2020年04月30日

米GDP(20年1-3月期)-新型コロナで前期比年率▲4.8%のマイナス成長、市場予想も下回る

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は08年10-12月期以来の落ち込み、市場予想も下回る

4月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は20年1-3月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。1-3月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で▲4.8%(前期:+2.1%)と前期からマイナスに転じ、08年10-12月期(同▲8.4%)以来の落ち込みとなったほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同▲4.0%も下回った(図表1・2)。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
1-3月期の成長率を需要項目別にみると、個人消費が前期比年率▲7.6%(前期:+1.8%)と80年4-6月期(同▲8.7%)以来のマイナス幅となった(図表2)。また、民間設備投資も▲8.6%(前期:▲2.4%)と09年4-6月期(同▲11.6%)以来の落ち込みとなった。さらに、在庫投資の成長率寄与度が▲0.53%ポイント(前期:▲0.98%ポイント)と前期に続き成長率を押し下げた。

一方、政府支出が前期比年率+0.7%(前期:+2.5%)とプラスを維持したほか、住宅投資は+21.0%(前期:+6.5%)と前期から大幅に伸びが加速した。さらに、外需の成長率寄与度が+1.30%ポイント(前期:+1.51%ポイント)と前期に続き、成長率を大幅に押し上げた。

外出制限などの新型コロナ感染対策が、統計期間終盤の3月中旬以降に強化されたにも係わらず、当期が大幅なマイナス成長になったことで、感染対策が個人消費や設備投資などの経済活動に大きく影響したことを確認する結果となった。4-6月期は経済活動の減速がより反映されることから、当期から、さらにマイナス幅が大幅に拡大し、08年を上回る落ち込みとなることが不可避となっている。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2. 結果の詳細:

(個人消費・個人所得)サービス消費が大幅な落ち込み
1-3月期の個人消費は、財消費が前期比年率▲1.3%(前期:+0.6%)と前期からマイナスに転じたほか、サービス消費が▲10.2%(前期:+2.4%)となり、現在の形式となった02年の統計開始以来最大の落ち込みとなった(図表3)。財消費では、耐久財が▲16.1%(前期:+2.8%)と前期から大幅なマイナスに転じた一方、非耐久財は+6.9%(前期:▲0.6%)と堅調な伸びとなった。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲33.2%(前期:+5.5%)と大幅な下落に転じたほか、家具・家電も▲6.4%(前期:+1.1%)と減少した。

非耐久財では、衣料・靴が▲36.0%(前期:+4.9%)と大幅に落ち込んだものの、食料・飲料が+25.1%(前期:▲1.3%)と大幅な増加となり、全体を押し上げた。食料・飲料の増加は外出自粛に備えた買い溜め需要とみられる。

一方、サービス消費は、娯楽サービスが▲31.9%(前期:+5.5%)となったのを筆頭に、飲食・宿泊サービスが▲29.7%(前期:+1.0%)、輸送サービスが▲29.2%(前期:+0.7%)、医療サービスが▲18.0%(前期:+4.9%)と軒並み大幅なマイナスとなった。

実質可処分所得は前期比年率+0.5%(前期:+1.6%)と前期から伸びが鈍化した(図表4)。貯蓄率は9.6%(前期:7.6%)と前期から大幅に上昇しており、当期は外出制限などにより、所得対比で消費が抑制された状況が鮮明となった。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
(民間投資)輸送機器を中心に設備機器投資が大幅な落ち込み
1-3月期の民間設備投資は、知的財産投資が前期比年率+0.4%(前期:+2.8%)と辛うじてプラスを維持したものの、建設投資が▲9.7%(前期:▲7.2%)、設備機器投資が▲15.2%(前期:▲4.3%)といずれも前期からマイナス幅が拡大した(図表5)。
米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 建設投資では、電力・通信が+3.3%(前期:+5.1%)とプラスを維持したほか、資源関連が▲3.5%(前期:▲30.7%)と前期からマイナス幅が縮小した一方、製造業が▲24.6%(前期:+2.1%)と前期からマイナスに転じ、全体を押し下げた。

設備機器投資では、産業機器が▲7.1%(前期:▲12.6%)と前期からマイナス幅が縮小したものの、情報処理関連が▲15.4%(前期:+0.8%)と前期からマイナスに転じたほか、輸送機器が▲30.6%(前期:▲0.6%)とマイナス幅が大幅に拡大した。

知的財産投資では、娯楽・文学等が▲7.2%(前期:+2.3%)と前期からマイナスに転じたほか、研究・開発が▲4.3%(前期:▲2.2%)とマイナス幅が拡大した一方、ソフトウエアが+8.2%(前期:+9.3%)と堅調な伸びを維持した。

最後に住宅投資は、集合住宅が前期比年率▲1.0%(前期▲19.1%)と前期から大幅にマイナス幅が縮小したほか、戸建てが+33.5%(前期:+16.3%)と2桁の伸びとなった前期から、さらに伸びが加速して全体を押し上げた。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)連邦、州・地方政府ともに前期から伸びが鈍化
1-3月期の政府支出の内訳は、連邦政府が前期比年率+1.7%(前期:+3.4%)、州・地方政府が+0.1%(前期:+2.0%)といずれも前期から伸びが鈍化した(図表6)。

連邦政府支出では、非国防支出が+3.1%(前期:+1.9%)と前期から伸びが加速したものの、国防関連支出が+0.8%(前期:+4.4%)と前期から伸びが鈍化し、連邦政府支出全体を押し下げた。
(貿易)輸出入ともに輸送、旅行サービスの落ち込みが顕著
 1-3月期の輸出入の内訳をみると、輸出が前期比年率▲8.7%(前期:+2.1%)と前期からマイナスに転じた一方、輸入が▲15.3%(前期:▲8.4%)と前期からマイナス幅が大幅に拡大しており、当期は主に輸入の落ち込みが貿易赤字を縮小させたと言える。

輸出を仔細にみると、財輸出が▲1.2%(前期:▲0.6%)と前期からマイナス幅が拡大したほか、サービス輸出が▲21.5%(前期:+7.2%)と大幅なマイナスに転じて全体を押し下げた(図表7)。

財輸出では、食料・飲料が+22.3%(前期:▲31.2%)と前期の反動もあって前期から大幅なプラスに転じたほか、自動車関連が▲5.2%(前期:▲22.5%)とマイナス幅が縮小した。一方、資本財(自動車関連除く)が▲11.9%(前期:+1.3%)とマイナスに転じたほか、消費財(食料、自動車関連除く)が▲19.8%(前期:▲12.4%)と前期からマイナス幅が拡大した。

サービス輸出では、旅行が▲54.1%(前期:+8.3%)となったほか、輸送も▲42.6%(前期:▲0.6%)と大幅な落ち込みとなって、全体を押し下げた。

輸入は、財輸入が▲11.4%(前期:▲11.4%)と前期並みの落ち込みとなったほか、サービス輸入が▲29.8%(前期:+4.9%)と前期から大幅なマイナスに転じた(図表8)。

財輸入では、資本財(自動車関連除く)が▲17.5%(前期:+0.1%)と前期から大幅なマイナスに転じた一方、自動車関連が▲8.9%(前期:▲24.7%)とマイナス幅が縮小したほか、食料・飲料が+5.6%(前期:▲3.3%)とプラスに転じるなど、マチマチの結果となった。

一方、サービス輸入はサービス輸出同様、運輸が▲41.3%(前期:▲2.4%)となったほか、旅行が▲67.6%(前期:+8.6%)と大幅な落ち込みとなった。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)コアPCE価格指数は前期比、前年同期比ともに前期から伸びが加速
1-3月期のGDP価格指数は、前期比年率+1.3%(前期:+1.3%)と前期から横ばいとなり、市場予想(同+1.0%)を上回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率▲3.5%(前期:+3.5%)となり、09年4-6月期(同▲1.2%)以来のマイナス成長となった(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+1.3%、前年同期比+1.6%(前期:+1.4%、+1.4%)と前期から前期比では伸びが鈍化したものの、前年同期比は伸びが加速した(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は、前期比年率+1.8%、前年同期比+1.8%(前期:+1.3%、+1.6%)と、こちらは前期から前期比、前年同期比ともに伸びが加速しており、基調としての物価には上昇圧力がみられた。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
 
 

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窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2020年04月30日「経済・金融フラッシュ」)

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