コラム
2020年10月13日

韓国のアンケート調査からみた世代間の意識の違い-若者が「平等」よりも求めるものとは?-

生活研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   金 明中

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前回までの拙稿では2回続けて韓国における世代間の葛藤と格差について紹介した。今回は、アンケート調査に基づいて韓国における世代間の意識の差について話したい。
 
韓国保健社会研究院が2016年に発表した調査結果では、回答者の62.2%が「世代間の葛藤が深刻である」と答えた。この結果は2014年調査 の56.2%より6ポイントも高い数値である。また、大韓商工会議所が2020年に実施した調査によると、サラリーマンの63.9%がジェネレーションギャップを感じていることが明らかになった。「成果のために夜勤をすることは仕方がない」に対して同意する20代や30代の割合はそれぞれ26.9%と27.2%で、40代と50代の35.8%と42.8%を大きく下回った。また、「組織のために個人を犠牲にすることができる」に対して同意する20代と30代の割合はそれぞれ35.2%と33.5%で40代と50代の47.4%や66.7%を大きく下回った。
若年世代と中高年世代の価値観比較
ソウル市は2019年10月から12月の間に19歳~39歳(以下、若年世代)の男女1万人と40~64歳(以下、中高年世代)の男女1,500人を対象に世代間の価値観を比較する調査を行った1。調査はAとBという二つの選択肢の中からAを選好する場合は、その選好する強さに応じて-3点、-2点、-1点の中から一つを、Bを選好する場合も同様に3点、2点、1点の中から一つを選択するようにしている。A,Bどちらでもない場合には0点を選択するようにし、若年世代と中高年世代平均点を比較した。
 
まず、「分配を重視する社会」(-3点~-1点)と「成長を重視する社会」(1点~3点)に対する選好度を聞いたところ、若年世代の平均点数は0.47点で、中高年世代(0.19点)よりも成長を重視する傾向が強かった。また、「個人間の能力の差を補った平等社会」(-3点~1点)と「個人間の能力の差を認めた競争力重視社会」(1点~3点)に対する若年世代の平均点は0.55点で、中高年世代の0.44点より高く競争力を重視する社会を選好していることが分かった。
 
1 ソウル市(2019)「世代均衡指標開発のためのソウル青年実態調査結果」

チームの成果より個人の成果

一方、「税金を多く納める代わりに危険に対する国の責任が重い社会」と「税金を少なめに納める代わりに危険に対する個人の責任が重い社会」に対する若年世代の平均点は-0.31点で、前者を重視しているが、中高年世代(-0.36点)よりは個人の責任や役割を重視していた。
 
また、チームで作業をした場合、「チーム員すべてが評価されることが公正である」と「寄与度が異なるのに同一に評価されるのは公正ではない」に対する中高年世代の平均点数は0.14点で中立的な立場を見せていたのに比べて、若年世代の平均点数は0.83点で後者に近く、協同を口実としたフリーライダー(ただ乗り)は認めないという立場を示した。
 
更に、非正規職員の正規職員化と関連して「同一労働に対しては一定の資格条件を満たした場合、正規職化することが望ましい」(-3点~0点)と「同一労働をしていても厳しい手続きを経ずに正規職化することは公正ではない」(0点~3点)に対する選好度を聞いたところ、中高年世代の平均点は-0.01点で中立的な立場であったことに比べて、若年世代は0.27点で処遇の平等より公正な手続きの重要性を重視していることが明らかになった。昨年、法務部長官に任命された曹国氏の娘の不正入学疑惑に若者の多くが怒りを感じたのはこの調査結果を如実に反映していると言えるだろう。
 
結婚、出産、住居、社会移動に関する意見を5段階2で聞いた項目でも、若年世代と中高年世代の意見の差が見られた。まず、「自分がおかれている社会的環境は自分が希望する時に結婚することを難しくしている(難しくした)」、「自分がおかれている社会的環境は自分が希望する時に出産することを難しくしている(難しくした)」に対する平均点数は若年世代が3.68と3.85で、中高年世代の2.79と2.74より高く、中高年世代に比べて社会的環境が本人の結婚や出産に負の影響を与えているという意識を持っていることが分かった。また、「自分の能力と努力で希望する家で暮らすことができる(暮らせた)」(1~5点、暮らせると思うほど高い点数)に対する若年世代の平均点は2.73で、中高年世代の3.14より低く、中高年世代に比べて希望する家で暮せる可能性に悲観的な見方をしていた。
 
2 1~5点尺度、1は「まったく同意しない」、2は「あまり同意しない」、3は「どちらとも言えない」、4は「やや同意する」、5は「強く同意する」

敗者復活しにくく親にも頼れない

「社会移動」や「敗者復活の可能性」(1~7点、可能性が高いほど高い点数)についての平均点数も若年世代はそれぞれ3.44と3.42で、中高年世代の4.35や4.36より低くネガティブな反応が多かった。
 
世代内においても意識の差が現れた。「大変なことがある時、誰に助けを求めるのか」という質問に対して、「親」と答えた割合は、本人が経済的に上流階層だと思う若年層が60.6%で、本人が経済的に下流階層だと思う若年層の46.1%を大きく上回った。
 
以上の調査結果から若年世代は国よりは個人の責任を、分配よりは成長を、処遇の平等より公正な手続きを重視していること等が明らかになった。彼らは公正な社会の中で安心して働くことを最も望んでいると考えられる。しかしながら、最近、韓国国内で起こっている指導層の公正性の欠如は若年世代を大きく失望させたに違いない。文在寅政権は残された1年8カ月に社会の公正をどう実現・改善するかについて慎重に考える必要があるだろう3
 
※ 本稿の詳細は、現代韓国朝鮮学会の『現代韓国朝鮮研究』第20号に近日公開される予定である。
 
 
3  本稿は「韓国のアンケート調査からみた世代間の意識の違い」ニューズウィーク日本版 2020 年 10 月9 日 に掲載されたものを加筆・修正したものである。
https://www.newsweekjapan.jp/kim_m/2020/10/post-25_1.php
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生活研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会政策比較分析、韓国経済

(2020年10月13日「研究員の眼」)

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