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なぜ韓国の失業率は低いのか、若者の実際の失業率は26.8%?

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
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新型コロナウイルスの感染拡大以降、韓国の雇用状況が悪化
しかしながら、韓国の失業率をOECD加盟国と比べると、それほど高い水準ではないことが分かる。例えば、2020年6月時点の韓国の全体失業率と15~24歳の失業率はそれぞれ4.3%と10.8%で、コロンビア、スペイン、ギリシャと大きな差があり、OECD平均8.0%と17.9%も大きく下回っている。韓国における失業率が最も高かった時期は、アジア経済危機以後の1998年と1999年で、当時の失業率はそれぞれ7.0%と6.3%であった。と言っても2020年6月のOECD平均失業率よりも低い水準である。
韓国の失業率が統計上において低い水準を維持している理由は?
15歳以上人口は、働く意思のある「労働力人口」と、働く意思のない「非労働力人口」に区分することができる。労働力人口とは、労働に適する15歳以上の人口のうち、労働する意思を持つ者で、労働力調査期間である一週間に、収入を伴う仕事に多少でも従事した「就業者」(休業者を含む)と、求職中であった「失業者」の合計を指す。
一方、非労働力人口とは、労働力人口以外の者で、病気などの理由で就業できない者と就業能力があるにも関わらず働く意思がない者を合計した人口である。これには、職場からリタイアした高齢者、職探しをあきらめた人、働きに出ない、あるいは出られない専業主婦や学生などが含まれる。上記の定義を基準とした2020年6月時点における韓国の15~64歳の非労働力人口の割合は30.9%で、同時点の日本の20.4%より高い。さらに、15~24歳と25~34歳の非労働力人口の割合はそれぞれ71.1%と23.1%で、日本の50.2%や12.1%を大きく上回っている。
2020年6月時点の休業者の構成比を年齢階層別にみると、60歳以上が38.6%で最も高く、次いで50~59歳(19.4%)、20~29歳(18.1%)の順になっている。しかしながら、前年同月と比べた増加率は30~39歳や20~29歳がそれぞれ29.0%、28.1%と他の年齢階層の増加率を大きく上回っている。新型コロナウイルスの影響で、20代や30代を中心とする臨時職や日雇い職の仕事がなくなった可能性が高い。2019年8月現在の非正規労働者の割合は36.8%で、2008年以降最も高い数値を記録しており、近年は若者の非正規労働者も増加傾向にある。このように多くの人が非正規労働者として労働市場に参加することにより就業者数は増え、統計上の失業率は低下しているのだ。
韓国政府は、既存の失業率が労働市場の実態を十分に反映していないと判断し、2015年から毎月発表する「雇用統計」に、失業率と共に「拡張失業率」を公表している。「拡張失業率」は国が発表する失業者に、潜在的な失業者や不完全就業者(週18時間未満働いている者)を加えて失業率を再計算したものである。このような計算方式によって算出された2020年6月時点の拡張失業率は、全体が13.9%、15~29歳が26.8%で、上記で説明した既存の定義の失業率、全体4.3%と15~29歳10.7%を大きく上回っている。この、15~29歳の26.8%という数字のほうが、実際の若者の失業状況をよく表している数字であるのかもしれない。
1 韓国における自営業者の詳細は「韓国政府、ポストコロナ対策として「国民皆雇用保険」の導入に意欲」ニューズウィーク日本版2020年5月20日を参照すること。
https://www.newsweekjapan.jp/kim_m/2020/05/post-18.php
新しい雇用創出や不安定雇用の解消に対する工夫を

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
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