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- 貿易統計20年7月-輸出は最悪期を脱するも、回復ペースは緩慢
2020年08月19日
1.輸出の減少幅が縮小
財務省が8月19日に公表した貿易統計によると、20年7月の貿易収支は116億円の黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲900億円、当社予想は557億円)を上回る結果となった。輸出の減少幅が6月の前年比▲26.2%から同▲19.2%へと縮小する一方、輸入の減少幅が6月の前年比▲14.4%から同▲22.3%へと拡大したため、貿易収支は前年に比べ2,655億円の改善となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲21.7%(6月:同▲26.9%)、輸出価格が前年比3.2%(6月:同1.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲14.0%(6月:同▲0.8%)、輸入価格が前年比▲9.7%(6月:同▲13.7%)であった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲21.7%(6月:同▲26.9%)、輸出価格が前年比3.2%(6月:同1.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲14.0%(6月:同▲0.8%)、輸入価格が前年比▲9.7%(6月:同▲13.7%)であった。
季節調整済の貿易収支は▲348億円と5ヵ月連続の赤字となったが、6月の▲4,109億円から赤字幅が大きく縮小した。輸出が前月比4.7%と2ヵ月連続で増加する一方、輸入が前月比▲2.7%と3ヵ月連続の減少となった。
2.米国向け輸出が自動車を中心に急回復
20年7月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲21.5%(6月:同▲47.0%)、EU向けが前年比▲36.7%(6月:同▲33.0%)、アジア向けが前年比▲11.4%(6月:同▲17.7%)、うち中国向けが前年比8.5%(6月:同▲2.0%)となった。
20年7月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比50.2%(6月:同4.6%)、EU向けが前月比▲1.7%(6月:同3.9%)、アジア向けが前月比5.8%(6月:同▲3.2%)、中国向けが前月比7.7%(6月:同▲0.5%)、全体では前月比3.5%(6月:同3.2%)となった。
EU向けは低迷が続いたが、米国向けが自動車を中心に急回復し、中国向けは半導体製造装置、半導体電子部品の高い伸びから輸出全体としてもコロナ前の水準に近付いている。
世界的な経済活動の再開を受けて、輸出は最悪期を脱したと判断される。ただし、輸出数量指数(季節調整値)は3月から5月までの3ヵ月で20%以上落ち込んでおり、6、7月の戻りはその2割程度にすぎない。世界的に感染の収束が見えない中で、経済活動の水準が元に戻るまでには時間を要するため、先行きの輸出の回復ペースは急激な落ち込みの後としては緩やかなものにとどまることが予想される。
EU向けは低迷が続いたが、米国向けが自動車を中心に急回復し、中国向けは半導体製造装置、半導体電子部品の高い伸びから輸出全体としてもコロナ前の水準に近付いている。
世界的な経済活動の再開を受けて、輸出は最悪期を脱したと判断される。ただし、輸出数量指数(季節調整値)は3月から5月までの3ヵ月で20%以上落ち込んでおり、6、7月の戻りはその2割程度にすぎない。世界的に感染の収束が見えない中で、経済活動の水準が元に戻るまでには時間を要するため、先行きの輸出の回復ペースは急激な落ち込みの後としては緩やかなものにとどまることが予想される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年08月19日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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