2019年11月28日

【10月米個人所得・消費支出】個人所得は前月比横這い、消費支出は+0.3%と、所得は市場予想を下回る一方、消費は一致

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を下回るも、個人消費は市場予想に一致

11月27日、米商務省の経済分析局(BEA)は10月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比横這い(前月:+0.3%)となり、前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%を下回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.3%(前月:+0.2%)と、こちらは前月を上回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.1%(前月:+0.2%)と、前月から低下したものの、横這いを見込んだ市場予想を上回った(図表5)。貯蓄率1は7.8%(前月:8.1%)と、前月値から▲0.3%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:横這い)と前月を上回ったものの、市場予想(+0.3%)は下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.1%(前月:横這い)と、こちらは前月を上回ったほか、市場予想(+0.1%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.3%(前月:+1.3%)と前月に一致、市場予想(+1.4%)は下回った。コア指数は+1.6%(前月:+1.7%)と、こちらは前月、市場予想(+1.7%)を下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:基調としての物価上昇圧力は後退

10月は個人所得の伸びが鈍化する一方、個人消費の伸びが加速した結果、貯蓄率が3ヵ月ぶりの低下となった(図表1)。
(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 なお、米国では本日(11月28日)の感謝祭翌日から年末にかけて、消費で最も重要な年末商戦を迎える。全米小売業協会は今年の年末商戦売上高の見通しを前年比+3.8%~+4.2%と過去5年平均(同+3.7%)よりも伸びを予想している。

労働市場の回復持続、高水準の消費者センチメントなど消費を取り巻く環境は依然として良好となっており、年末にかけて消費が堅調な伸びが期待できる状況となっている。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、物価目標である2%を下回り、総合指数が+1.3%と前月に一致した一方、物価の基調を示すコア指数は+1.6%と前月から▲0.1%ポイント低下した。これで、コア指数は8月の+1.8%から2ヵ月連続で低下しており、足元で物価上昇圧力は後退がみられる。

労働需給の逼迫は持続しているものの、雇用統計における時間当り賃金(前年同月比)は19年10月が+3.0%と19年7月の+3.2%から頭打ちとなっており、賃金面から物価上昇圧力は高まっていない。このため、コア指数は物価目標を下回る状況が持続すると見込まれる。

3.所得動向:利息・配当、農家の所得が減少

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.4%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した一方、利息・配当収入は▲1.0%(前月:+1.0%)と高い伸びとなった前月の反動もあってマイナスに転じた(図表2)。また、自営業者所得も▲1.0%(前月:+0.3%)と大幅なマイナスとなった。これは、農家に対する補助金が減少したことに伴い、農家の所得が前月比▲39.3%(前月:+27.2%)と大幅なマイナスに転じたことが大きい。

一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、10月が▲0.1%(前月:+0.3%)と19年1月(▲0.0%)以来のマイナスとなった(図表3)。さらに、価格変動の影響を除いた実質ベースも▲0.3%(前月:+0.3%)と、こちらも19年4月(▲0.5%)以来のマイナスとなった。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連消費が減少も、ガソリン・エネルギー消費が押上げ

10月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.2%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した一方、サービス消費は+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びを維持した(図表4)。

財消費では、耐久財が▲0.7%(前月:+1.1%)と19年4月(▲0.1%)以来のマイナスとなったものの、非耐久財が+0.6%(前月:▲0.5%)と前月からプラスに転じ、財消費全体を押上げた。

耐久財では、娯楽財・スポーツカーが+0.4%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じた一方、自動車・自動車部品が▲2.2%(前月+3.3%)と前月からマイナスに転じたほか、家具・家電が▲0.1%(前月:▲0.2%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。

非耐久財では、衣料・靴が▲0.2%(前月:▲0.3%)と3ヵ月連続でマイナスとなった一方、食料・飲料が+0.4%(前月:▲0.5%)、ガソリン・エネルギーも+3.5%(前月:▲2.8%)と前月からプラスに転じた。

サービス消費は、外食・宿泊が▲0.2%(前月:+0.8%)と前月からマイナスに転じた一方、娯楽が+0.4%(前月:横這い)、住宅・公共料金も+0.6%(前月:+0.4%)と、前月から伸びが加速した。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前年同月比で物価押下げが持続

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+2.6%(前月:▲1.3%)と3カ月ぶりにプラスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:横這い)とこちらは前月から伸びが加速した。

前年同月比では、エネルギー価格指数が▲4.2%(前月:▲4.8%)と6ヵ月連続のマイナスとなった(図表7)。一方、食料品価格指数は+1.1%(前月:+0.8%)とこちらは17年7月以来28ヵ月連続のプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2019年11月28日「経済・金融フラッシュ」)

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