2020年03月09日

米国経済の見通し-新型コロナウイルスの影響は現時点で不透明

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 米国の10-12月期の成長率(前期比年率)は+2.1%(前期:+2.1%)と前期並みの伸び。個人消費の伸びが鈍化したほか、設備投資は3期連続でマイナス成長となったものの、輸入の落ち込みもあって外需が成長率を押し上げた。
     
  2. 20年に入り、中国で発生した新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続いており、資本市場でリスクオフの動きが強まるなど、世界経済に対する懸念が強まっている。米国でも感染拡大や経済への影響を緩和するため、財政・金融政策で対応を強化している。
     
  3. 20年の米経済見通しは新型コロナウイルスの動向に大きく左右されるが、現時点でその影響を定量的に判断することは困難である。今回の経済見通しでは、全米規模での集団感染は回避されるとの前提を置き、20年の成長率を前年比+1.8%と前回予想時点(19年12月)の+1.9%から小幅に下方修正した。一方、21年は同+1.9%と、こちらは前回から据え置いた。
     
  4. 金融政策は、3月と4月にそれぞれ▲0.25%追加利下げを予想する。もっとも、資本市場が安定しない場合には3月の利下げ幅は▲0.5%に拡大しよう。その後は、コロナウイルスの感染拡大の終息を確認して、12月以降に政策金利は緩やかな引き上げに転じると予想する。
     
  5. 上記見通しに対するリスクは新型コロナウイルスに加え、米国内政治である。とくに、11月の大統領選挙で民主党候補者が勝利する場合には政策の予見可能性低下から米経済にネガティブとなろう。いずれにせよ、現時点では米経済の下振れリスクは大きい。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1.経済概況・見通し
  ・(経済概況)10‐12月期の成長率は3期連続で2%程度の伸びが持続
  ・(経済見通し)全米規模での集団感染が無い前提で20年は前年比+1.8%、
          21年+1.9%を予想
2.実体経済の動向
  ・(労働市場、個人消費)足元で雇用増加は堅調、新型コロナウイルスの影響を見極め
  ・(設備投資)新型コロナウイルスの感染拡大が回復の重石
  ・(住宅投資)住宅ローン金利の低下が引き続き追い風に
  ・(政府支出、債務残高)当面は拡張的な財政政策が持続
  ・(貿易)今後の通商交渉は対英国、EUが焦点
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)消費者物価(前年比)は新型コロナウイルスの影響で当面下押し圧力が続く
  ・(金融政策)3月、4月会合で追加緩和後、12月以降は緩やかな政策金利引き上げへ
         転換を予想
  ・(長期金利)足元の金利低下は行き過ぎ、20年末1.6%、21年末2.4%への上昇を予想
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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