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- 消費者物価(全国20年6月)-コアCPI上昇率はマイナスを脱するも、消費税率引き上げ・教育無償化の影響を除けば引き続きマイナス
2020年07月21日
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1.コアCPI上昇率は3ヵ月ぶりにマイナスを脱する
コアCPIの内訳をみると、灯油(5月:前年比▲16.5%→6月:同▲16.7%)の下落幅は若干拡大したが、電気代(5月:前年比▲2.0%→6月:同▲1.6%)、ガス代(5月:前年比▲1.5%→6月:同▲1.2%)、ガソリン(5月:前年比▲16.4%→6月:同▲12.2%)の下落幅が縮小したことから、エネルギー価格の下落率は5月の前年比▲6.7%から同▲5.3%へと縮小した。
また、電子レンジ、電気掃除機等の家具・家事用品が5月の前年比1.7%から同3.1%へと伸びを高めたこと、携帯電話通信料が前年6月の値下げ効果が一巡し、上昇に転じた(5月:前年比▲3.3%→6月:同1.6%)ことを主因として、通信が5月の前年比▲0.7%から同1.8%と2年3ヵ月ぶりの上昇となったこともコアCPIを押し上げた。一方、新型コロナウィルス感染拡大に伴う観光需要の急速な落ち込みを背景に、宿泊料(5月:前年比▲4.0%→6月:同▲6.6%)、外国パック旅行(5月:前年比▲6.2%→6月:同▲7.1%)の下落幅が拡大したことなどから、教養娯楽が5月の前年比1.2%から同1.0%へと伸びが低下した。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.59%(5月:▲0.71%)、食料(生鮮食品を除く)が0.18%(5月:0.22%)、その他が0.08%(5月:▲0.04%)であった(当研究所試算による消費税、教育無償化の影響を除くベース)。
2.上昇品目数が減少
3.コアCPI上昇率は秋以降、はっきりとしたマイナスに
6月のコアCPI上昇率は、エネルギー価格の下落幅縮小などから、3ヵ月ぶりにマイナスを脱した。ただし、足もとの消費者物価上昇率は消費税率引き上げ(+1.0%程度)+教育無償化(▲0.7%程度)の影響で0.3%程度押し上げられており、この影響を除けば引き続きマイナスとなっている。
先行きについては、5月以降の原油価格上昇を受けてエネルギー価格の下落幅がさらに縮小することから、コアCPI上昇率はいったんプラスに転じる可能性がある。しかし、10月以降は消費税率引き上げ(+幼児教育無償化)の影響が一巡することから、ヘッドラインのコアCPI上昇率は再びマイナスに転じる可能性が高い。
その後は、緊急事態宣言解除後の個人消費の持ち直しが緩やかにとどまっていることを反映し、需給面からの物価押し下げ圧力が強い状態が続くこと、企業業績の悪化を受けた賃金の下落がサービス価格の下押し圧力となることから、20年度後半にかけてマイナス幅が拡大することが予想される。
先行きについては、5月以降の原油価格上昇を受けてエネルギー価格の下落幅がさらに縮小することから、コアCPI上昇率はいったんプラスに転じる可能性がある。しかし、10月以降は消費税率引き上げ(+幼児教育無償化)の影響が一巡することから、ヘッドラインのコアCPI上昇率は再びマイナスに転じる可能性が高い。
その後は、緊急事態宣言解除後の個人消費の持ち直しが緩やかにとどまっていることを反映し、需給面からの物価押し下げ圧力が強い状態が続くこと、企業業績の悪化を受けた賃金の下落がサービス価格の下押し圧力となることから、20年度後半にかけてマイナス幅が拡大することが予想される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年07月21日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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