2020年03月03日

Z世代の情報処理と消費行動(5)-若者の「ヲタ活」の実態

生活研究部 研究員   廣瀨 涼

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5――ヲタ活の実態

では、実際にどのくらいに若者が、自分のことをオタクだと思っているのだろうか。例えば、SHIBUYA109 来館者(15~24歳女性)を対象とした「オタクに関する調査」では、72.6%が「ヲタ活」をしていたという。また、産業能率大学が行った大学生を対象とした同調査においても大学生の約8割が何かしらのオタクであると自称していたという7。矢野経済研究所の「2017年オタクに関する調査」では18~69歳までの男女のうち19.9%が何らかの「オタク」であったことがわかっており、2030年には40%にまで増加すると矢野経済研究所では見積もっている8。この矢野経済研究所が算出した40%という数字と比較しても、実際にはさらに若者のオタク人口は多いように思える。それはなぜだろうか。この背景には、「ヲタ活」という言葉が「ファン、お金や時間をたくさん費やしているもの」という2つの軸で使われていることがある。若者のヲタ活について調査する中で、ヲタ活には自己投資を目的とした「自分向けヲタ活」と、誰かを応援する「他人向けヲタ活」が存在することを確認した。

自分向けヲタ活は、エステやネイル、カフェ巡りなど消費の結果が自身に回帰するものを指し、一般的に自己投資や自分磨きと呼ばれるような性質を持っている9。他人向けヲタ活は、アイドルやYoutuber、マンガやアニメなど、従来のオタクが消費してきたような「コンテンツ」を対象としており、自分の消費が興味対象の応援に繋がる性質を持っている。
表2 2種類のヲタ活
このように、従来のオタクの消費は、好きなコンテンツを消費することが他人の利益に繋がるという構造であったが、ヲタ活という語が「お金や時間をたくさん費やしているもの」という曖昧な意味合いを含んでいるため、その対象が拡大された。そのため、矢野経済研究所が調査対象を16市場10に限っている一方で、若者の考える「ヲタ活」は言うなればすべての市場であてはまるため、8割がオタクであると自認するようになってもおかしな話ではないのである。

では、具体的に若者がヲタ活に年間どのくらい年間に消費しているのかを見てみよう(図2)。SHIBUYA109Labの同調査によると、15.6%の若者が150,000円以上を消費していたという。次いで「10,000円~20,000円未満」(15.0%)、「30,000円~50,000円未満」(14.4%)であった。参考値ではあるが、矢野経済研究所の「2019年オタクに関する調査」11を基にオタクの平均年間消費額を算出した結果「平均22,500円」12であったことから考えても、若者はヲタ活に対して熱心に支出していると言えるのかもしれない。
図2 最も力を入れているヲタ活の年間消費額
次に、最も力を入れている興味対象に対する具体的なヲタ活をみてみよう(図3)。「イベント・ライブに行く」(85.6%)や「商品を買う」(71.3%)が高いことで、ヲタ活の本質は自身の興味対象に対して支出することであることがわかる。一方で、「Twitterで情報収集する」(73.1%)や「SNSの専用アカウントを作る」(53.3%)が高いなど、SNSにおける活動がヲタ活において大きな意味を持っていることも伺える。これは、ヲタ活の基本がクラスタの文化や伝統に依拠している点と、他のクラスタメンバーと仲間意識を持つことで、自身がオタクであるというアイデンティティ形成に繋げているからである。
図3 最も力を入れている興味対象に対する具体的なヲタ活
実際にクラスタメンバーと繋がるため行われることとして、「ハッシュタグをつけて投稿」や「ハッシュタグ検索」が上位に上がるなど、廣瀨(2020a)13で論じた通り、ハッシュタグ(世界観)を用いて繋がりたい対象を選別しているように思われる(図4)。
図4 他のオタクと繋がるためにSNSで行ったことのある事
 
7 https://www.kogoma-brand.com/blog/9521/
8 松島勝人(2018)「2030年「オタク人口比率40%」へ!?」「矢野経済研究所アナリストeyes」https://www.yano.co.jp/opinion/180801.html
9 エステや美容などは手段であり、目的は自分磨き(見た目や内面の向上)にあることから、以前から釣りやカメラなど他人を応援しないオタクも存在していたが、それらとは性質が異なる。
10 「アニメ」、「漫画」、「ライトノベル」、「同人誌」、「プラモデル」、「フィギュア」、「ドール」、「鉄道模型」、「アイドル」、「プロレス」、「コスプレ衣装」、「メイド・コスプレ関連サービス」、「オンライン(スマートフォン向け)ゲーム」、「ボーカロイド」、「トイガン」、「サバイバルゲーム」
11 https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2047
12 調査対象の21市場(アニメ、漫画(電子コミック含む)、ライトノベル、同人誌、プラモデル、フィギュア、ドール、鉄道模型、アイドル、プロレス、コスプレ衣装、メイド・コスプレ関連サービス、オンライン(携帯電話向け)ゲーム、ボーカロイド(関連商品含む)、ミリタリー(トイガン、サバイバルゲーム)、アダルトゲーム、アダルトビデオ、恋愛ゲーム(アダルトゲーム除く)、ボーイズラブ、声優、)の平均年間消費額の平均金額
13 廣瀨涼(2020a)「 Z世代の情報処理と消費行動(3)若者マーケティングに対する試論(1)」『基礎研レター(2020/02/12)』 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63634&pno=2&more=1&site=nli
 

6――若者の考えるオタク像

6――若者の考えるオタク像

最後に若者が考えるオタク像について論じる。従来のオタクとZ世代のオタクの最大の違いは、他人との比較意識の有無にある。従来のオタクは、他人から認識されることで成立していた。自身がオタクであるか、にわか(ライトオタク)であるかは、他人と比較することで構造化され、「Aさんよりはオタクだが、Bさんと比べるとまだまだオタクを名乗れない。」といったように比較対象があるゆえに、それが消費のモチベーションとなっていた。また、“マウンティング”と呼ばれるような他のオタクに対して優位性を示すような行動も垣間見られた。

一方で筆者がZ世代を対象に行ったインタビューでは、多くの若者がオタクは自称することで成立すると考えており、これは筆者が過去のレポートで論じた通り、オタクがアイデンティティと同意語で用いられているからであると推量できる。また、若者はオタクを、にわか、ファンの上にある存在として認識し、自身の興味に対する覚悟や心構えで言葉を使い分けているという(図5)。確かに、Z世代のヲタ活においてもクラスタとの繋がりが自身のアイデンティティ構築に関係するなど影響を与えるが、他のクラスタメンバーは比較対象ではなく、あくまでも仲間であるという考えが強いようである。
図5 従来のオタク像とZ世代のオタク像

7――まとめ

7――まとめ

本レポートを通して、我々が考える従来のオタクとZ世代が考えるオタクが全く違う性質を持っているということを理解していただけたら幸いである。若者の消費において、筆者がクラスタに注目すべきと考えるのは、Z世代にとって「ヲタ活」とは自身の好きなことを肯定できるものであるからである。また、ヲタ活で他のクラスタメンバーと繋がることで、自身の価値観を共有し合い、好きなものを肯定し合うことで、その趣味が自身のアイデンティティとして構築されていくからである。

若者にとって、クラスタの存在は自身のアイデンティティ追求において欠かせない存在であり、消費において大きな影響を及ぼしている。複雑な若者の消費行動を理解するうえで、クラスタの概念が大きな手助けになると筆者は考えている。
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生活研究部   研究員

廣瀨 涼 (ひろせ りょう)

研究・専門分野
消費文化、マーケティング、ブランド論、サブカルチャー、テーマパーク、ノスタルジア

(2020年03月03日「基礎研レポート」)

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