2020年04月06日

米雇用統計(20年3月)-雇用者数は前月比▲70.1万人。新型コロナウイルス対策の影響で娯楽関連の雇用が大幅に減少

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数は予想対比大幅に下振れ、失業率の上昇幅は75年1月以来の高さ

4月10日、米国労働省(BLS)は3月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で▲70.1万人の減少1(前月改定値:+27.5万人)と、+27.3万人から上方修正された前月から9年半ぶりに減少に転じたほか、市場予想の▲10.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に下回った(後掲図表2参照)。

失業率は4.4%(前月:3.5%、市場予想:3.8%)と前月から+0.9%ポイント上昇し、市場予想も上回った(後継図表6参照)。前月からの上昇幅は、1975年1月(+0.9%ポイント)以来の水準であった。労働参加率2は62.7%(前月:63.4%、市場予想:63.3%)と前月から▲0.7%ポイント低下、市場予想も下回った(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:大規模な事業・学校閉鎖前から雇用は大幅減少、4月のマイナス幅は拡大へ

3月の雇用増加数は、新型コロナウイルスの感染や感染対策の影響により、娯楽・宿泊が前月比▲45.9万人となるなど、雇用者数が大幅に減少する結果となった。もっとも、3月の調査週は3月8日~14日で、米国内で大規模な事業・学校閉鎖措置が実施される3月後半以前の調査のため、当月の雇用減少幅は新型コロナウイルスの影響を一部反映したに過ぎない。このため、来月発表される4月の雇用減少幅は大幅な拡大が不可避だろう。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 一方、家計調査は前月から大幅な増加となったが、後述するように本来失業者にカウントされるべき人数の相当数が欠勤扱いとして失業者数にカウントされていない可能性が指摘されている。このため、本来の失業率は発表された水準より1%ポイント程度高いとみられる。

時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.4%(前月:+0.3%、市場予想:+0.2%)と、前月、市場予想を上回った。前年同月比も+3.1%(前月:+3.0%、市場予想:+3.0%)と、前月、市場予想を上回わった(図表1)。

このようにみると、3月は新型コロナウイルスの感染と感染対策などの影響から、労働市場が大幅な悪化に転じたことを確認する結果となった。もっとも、前述のように3月の統計は新型コロナウイルス感染拡大の影響が本格化する前の統計となっていることには注意が必要だ。失業保険新規申請件数は、雇用統計調査週後の2週間でおよそ+1,000万人の増加を示しており、4月はさらに雇用情勢の大幅な悪化を示そう。

3.事業所調査の詳細:雇用減少の3分の2が娯楽・宿泊に集中

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比▲65.9万人(前月:+18.5万人)と前月から大幅な減少に転じた(図表2)。
(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 民間サービス部門の中では、娯楽・宿泊が前月比▲45.9万人(前月:+4.4万人)と大幅に落ち込み、雇用減少全体のおよそ3分の2を占めた。また、医療・社会扶助サービスが▲6.1万人(前月:+6.6万人)、一時派遣業が▲5.0万人(前月:▲0.4万人)となったことから、専門・ビジネスサービスが▲5.2万人(前月:+3.6万人)となった。さらに、小売業も▲4.6万人(前月:+0.1万人)と減少に転じた。

財生産部門は前月比▲5.4万人(前月:+5.7万人)と、こちらも前月から減少に転じた。建設業が▲2.9万人(前月:+4.1万人)となったほか、製造業も▲1.8万人(前月:+1.3万人)と減少した。

一方、政府部門は前月比+1.2万人(前月:+3.3万人)と前月からは伸びが鈍化したものの、増加を維持した。内訳をみると、州・地方政府が▲0.6万人(前月:+2.5万人)と前月から減少に転じたものの、連邦政府が+1.8万人(前月:+0.8万人)と前月から伸びが加速して全体を押し上げた。なお、連邦政府職員の増加のうち、+1.7万人は国勢調査関連の雇用が占める。
前月(2月)と前々月(1月)の雇用増加数(改定値)は、前月が+27.5万人(改定前:+27.3万人)と+0.2万人上方修正された一方、前々月が+21.4万人(改定前:+27.3万人)と、こちらは▲5.9万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲5.7万人の下方修正となった(図表3)。
 
BLSの公表に先立って4月1日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比▲2.7万人(前月改定値:+17.9万人、市場予想:▲15.0万人)と、+18.3万人から下方修正された前月から大幅な減少に転じた一方、市場予想は上回った。この結果、雇用統計同様に3月は雇用増加数が減少に転じたものの、減少幅は雇用統計の▲70万人に比べて小幅に留まった。
 
3月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が28.62ドル(前月:28.51ドル)となり、前月から+11セント増加した。週当たり労働時間は34.2時間(前月:34.4時間)と前月から▲0.2時間減少し、11年1月以来の水準となった。この結果、週当たり賃金は978.80ドル(前月:980.74ドル)と、前月から減少した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:失業率は発表された4.4%より1%ポイント高い可能性

家計調査のうち、3月の労働力人口は前月対比で▲163.3万人(前月:▲6.0万人)と統計開始以来最大の落ち込みとなった。内訳を見ると、就業者数が▲298.7万人(前月:+4.5万人)と大幅に減少した一方、失業者数が+135.3万人(前月:▲10.5万人)とこちらは大幅な増加に転じた。非労働力人口は+176.3万人(前月:+18.6万人)と、こちらも統計開始以来最大の増加となった。

これらの結果、労働参加率は62.7%と、1968年1月(▲0.8ポイント)に次ぐ前月から▲0.7%ポイントの低下となった(図表5)。一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は3月が82.6%(前月:83.0%)とこちらも前月から▲0.4%ポイント低下し19年9月以来の水準となった。男女の内訳は、男性が89.0%(前月:89.3%)と前月から▲0.3%ポイント低下したほか、女性も76.4%(前月:77.0%)と▲0.6%ポイントの大幅な低下となった。

一方、失業率は4.4%と、前月から+0.9%ポイントの上昇となった(図表6)。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
もっとも、BLSは新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一時解雇された労働者の相当数が本来の失業者ではなく、間違って欠勤にカウントされた結果、失業率が1%ポイント程度過小評価された可能性を示唆している。BLSは、家計調査の調査期間に職はあるものの、欠勤していると回答した人数が+6.4百万人(前月:+4.2百万人)と前月から大幅な増加を示しているほか、欠勤理由として「その他」を挙げる人数が+2.1百万人に上っているとした。これは、前年同期の+0.7百万人から大幅な増加となっている。このため、BLSは「その他」を理由に欠勤と回答したうちの相当数が、本来失業者数にカウントすべき人数だった可能性が高いとしている。
 
3月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は116.4万人(前月:110.2万人)と前月から増加した一方、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは15.9%(前月:19.2%)と前月からは大幅に低下した(図表7)。また、平均失業期間も17.1週(前月:20.9週)と前月から短期化した。
 
最後に、周辺労働力人口(142.6万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(576.5万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、3月が8.7%(前月:7.0%)と前月から+1.7%ポイントの大幅な上昇となった(図表8)。また、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+4.3%ポイント(前月:+3.5%ポイント)と、前月から+0.8%ポイントの大幅な拡大となった。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

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