。政府は、10月1日から東京をGo Toトラベルの対象に追加した。また、Go Toトラベルの地域共通クーポンの配布や、Go Toイートもスタートした。Go Toイベント、Go To商店街も予定されている。
 
そうなると、街や観光地に繰り出した人々が、気づかないうちに陽性者と接触する可能性も高まる。政府は、6月19日に接触確認アプリをリリースして、スマホを使った通知システムを開始した。このアプリが普及すれば、感染拡大防止に効果があるはずだ。今回は、接触確認アプリの普及について考えてみよう。

◆ダウンロード数が増えれば効果が高まる

接触確認アプリは、英語名「Contact Confirming Application」を略して“COCOA”という。厚生労働省が、大手通信事業者などを含む「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」と共同で開発した。COCOAは、スマホを利用して陽性者との接触状況をみるものだ。多くの人がスマホにアプリをインストールすることで感染拡大を防ぐ狙いがある。
 
COCOAのダウンロード数は、6月19日の公開以降、徐々に伸びて、9月30日17時時点で約1778万件(陽性登録件数は、948件)となっている。いまのペースで伸びていくと、ダウンロード数が2000万件に達するのは11月頃となる。ただ2000万件でも、日本の人口の2割に満たないため、効果のほどは見通せない。
 
また、COCOAの効果は利用者数が増えれば、単純に比例して伸びるわけではない。仮に、100人の集団でCOCOAが普及していくことで、単純に1対1の接触をどれくらい把握できるかを考えてみよう。この100人のなかで、誰かと誰かが接触するパターンは、100人から2人を抜き出す場合の数で、4950通り(=100×99÷2)ある。
 
仮に、100人中20人がCOCOAを利用しているとする。COCOAが役立つのは、接触した2人がいずれもCOCOAを使っているケースで、190通り(=20×19÷2)だ。COCOAの効果は3.8%(=190÷4950)にとどまる。
 
COCOAの利用者が、2倍の40人に増えたらどうなるだろうか。接触した2人が、いずれもCOCOAを使っているケースは780通り(=40×39÷2)に増える。COCOAの効果は、15.8%(=780÷4950)に上昇し、20人の場合と比べて4倍以上となる。同様に、利用者が30人から60人に増える場合も、COCOAの効果は8.8%から35.8%へと4倍以上に上昇する。
 
このように、COCOAには、利用者が増えると効果が加速度的に上昇していく、という特徴がある。

◆アプリの普及には制約がある

ただ、一つ問題がある。それは、スマホ利用者全員が、このアプリを使えるわけではないことだ。iPhoneの場合はiPhone 6S以降の端末でOSがiOS 13.5以上、Android端末の場合はOSがAndroid 6.0以上でないと利用できない。
 
こうしたアプリは、人口の一定割合(一説には6割ともいわれる)以上が利用することで、感染拡大防止の効果が上がるとされているが、普及には、OSバージョン上の制約があることになる。COCOAは、順次、画面デザインや機能がアップデートされる予定だ。今後、アプリの効果を上げるには、対応端末を拡大したり、ダウンロード数を増やしたりする取り組みが求められる。
 
このアプリは、ブルートゥースという近接通信の仕組みを使って、アプリ同士で人と人の接触を検知して記録する。具体的には、過去14日間に陽性者との間で、概ね1メートル以内の距離で15分以上近接状態が続いた場合に、陽性者との接触に関する情報を通知する。通知では、適切な行動と、帰国者・接触者相談センターへの相談方法などがガイダンスされる。
 
接触に関する情報は各端末で保存されるだけで、政府のサーバーで管理されるわけではない。アプリをインストールしてもユーザー登録はなく、メールアドレスや電話番号、名前や住所の登録も不要。個人のプライバシー保護には、十分配慮した仕組みとなっている。

◆ウイルスの感染拡大と、アプリの普及、どちらの勢いが強いか?

COCOAのダウンロード数は、公開以来、伸びてきている。それでは、新型コロナウイルスの感染拡大と、アプリの普及では、どちらの勢いが強いのだろうか? アプリの公開日から7日間(9/25-29は、データ判明の都合上5日間)ごとに、新規陽性者数とアプリのダウンロード数の推移をみてみよう。
 
新規陽性者数がピークを迎えた7/31-8/6の7日間に、両者の高さが大体揃うように縮尺を調整して、棒グラフで比較するとつぎのようになった。
新規陽性者数とアプリのダウンロード数の推移
ダウンロード数は、配信が始まった最初の7日間は急激に伸びた。7月に入ると、水準はやや落ち着いたものの、新規陽性者の増加とともに、ダウンロード数も伸びていった。
 
しかし8月に入って、新規陽性者が減少基調に転じると、ダウンロード数は大きく低下している。9月中旬以降は、7日間のダウンロード数が50万件を割り込む状況となっている。
 
つまり、8月以降、アプリの普及は、新型コロナウイルスの感染拡大よりも勢いが弱くなっている。ウイルスの感染拡大が落ち着く一方で、人々のアプリへの関心は、それを上回る勢いで急速に薄れつつあるといえそうだ。
 
すでにみたように、COCOAには、利用者が増えると効果が加速度的に上昇していく、という特徴がある。アプリの効果が上がれば、今秋以降にやって来るとみられる感染拡大の波に対する、有効な防止策として期待できるだろう。
 
アプリが使える環境なのに、まだアプリを使っていないという人は、まずは、自分のスマホにCOCOAをインストールして利用を開始してみよう。次に、家族や友人・知人にも利用を勧めて、社会全体にアプリを普及させていくことが大切だ。
 
COCOAの普及と利用は、石鹸での手洗い、咳エチケット、3密の回避などと並んで、感染拡大防止に向けた身近な取り組みとして、1人ひとりが行っていくことが大事だと思われるが、いかがだろうか。
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保険研究部   主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品、保険計理

(2020年10月01日「研究員の眼」)

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