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Z世代の情報処理と消費行動(9)-若者の消費行動からみる流行についての試論

生活研究部 研究員 廣瀬 涼
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1――若者のブランド消費から見えてくること
例えばZ世代は、動画に特化したSNSを好み、自身の撮った動画とアプリ内にある音楽を編集し、ショートムービーを制作する。若者は「トキ消費」や「コト消費」の一側面として動画撮り、編集し、投稿することで自分らしさを表現している。商品が選考されるときもこの心理は働いており、「トキ消費」、「コト消費」を動画投稿を通じて行うZ世代は、その商品を消費することで自分ならどのようにその商品を消費し、表現することができるかという「モノ消費に見えるコト消費」よって自分らしさを追求している。この自分らしさの追求の結果アウトプットされたものは、個人の作成した唯一無二のオリジナルなのである。特に動画作成においては、他人の投稿した動画をそのまま真似しても評価を受けづらいため(いいね!の数が増えない)、自分らしさを表現した動画を作成することが強いられる。そのため、他人から影響を受けて購買をしたとしても、消費結果としてオリジナリティのあるものを生み出すという思考があるため、自分の意思で購買し、自分が購買行動の意思決定を行ったと考えている。このことから、他人をきっかけにした消費であっても、消費方法はオリジナリティがあるという点で他人を顧みるという点を肯定しており、これはブランド消費や流行を始めとした準拠集団的思考に基づく消費を肯定する背景にもなっていると筆者は考える。しかし、そもそも消費結果を動画作成し、投稿するという流れ自体が現代消費文化の一側面である。若者が無意識下で他人を顧みて意思を決定するという枠組みに組み込まれていると考えると、本質はZ世代以前の若者が行ってきた流行消費と変わらないと言えるのかもしれない。
1 廣瀨涼(2020a)「Z世代の情報処理と消費行動(2)-Z世代と4つの市場変化」『基礎研レター (2020/02/06)』https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63607?site=nli
2――流行の作られ方は2種類に大別される。
では、どのように流行が生まれるのだろうか。流行の発生には大きく分けて2種類あると筆者は考えている。一つは、「マス型」である。これは以前から存在する、マスメディア主導の流行の発生である。特定の商品やサービスがメディアミックスによって大量に露出し、意図的か否かを問わずメディアを主導に流行が生み出される。メディアは消費者に認知され定着するまで、過剰にそのサービスや商品を取り上げ、時間の経過とともに消費者が流行として捉え、影響の中心が口コミに移行すると共に、メディア露出が逓減していく。このタイプの流行は、マスメディアによって広く社会に伝播していくため「社会的なブーム」を生み出していると考えられるだろう。
- イノベーター(Innovators:革新者):
冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人。 - アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用層):
流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人。他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる。 - アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随層):比較的慎重派な人。平均より早くに新しいものを取り入れる。
- レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随層):比較的懐疑的な人。周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択する。
- ラガード(Laggards:遅滞層):最も保守的な人。流行や世の中の動きに関心が薄い。イノベーションが伝統になるまで採用しない。
2 Diffusion of Innovation Theory
http://sphweb.bumc.bu.edu/otlt/MPH-Modules/SB/BehavioralChangeTheories/BehavioralChangeTheories4.html
(2020年04月17日「基礎研レポート」)

03-3512-1776
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・公益社団法人日本マーケティング協会 第17回マーケティング大賞 選考委員
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
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