2019年12月09日

【11月米雇用統計】雇用者数は前月比+26.6万人と市場予想(+18.0万人)を大幅に上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:雇用者数が市場予想を大幅に上回ったほか、失業率は前月から低下

12月6日、米国労働省(BLS)は11月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+26.6万人の増加1(前月改定値:+15.6万人)と、+12.8万人から上方修正された前月、市場予想の+18.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。

失業率は3.5%(前月:3.6%、市場予想:3.6%)と前月から▲0.1%ポイント低下し、市場予想も下回った(後継図表6参照)。労働参加率2は63.2%(前月:63.3%)と、こちらは前月から▲0.1%ポイント低下した(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:全般的に良好な結果。労働市場の堅調な回復持続を示唆

11月の雇用増加数は、10月がGMストの影響で▲4.6万人3過小評価された反動で前月から伸びの加速が見込まれていたが、実際には市場予想を大幅に上回り19年1月(+31.2万人)以来の伸びとなった。この結果、過去3ヵ月の月間平均増加数は+20.5万人と20万人超となり、足元で雇用の伸びが再加速していることを示した。また、19年通年の平均増加数は+18.0万人と、昨年の同+22.3万人は下回ったものの、雇用回復期間が9年を超える中では非常に力強い雇用増加と言えよう。

一方、家計調査は労働参加率が前月から低下したことを考慮する必要はあるが、失業率が前月から低下し、およそ50年ぶりの水準となるなど、引き続き労働需給がタイトであることを示した。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.2%(前月改定値:+0.4%、市場予想:+0.3%)と、+0.2%から上方修正された前月、市場予想を下回った。一方、前年同月比は+3.1%(前月改定値:+3.2%、市場予想:+3.0%)と、こちらは、+3.0%から上方修正された前月値を下回ったものの、市場予想は上回った(図表1)。

このようにみると、11月は労働参加率こそ小幅に低下したものの、力強い雇用増加に加え、賃金の伸びも堅調となっており、全般的に良好な結果と評価できる。労働市場の回復期間は9年を超えて長期化しているものの、依然として堅調な回復が持続していることを示している。

3.事業所調査の詳細:GMストの反動で製造業雇用が大幅に増加

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+20.6万人(前月:+18.8万人)と前月から伸びが加速した(図表2)。
(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 民間サービス部門の中では、卸売業が前月比▲0.4万人(前月:+1.0万人)と前月からマイナスに転じたほか、小売業が+0.2万人(前月:+2.2万人)、娯楽・宿泊が+4.5万人(前月:+7.0万人)と前月から伸びが鈍化した。

一方、専門・ビジネスサービスが+3.8万人(前月:+4.3万人)と堅調な伸びを維持したほか、医療サービスが+4.5万人(+1.2万人)と前月から伸びが加速した。

財生産部門は前月比+4.8万人(前月:▲2.5万人)と前月からプラスに転じた。建設業が+0.1万人(前月:+1.4万人)と前月から伸びが鈍化したものの、製造業が+5.4万人(前月:▲4.3万人)とGMストの解消に伴い前月からプラスに転じて全体を押上げた。

政府部門は、前月比+1.2万人(前月:▲0.7万人)と前月からプラスに転じた。内訳をみると、連邦政府が▲0.1万人(前月:▲1.6万人)と前月からマイナス幅が縮小したほか、州・地方政府が+1.3万人(前月:+0.9万人)と伸びが加速したことが大きい。

4.家計調査の詳細:労働力人口は7ヵ月連続増加も伸びが鈍化

家計調査のうち、11月の労働力人口は前月対比で+4.0万人(前月:+32.5万人)と7ヵ月連続の増加となったものの、前月から大幅に伸びが鈍化した。内訳を見ると、就業者数が+8.3万人(前月:+24.1万人)と前月から伸びが鈍化したほか、失業者数が▲4.4万人(前月:+8.6万人)と前月からマイナスに転じて全体を押下げた。非労働力人口は+13.5万人(前月:▲11.8万人)とこちらは前月からプラスに転じた。

これらの結果、労働参加率は63.2%と13年8月(63.3%)以来の水準に上昇した前月から▲0.1%ポイントの低下となった(図表5)。一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は11月が82.8%(前月:82.8%)とこちらは前月から横這いとなった。男女の内訳は、男性が89.3%(前月:89.1%)と前月から+0.2ポイント上昇したものの、女性が76.5%(前月:76.6%)と▲0.1%ポイント低下した。

このように労働参加率の低下はみられたものの、小幅な低下に留まっているほか、プライムエイジの労働参加率に低下はみられなかった。このため、失業率が再び50年ぶりの水準に低下したことと併せ、家計調査は引き続き労働市場がタイトであることを示していると言えよう。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
11月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は122.4万人(前月:126.4万人)と前月から▲4.0万人減少した。長期失業者の失業者全体に占めるシェアも20.8%(前月:21.5%)と、前月から▲0.7%ポイント低下した(図表7)。平均失業期間も20.2週(前月:21.8週)と前月から▲1.6週短期化した。このため、11月は長期失業者に関する指標全てが改善する結果となった。
 
最後に、周辺労働力人口(124.6万人)4や、経済的理由によるパートタイマー(432.2万人)も考慮した広義の失業率(U-6)5をみると、11月は6.9%(前月:7.0%)と前月から▲0.1%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は3.4%ポイント(前月:3.4%ポイント)と、前月から横這いとなった。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
4 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
5 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2019年12月09日「経済・金融フラッシュ」)

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