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- 相場感はあった方がよいのか-保険料・保障額の相場感の生命保険契約額への影響
コラム
2020年03月03日
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拙稿(2020)1では、保険料や保障額について相場感があるとする者の特徴を概観するとともに、こうした相場感が何によって形成されてきたかについて確認した結果を示し、年間の支払保険料が相場感に対し負の影響を示すこと、換言すれば、相場感を有する者では保険料支出を抑制する傾向にあることを明らかにした。では、このような保険料・保障額の相場感を有していることは、どのような加入状況につながっているのだろうか。本稿では生命保険の加入状況に対し相場感の有無がどのように影響しているかについて確認していく。
1 拙稿(2020)「生命保険の相場感-保険料・保障額の相場感の形成要因」基礎研レポート(2020/2/21)
1 拙稿(2020)「生命保険の相場感-保険料・保障額の相場感の形成要因」基礎研レポート(2020/2/21)
保有契約の年間支払保険料

次に客観的な知識水準別にみると、保険料の相場感は高知識で相場感ありが19万1千円、相場感なしが22万6千円、中知識で相場感ありが17万2千円、相場感なしが21万2千円と、相場感なしが3万円以上高くなっている(図表2)。また、保障額の相場感は高知識で相場感ありが19万2千円、相場感なしが24万6千円、中知識で相場感ありが17万3千円、相場感なしが19万7千円といずれも相場感なしの方が高く、特に高知識では5万円以上と差が大きい。主観的評価別にみても同様に、保険料の相場感は高評価で相場感ありが18万9千円、相場感なしが22万7千円、中評価で相場感ありが15万6千円、相場感なしが20万3千円と、相場感なしが約4万円高くなっている。また、保障額の相場感は高評価で相場感ありが19万2千円、相場感なしが23万5千円、中評価で相場感ありが14万8千円、相場感なしが20万2千円といずれも4~5万円程度の差となっている。
客観的な知識水準と主観的評価との組合せ別にみると、保険料、保障額ともに大半の層において相場感ありに比べ相場感なしの方が高くなっており、高知識・高評価、中知識・中評価では5万円以上の差と差が大きくなっている。一方、低知識・高評価では保険料の相場感ありが19万8千円、相場感なしが17万8千円と僅かながら相場感ありの方が高く、保障額の相場感ありが20万円、相場感なしが15万8千円と相場感ありの方が4万円以上高い。このように、総じて相場感を有する者の多くは保険料支出を抑制する傾向が確認される一方で、客観的な知識水準の低さに比して自己評価が高く相場感があると感じる層では保険料支出が過剰になっている可能性が危惧される結果となっている。
客観的な知識水準と主観的評価との組合せ別にみると、保険料、保障額ともに大半の層において相場感ありに比べ相場感なしの方が高くなっており、高知識・高評価、中知識・中評価では5万円以上の差と差が大きくなっている。一方、低知識・高評価では保険料の相場感ありが19万8千円、相場感なしが17万8千円と僅かながら相場感ありの方が高く、保障額の相場感ありが20万円、相場感なしが15万8千円と相場感ありの方が4万円以上高い。このように、総じて相場感を有する者の多くは保険料支出を抑制する傾向が確認される一方で、客観的な知識水準の低さに比して自己評価が高く相場感があると感じる層では保険料支出が過剰になっている可能性が危惧される結果となっている。
直近加入商品の保障額

直近加入商品の年間支払保険料

このように、保障額については相場感の有無による差異がほとんどみられないなかで、保険料の相場感では一部の商品を除いて、保障額の相場感ではすべての商品種類で、相場感のない者の方が高い保険料を支払っている傾向にある様がみてとれる。日常生活の中で抱える生活保障上のリスクに対し、必要な保障を確保するための加入であることに変わりはなく、少なくとも直近加入商品の保障額については相場感の有無に関わらず同程度の準備ができているようであった。一方で、保険料支出の面では、中程度以上の保険知識を有する者では相場感のない者の方がより高額な保険料を負担する傾向にあるように見受けられた。このことは、ある程度以上の保険知識を有するなかでは、保険料や保障額についても相場感をもつことで、必要な保障をより少ないコスト(保険料)で確保できる、すなわち家計収支の効率性をあげることにつながっていると考えられる。一方で、客観的な知識水準の低さに比して自己評価が高く相場感があると感じる層では相場感がない層より高額な保険料を負担する傾向にあることも示された。消費者が負担する保険料は、保険商品そのもののほか、契約期間を通して受けられる各種のサービスなどによっても異なることから、保険料の多寡のみをもって過不足を論じるべきものではないが、こうした結果は過剰な保障準備により家計により大きな負荷が生じている可能性も危惧されよう。
必要な保障準備は年齢や家族構成などの影響もあり時間の経過とともに変わることから、家計管理の観点からも少なくとも数年に1度は確認や見直しをすることが望ましい。その際、適切な保障を最小限のコスト(保険料)で確保していけるかどうかは、どの程度の保険料や保障額が適切かも含め、保険に関する正しい知識を身につけられているかどうかにかかっているといえるのではないだろうか。
(2020年03月03日「研究員の眼」)
井上 智紀
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