2020年04月10日

企業物価指数(2020年3月)―原油価格の下落が大幅な下押し材料

藤原 光汰

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1.国内企業物価は消費税率引き上げの影響を含めても前年比でマイナスに転じる

4月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、20年3月の国内企業物価指数は前年比▲0.4%(2月:同0.8%)と、5ヵ月ぶりの前年比マイナスとなり、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲0.1%、当社予想も同▲0.1%)を上回る下落幅となった。消費税を除いた2月の国内企業物価指数は、前年比▲2.0%(2月:同▲0.8%)となり、2か月連続の下落となった。なお、企業物価指数は19年10月に実施された消費税率引き上げによって1.6%pt押し上げられている。

原油価格の下落を受けて、石油・石炭製品(消費税を含むベース)が前年比▲10.3%(2月:同1.7%)と4ヵ月ぶりにマイナスに転じ、前年比寄与度が▲0.67%pt(2月:0.11%pt)と前月から▲0.8%pt近く縮小したことや、既往の原油安が遅れて反映される電力・都市ガス・水道が前年比▲5.2%(2月:同▲5.1%)と大幅なマイナスが継続していることが企業物価指数の下落要因となった。

国内企業物価指数は前月比では▲0.9%(2月:同▲0.4%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。前月比で内訳をみると、ガソリン(2月:前月比▲5.0%→3月:同▲8.5%)、灯油(2月:同▲9.0%→3月:同▲15.9%)、軽油(2月:同▲8.9%→3月:同▲16.0%)、A重油(2月:同▲9.3%→3月:同▲17.2%)などが下落幅を拡大させたことにより、石油・石炭製品が前月比▲9.2%(2月:同▲4.8%)の大幅下落となった。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う銅価格の下落を受けて、非鉄金属が前月比▲4.3%(2月:同▲1.4%)とマイナス幅を拡大させた。
国内企業物価指数(前年比・前月比)の推移/国内企業物価指数の前年比寄与度分解

2.輸入物価はマイナス幅が大幅に拡大

20年3月の輸入物価指数1は、契約通貨ベースでは前月比▲3.2%(2月:同▲0.2%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。一方、2月のドル円相場は前月比▲2.3%の円高水準となったことから、円ベースでは前月比▲4.7%(2月:同0.1%)と契約通貨ベースを上回る下落幅となった。
輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース) 契約通貨ベースで輸入物価指数の内訳をみると、原油が前月比▲15.5%と2月の同▲0.5%から下落幅を大幅に拡大させたことや、世界的な輸送用燃料需要の後退によるジェット燃料油・灯油の下落幅拡大(2月:前月比▲4.3%→3月:同▲16.5%)により、石油・石炭・天然ガスは前月比▲9.0%(2月:同0.6%)と4ヵ月ぶりのマイナスとなった。また、前月大幅に下落した鉄鉱石は横ばいとなったものの(2月:前月比▲19.0%→3月:同0.0%)、需要の落ち込みにより非鉄金属が同▲6.7%(2月:同1.2%)と下落に転じたことなどを受けて、金属・同製品が前月比▲4.1%(2月:同▲3.7%)と下落幅を拡大させたことなどが輸入物価の下押し材料となった。

9日のOPECプラスにおいて大規模な協調減産で合意に達したものの、新型コロナウイルスの感染拡大による需要縮小を補いきれないとの見方から失望が広がり、原油先物相場は下落している。輸入物価指数はマイナス圏での推移が続くと見込まれる。
 
1 輸入物価指数は、消費税を除くベースで作成されている

3.国際市況の悪化が反映される

需要段階別指数の推移 20年3月の需要段階別指数(国内品+輸入品)2をみると、素原材料が前年比▲10.9%(2月:同▲1.8%)、中間財が前年比▲2.9%(2月:同▲1.0%)、最終財が前年比▲1.8%(2月:同▲0.7%)となり、すべての需要段階で下落幅が拡大した。特に素原材料の下落幅が大きく、国際市況の悪化を反映して中間財、最終財の価格にも今後波及するだろう。

また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比▲2.2%(2月:同▲0.7%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国際商品市況の大幅な悪化や、消費増税後の国内需要の弱さを反映し、国内企業物価は今後も弱い動きが続くだろう。4月の国内企業物価はマイナス幅を拡大させる公算が大きい。
 
2 需要段階別指数は、消費税を除くベースで作成されている
 
 

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(2020年04月10日「経済・金融フラッシュ」)

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