2020年07月31日

鉱工業生産20年6月-4-6月期はリーマン・ショック以来の大幅減産

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.4-6月期はリーマン・ショック以来の大幅減産

経済産業省が7月31日に公表した鉱工業指数によると、20年6月の鉱工業生産指数は前月比2.7%(5月:同▲8.9%)と5ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.1%、当社予想は同0.8%)を大きく上回る結果となった。出荷指数は前月比5.2%と4ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲2.4%と3ヵ月連続の低下となった。

6月の生産を業種別にみると、4、5月の2ヵ月で5割以上の大幅減産となった自動車が、緊急事態宣言の解除に伴う生産活動の再開や輸出の持ち直しを受けて前月比28.9%の高い伸びとなり、これだけで6月の生産は2.6%押し上げられた。

20年4-6月期の生産は前期比▲16.7%と2四半期ぶりの低下となり、リーマン・ショック後の09年1-3月期(前期比▲20.5%)以来の大幅減産となった。全ての業種が前期比でマイナスとなったが、内外の自動車販売の急減やサプライチェーン障害の影響を強く受けた輸送機械が前期比▲42.5%の大幅減産となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は20年1-3月期の前期比▲0.4%の後、4-6月は同▲8.4%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は20年1-3月期の前期比▲1.8%の後、4-6月期は同▲7.1%となった。

GDP統計の設備投資は20年1-3月期に前期比1.9%と2四半期ぶりに増加したが、4-6月期は大幅な減少となる可能性が高い。

消費財出荷指数は20年1-3月期の前期比0.0%の後、4-6月期は同▲14.9%となった。耐久消費財が前期比▲37.8%(1-3月期:同▲0.9%)、非耐久消費財が前期比▲2.4%(1-3月期:同1.1%)といずれも低下した。
財別の出荷動向 6月の消費関連指標の多くは、緊急事態宣言が5月下旬に解除されたことを受けて持ち直しの動きを示したが、外出自粛が本格化する前の2月の水準には及ばない。新型コロナウィルス感染者数の再拡大を受けて、ここにきて再び自粛の動きが強まっていることから、7月以降は足踏み状態となる可能性がある。

GDP統計の民間消費は、20年1-3月期の前期比▲0.8%の後、4-6月期は減少幅が急拡大することが予想される。

2.7-9月期は増産の公算大だが、底這いのリスクも

製造工業生産予測指数は、20年7月が前月比11.3%、8月が同3.4%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(6月)、予測修正率(7月)はそれぞれ▲1.7%、0.1%であった。

予測指数を業種別にみると、6月に大幅増産となった輸送機械は7月が同35.2%、8月が同9.4%の大幅増産計画となっている。ただし、この計画が実現したとしても、直近のピークである20年1月よりも1割以上低い水準にとどまる。最悪期は脱したものの、フル稼働には遠い状態が継続するだろう。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
20年6月の生産指数を7、8月の予測指数で先延ばしすると、20年7、8月の平均は4-6月期を11.5%上回る。7-9月期の生産は、国内の経済活動の再開や輸出の持ち直しに伴い2四半期ぶりの増産となる可能性が高いが、世界的に新型コロナウィルスの感染が再拡大するなど、内外需ともに先行き不透明感が高い。現時点では、7-9月期の生産は4-6月期が極めて低い水準にとどまったこともあり、高めの伸びになるものの、4-6月期の落ち込みを取り戻すまでには至らないと予想している。緊急事態宣言が再発令されれば、底這い状態が続く可能性が高まるだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2020年07月31日「経済・金融フラッシュ」)

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