2020年05月11日

米雇用統計(20年4月)-新型コロナの影響で雇用者数は前月比▲2,050万人減、失業率は14.7%に記録的な悪化

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数、失業率ともに前月から大幅悪化も市場予想は上振れ

5月8日、米国労働省(BLS)は4月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で▲2,050万人の減少1(前月改定値:▲87.0万人)と、▲70.1万人から大幅に下方修正された前月から減少幅が急拡大し、1939年の統計開始以来最大の落ち込みとなった。市場予想の▲2,200万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は上回った(後掲図表2参照)。

失業率は14.7%(前月:4.4%、市場予想:16.0%)と、こちらも前月から48年の統計開始以来最大となる+10.3%ポイント上昇した一方、市場予想は下回った(後継図表6参照)。労働参加率2は60.2%(前月:62.7%、市場予想:61.0%)と前月から▲2.5%ポイント低下し73年1月(60.0%)以来の水準となったほか、市場予想も下回った(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:新型コロナ感染と感染対策の影響で統計開始以来の悪化

4月の雇用増加数は、前述のように統計開始以来最大の落ち込みとなった。雇用減少は広範な分野に及んでいるが、とくに娯楽・宿泊が▲765.3万人と前月から▲46.8%減少するなど前月に続き顕著な落ち込みとなった。

一方、家計調査も前月から統計開始以来最大の上昇幅となったが、前月同様、本来失業者にカウントされるべき人数の相当数が欠勤扱いとして、失業者数にカウントされていない可能性が指摘されている。BLSは、その数を750万人程度と推計しており、これらを含めた失業率は19.5%と発表された結果から4.8%ポイント程度高かったとしている。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+4.7%(前月改定値:+0.5%、市場予想:+0.4%)と、+0.4%から上方修正された前月、市場予想を大幅に上回った。前年同月比も+7.9%(前月改定値:+3.3%、市場予想:+3.3%)と、+3.1%から上方修正された前月、市場予想を大幅に上回った(図表1)。当月の賃金上昇は実態が改善している訳ではなく、娯楽・宿泊業など低賃金労働者が減少した影響が大きい。

このようにみると、4月は雇用者数、失業率ともに市場予想からは上振れしたものの、いずれも統計開始以来の悪化幅を示しており、新型コロナ感染と感染対策に伴う労働市場の壊滅的な悪化を確認する結果となった。なお、失業保険新規申請者数は4月雇用統計の調査週(4月12日~18日)以降も毎週3~4百万人の高水準の増加が続いており、来月の統計も大幅な雇用減少、失業率の一段の上昇が見込まれる。

3.事業所調査の詳細:広範な分野で雇用が大幅減少

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比▲1,716.5万人(前月:▲76.8万人)と前月から減少幅が大幅に拡大した(図表2)。
(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 民間サービス部門の中では、娯楽・宿泊が前月比▲765.3万人(前月:▲49.9万人)と前月に続き大幅な落ち込みとなったほか、一時派遣業が▲84.2万人(前月:▲5.8万人)となったことから、専門・ビジネスサービスが▲212.8万人(前月:▲6.9万人)と大幅に減少幅が拡大した。また、小売業が▲210.6万人(前月:▲4.5万人)、医療・社会扶助サービスが▲208.7万人など軒並み▲200万人台の減少となるなど、広範な分野で大幅な落ち込みとなった。

財生産部門は前月比▲235.5万人(前月:▲7.4万人)と大幅に減少した。製造業が▲133.0万人(前月:▲3.4万人)、建設業が▲9.8万人(前月:▲3.3万人)の減少となった。

一方、政府部門は前月比▲98.0万人(前月:▲2.8万人)と前月から減少幅が拡大した。内訳をみると、連邦政府が+0.1万人(前月:+1.9万人)と前月から増加幅が縮小したほか、州・地方政府が▲98.1万人(前月:▲4.7万人)と大幅に減少し、全体を押し下げた。
前月(3月)と前々月(2月)の雇用増加数(改定値)は、前月が▲87.0万人(改定前:▲70.1万人)と▲16.9万人下方修正されたほか、前々月が+23.0万人(改定前:+27.5万人)と、こちらも▲4.5万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲21.4万人の下方修正となった(図表3)。
 
BLSの公表に先立って5月6日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比▲2,023.6万人(前月改定値:▲14.9万人、市場予想:▲2,055.0万人)と、▲2.7万人から下方修正された前月から減少幅が拡大、市場予想は上回った。
 
4月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が30.01ドル(前月:28.67ドル)となり、前月から+1.34ドルの大幅な増加となった。週当たり労働時間は34.2時間(前月:34.1時間)と前月から+0.1時間増加した。この結果、週当たり賃金は1,026.34ドル(前月:977.65ドル)と、前月から大幅に増加した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働参加率は統計開始以来最大の落ち込み

家計調査のうち、4月の労働力人口は前月対比で▲643.2万人(前月:▲163.3万人)と統計開始以来最大の落ち込みとなった前月を上回る減少となった。内訳を見ると、就業者数が▲2,236.9万人(前月:▲298.7万人)と大幅に減少した一方、失業者数が+1,593.8万人(前月:+135.3万人)とこちらは大幅に増加した。非労働力人口は+657.0万人(前月:+176.3万人)と、こちらも前月に続き統計開始以来最大の増加となった。

これらの結果、労働参加率は60.2%と前月から▲2.5%ポイント低下し、1950年の統計開始以来最大の落ち込み幅となった(図表5)。一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は4月が79.9%(前月:82.6%)とこちらも前月から▲2.7%ポイント低下し、83年5月(79.9%)以来の水準となった。男女の内訳は、男性が86.4%(前月:89.0%)と前月から▲2.6%ポイント低下し、50年の統計開始以来の最低水準となったほか、女性も73.6%(前月:76.4%)と▲2.8%ポイント低下し、15年10月(73.6%)以来の水準となった。

一方、失業率は14.7%と、前月から+10.3%ポイントの大幅上昇となった(図表6)。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
また、BLSは、家計調査の調査期間に、職はあるものの欠勤していると回答した人数が+11.5百万人(前月:+6.4百万人)と大幅な増加を示した前月からさらに増加したとしており、欠勤理由として「その他」を挙げる人数が+8.1百万人に上ったとした。これは、前年同期の+0.5百万人から大幅な増加となっている。このため、BLSは「その他」を理由に欠勤したと回答したうち、7.5百万人は本来失業者として認識しなければならない人が就業者として認識されているとの推計を示し、失業率が実態より4.8%ポイント程度過少評価されている可能性を示唆した。
 
4月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は93.9万人(前月:116.4万人)と前月から▲22.5万人減少した。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは4.1%(前月:15.9%)と前月から▲11.8%ポイント低下した(図表7)。これは、新型コロナの影響で短期の失業者が増加した影響が大きい。また、平均失業期間も6.1週(前月:17.1週)と前月から▲11.0週短期化した。
 
最後に、周辺労働力人口(228.1万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(1,088.7万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、4月が22.8%(前月:8.7%)と前月から+6.4%ポイントの大幅な上昇となった(図表8)。また、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+5.4%ポイント(前月:+4.3%ポイント)と、前月から+1.1%ポイントの大幅な拡大となった。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2020年05月11日「経済・金融フラッシュ」)

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