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新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)利用意向が強いのは誰か~普及の鍵は、個人情報取り扱いの安全性と、アプリ利用メリットの更なる周知

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――利用意向があるのは全体の4割~60歳代で意向が強い
属性別にみると、男性と比べて女性で、若年と比べて高年齢で、利用意向が強く、60歳代では半数近くの利用意向があった。ただし、今回はインターネット調査であるため、アプリ利用意向は国全体の60歳代と比べて強いと思われる。
一方、20代では、「接触確認アプリを知らない・聞いたことがない」が1割を超えていた。地域別にみると、感染者数が多いとされる関東地方、近畿地方、北海道で利用意向が4割を超えて高かった。一方、比較的、感染者数が少ない中国・四国地方では、利用したい計が利用したくない計を下回った。
2――利用意向があるのは、不安を感じていて行動を自粛している人
調査対象者を新型コロナウイルスに対する不安の有無、各種行動や行動時間の増減、感染の収束や経済の回復等の展望に対する考え方で分けた6つグループ別に利用意向をみる。
グループ(クラス)分けには、「第1回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」の質問のうち、不安の有無に関する質問24問、行動や行動時間の増減に関する質問13問、感染の収束や経済回復等への展望に関する質問11問の計48問を使って、潜在クラス分析を行った。クラス分けの詳細は、前稿「新型コロナ感染拡大防止に向けた行動の自粛の状況」をご参照いただきたい。各クラスの概要は図表2のとおりである。
3――個人情報漏洩の不安は、どの程度影響しているか
特に、クラス1とクラス2で、比較的接触確認アプリの利用意向が強いクラスで不安を感じる割合が高い。クラス1とクラス2は、あらゆる不安が多いクラスであるため、それ以外にも「キャッシュレス決済サービスが使いこなせない不安」「SNSの投稿や閲覧が増えることで、ネット上のトラブルが増える不安」も高かった。ただし、不安に感じている一方で、今後「国や企業のオンライン対応が進み、デジタル化が進展する」と考えている割合は高かった。
接触確認アプリの利用意向が弱いクラス3は、今回の調査で尋ねたあらゆる項目に対して、不安を感じている割合が低く、個人情報漏洩やインターネットによるサービスが増加することへの不安も低い。このクラスは、新型コロナウイルスに対する不安があまりないことから、アプリへの関心が低いと思われる。同じく、利用意向が弱いクラス5も、個人情報漏洩やインターネットによるサービスが増加することへの不安が比較的低い。このクラスは、普段から活動が少ないと考えられるクラスで、「接触確認アプリを知らない・聞いたことがない」の割合も高い。接触確認アプリに関する情報が少ない可能性がある。
「絶対に利用したくない」と回答した割合が高かったクラス4は、個人情報が保護されない事態が生じる不安が特に高いわけではないが、キャッシュレスサービスが使いこなせないことやネット上のトラブルが増えることへの不安は高い。接触確認アプリだけでなく、各種サービスのデジタル化、オンライン化への拒否感を持っている可能性がある。
4――個人情報の取り扱いの安全性以上にアプリ利用のメリットの周知が必要
しかし、特に不安が高いクラス1とクラス2は、アプリ利用意向が強い。クラス1とクラス2は、個人情報漏洩についての不安も高いが、それと同時に、新型コロナウイルス感染拡大や、感染拡大の経済への影響等に不安を感じており、アプリ利用のメリットを優先させたものと考えられる。一方、個人情報漏洩への不安が低いものの、新型コロナウイルス感染拡大や感染拡大の経済への影響への不安も低いと、接触確認アプリを入れるメリットを感じにくい可能性がある。
現状では、アプリの主な利用者は、新型コロナウイルスに対する不安が高く、行動を自粛している人となり、不安を感じておらず、相対的に行動の自粛度合いが弱い人で利用が進まない懸念がある。
今後のさらなる普及のためには、個人情報の取り扱いの安全性の周知以上に、例えば、すでに陽性判定をうけたアプリ利用者1人につき、アプリを通じて何人ぐらいに通知が送られたのか、そのうち何人ぐらいが陽性となったのか、ある1日にどの程度アプリ利用者と接触したのか等の情報等、アプリ利用によってこれまで得られなかった情報が得られるなど、アプリ利用のメリットを感じられる運用を行うことが必要だと考えられる。
(2020年07月15日「基礎研レター」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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