2020年07月31日

雇用関連統計20年6月-失業率は低下も、失業の中身が深刻化

経済研究部 経済調査部長   斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント改善の2.8%

総務省が7月31日に公表した労働力調査によると、20年6月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.8%となった(QUICK集計・事前予想:3.1%、当社予想は3.2%)。

労働力人口が前月から6万人増加する中、就業者数が8万人増加したため、失業者数は前月から▲3万人減の194万人(いずれも季節調整値)となった。失業者数は若干減少したが、失業者の内訳を求職理由別(季節調整値)にみると、雇用契約の満了や事業の都合といった非自発的離職による者の割合が大きく上昇しており、失業の中身は深刻化している。
完全失業率と就業者の推移/求職理由別失業者割合
就業者数は前年差▲77万人の減少(5月は同▲76万人)となった。産業別には、新型コロナウィルス感染拡大に伴う外出自粛、休業の影響を強く受けた宿泊・飲食サービス(前年差▲38万人)、生活関連サービス・娯楽業(同▲22万人)の減少が目立つ。
雇用形態別雇用者数 雇用者数(役員を除く)は前年に比べ▲74万人の減少(5月は前年差▲61万人)となった。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差30万人増(5月:同▲1万人減)と増加に転じる一方、非正規の職員・従業員数は前年差▲104万人減(5月:同▲61万人減)と減少幅が大きく拡大した。売上減少、業績悪化を受けて、非正規の雇用調整が本格化している。

2.現時点では、休業者から失業者への移行は限定的

緊急事態宣言が発令された20年4月に597万人(前年差420万人増)と過去最多となった休業者数は、5月には423万人(前年差274万人増)、6月には236万人(前年差90万人増)と徐々に減少しているものの、引き続き高水準となっている。

産業別の休業率(休業者/就業者)をみると、新型コロナウィルス感染拡大に伴う外出自粛、休業要請を受けて、4月に急上昇した飲食業(4月:29.6%→5月:20.5%→6月:6.8%)、娯楽業(4月:39.7%→5月:26.3%→6月:8.9%)、宿泊業(4月:31.3%→5月:37.1%→6月:17.5%)の休業率は大きく低下したが、引き続き新型コロナの影響が顕在化する前の水準は上回っている(数値はいずれも原数値)。
就業者増減の内訳/主な産業別休業率
労働力調査のフローデータ1を用いて、5月に休業していた者が6月にどの就業状態に移行したかをみると、20年5月に休業者であった375万人のうち、6月も引き続き休業者が170万人(45.3%)、従業者に移行が178万人(47.5%)、失業者に移行が7万人(1.9%)、非労働力人口に移行が20万人(5.3%)となった(括弧内は割合)。
前月休業者の当月の就業状態 5月に続き、前月の休業者の50%弱が休業者にとどまり、50%弱が従業者に戻っており、失業者への移行は2%弱にとどまっている。現時点では、一部で見られたように休業者のほとんどが失業者になるといった事態は回避されている。

ただし、休業者は平常時に比べると依然として高水準にとどまっていること、企業収益の悪化や景気の先行き不透明感の高まりを受けて、企業が新規雇用を抑制する姿勢は一段と高まる可能性が高いことから、失業率がさらに上昇することは避けられないだろう。現時点では、失業率は20年末頃に4%程度まで上昇すると予想している。
 
1 労働力調査のフローデータは、ストックデータの2分の1の調査世帯を集計対象としていること、総数に転出者、転入者を含むことなどから、ストックの増減とフローの値は一致しない

3.有効求人倍率は1倍割れが近づく

厚生労働省が7月31日に公表した一般職業紹介状況によると、20年6月の有効求人倍率は前月から▲0.09ポイント低下の1.11倍(QUICK集計・事前予想:1.15倍、当社予想は1.11倍)となった。有効求人数が前月比▲1.9%(5月:同▲8.6%)の減少となる一方、有効求職者数が前月比5.4%(5月:同0.7%)の増加となった。
有効求人倍率(季節調整値)の推移 有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から▲0.16ポイント低下の1.72倍となった。新規求人数(前月比8.2%)、新規求職申込件数(前月比18.2%)ともに増加したが、新規求職申込件数の増加幅が大きく上回ったことが求人倍率の低下につながった。

新規求人数は2ヵ月連続で増加したが、直近のピークである19年12月の水準を2割以上下回っている。一方、失業者の増加を反映し、新規求職申込件数はこのところ大幅に増加している。

企業の求人意欲が大きく低下する一方、失業者の増加を反映し求職者数の増加が見込まれるため、有効求人倍率は労働市場の需給バランスが一致していることを意味する1倍を割り込む可能性が高いだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2020年07月31日「経済・金融フラッシュ」)

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