2020年03月09日

米雇用統計(20年2月)-雇用者数は前月比+27.3万人。新型コロナウイルス感染拡大前の堅調な雇用増加を確認

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数は市場予想を大幅に上回る増加、失業率も横ばい予想に反し低下

3月10日、米国労働省(BLS)は2月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+27.3万人の増加1(前月改定値:+27.3万人)と、+22.5万人から上方修正された前月に一致、市場予想の+17.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。

失業率は3.5%(前月:3.6%、市場予想:3.6%)とこちらは前月から▲0.1%ポイント低下し、市場予想も下回った(後継図表6参照)。労働参加率2は63.4%(前月:63.4%、市場予想:63.4%)と、前月、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:新型コロナウイルス感染拡大前の堅調な雇用増加を確認

2月の雇用増加数は、2ヵ月連続で20万人超となり、20年初からの平均雇用増加ペースは+27.3万人と、19年平均の+17.8万人を大幅に上回った。雇用者数は統計開始以来最長となる113ヵ月連続で増加が続いているものの、足元で雇用増加ペースの鈍化はみられない。一方、2月の統計は調査週が2月9日から始まる週で新型コロナウイルスの米国内での感染がそれほど拡大していなかった時期とみられることから、感染拡大に伴う雇用への影響は来月以降の統計に反映されよう。

家計調査は労働参加率が前月から高い水準を維持する一方、2月の失業率が低下するなど、引き続き労働需給がタイトであることを示した。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.3%(前月:+0.2%、市場予想:+0.3%)と、前月から伸びが加速し、市場予想に一致した。また、前年同月比は+3.0%(前月:+3.1%、市場予想:+3.0%)と、前月から伸びが鈍化した一方、市場予想に一致した(図表1)。前年同月比でみた賃金の伸びは、19年2月が+3.5%と高い伸びとなった反動も影響したとみられるものの、労働需給がタイトな中で引き続き落ち着いた伸びに留まっている。

このようにみると、2月は新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する前の統計であるものの、大幅な雇用増加数にみられるように堅調な労働市場の回復を確認する結果と言えよう。

3.事業所調査の詳細:民間サービス部門はまちまちの結果

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+16.7万人(前月:+19.5万人)と前月から伸びが鈍化した(図表2)。
前月(1月)と前々月(12月)の雇用増加数(改定値)は、前月が+27.3万人(改定前:+22.5万人)と+4.8万人上方修正されたほか、前々月が+18.4万人(改定前:+14.7万人)と、こちらも+3.7万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+8.5万人の上方修正となった(図表3)。
 
BLSの公表に先立って3月4日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+18.3万人(前月改定値:+20.9万人、市場予想:+17.0万人)と、+29.1万人から大幅に下方修正された前月を下回った一方、市場予想は上回った。この結果、20年の平均雇用増加ペースは+19.6万人と19年平均の+15.0万人を上回っており、雇用統計同様に今年に入ってから雇用増加ペースが加速していることを示した。
 
2月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が28.52ドル(前月:28.43ドル)となり、前月から+9セント増加した。週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.3時間)と前月から+0.1時間増加した。この結果、週当たり賃金は981.09ドル(前月:975.15ドル)と、前月から増加した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働力人口は小幅ながら3ヵ月ぶりに減少

家計調査のうち、2月の労働力人口は前月対比で▲6.0万人(前月:+57.4万人)と3ヵ月ぶりに減少した。内訳を見ると、就業者数が+4.5万人(前月:+41.8万人)と小幅ながら増加したものの、失業者数が▲10.5万人(前月:+15.6万人)と減少に転じて全体を押し下げた。非労働力人口は+18.6万人(前月:▲44.2万人)と、こちらは3ヵ月ぶりに増加に転じた。

これらの結果、労働参加率は63.4%と2ヵ月連続で13年6月(63.4%)以来の水準を維持した(図表5)。一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は2月が83.0%(前月:83.1%)とこちらは4ヵ月ぶりに前月から▲0.1%ポイント低下した。男女の内訳は、男性が89.3%(前月:89.3%)と、女性が77.0%(前月:76.8%)といずれも男女別では前月から横ばいとなった。

失業率は、前月から▲0.1%ポイント低下したものの、19年9月以降は3.5~3.6%で概ね横ばい圏の動きとなっている。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
2月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は110.2万人(前月:116.6万人)と前月から減少したほか、長期失業者の失業者全体に占めるシェアも19.2%(前月:19.9%)と低下した(図表7)。また、平均失業期間も20.9週(前月:21.9週)と前月から短期化した。
 
最後に、周辺労働力人口(144.0万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(431.8万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4をみると、2月は7.0%(前月:6.9%)と前月から+0.1%ポイント上昇した(図表8)。これで上昇は2ヵ月連続となった。また、通常の失業率(U-3)が前月から低下した一方、広義の失業率(U-6)が上昇した結果、両者の差は3.5%ポイント(前月:3.3%ポイント)と、前月から+0.2%ポイント拡大した。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2020年03月09日「経済・金融フラッシュ」)

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