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- 投信の売却で国内REITの下げ幅拡大~2019年11月の投信動向~
コラム
2019年12月04日
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国内株式から今年最大の資金流出
2019年11月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、11月は国内株式、外国株式、外国債券、国内REITから資金流出があった【図表1】。バランス型、外国REIT、その他(主にマルチストラテジー)、国内債券には資金流入があったものの、ファンド全体で3,500億円の資金流出となった。10月の1,300億円の資金流出から拡大し、今年最大であった4月の6,100億円の資金流出に次ぐ流出規模であった。
国内株式では3,300億円の資金流出があり、これまで今年最大だった4月や10月の2,700億円を上回った。国内株式のアクティブ・ファンドからの資金流出が2,000億円と、4月の1,200億円や10月の1,500億円と比べて資金流出が顕著であった。11月は、日経平均株価が2万3,000円を超えるなど、約1年1カ月ぶりの高値水準で推移した。そのため、これまでよりも国内株式のアクティブ・ファンドに投資していた中長期の投資家からの売却が膨らんだ様子である。
その一方で国内株式のインデックス・ファンドからの資金流出は1,000億円と金額自体は大きいものの、10月の1,400億円から鈍化した。11月は日経平均株価が12日に2万3,500円台をつけてから、やや調整した影響もあったと思われる。ただ、11月の資金流出は最大だった6日でも200億円に届かなかった。10月は17日に300億円を超える資金流出があったことを踏まえると、インデックス・ファンドを用いてタイミング投資を行っている短期投資家の売却は一巡してきているのかもしれない。
国内株式では3,300億円の資金流出があり、これまで今年最大だった4月や10月の2,700億円を上回った。国内株式のアクティブ・ファンドからの資金流出が2,000億円と、4月の1,200億円や10月の1,500億円と比べて資金流出が顕著であった。11月は、日経平均株価が2万3,000円を超えるなど、約1年1カ月ぶりの高値水準で推移した。そのため、これまでよりも国内株式のアクティブ・ファンドに投資していた中長期の投資家からの売却が膨らんだ様子である。
その一方で国内株式のインデックス・ファンドからの資金流出は1,000億円と金額自体は大きいものの、10月の1,400億円から鈍化した。11月は日経平均株価が12日に2万3,500円台をつけてから、やや調整した影響もあったと思われる。ただ、11月の資金流出は最大だった6日でも200億円に届かなかった。10月は17日に300億円を超える資金流出があったことを踏まえると、インデックス・ファンドを用いてタイミング投資を行っている短期投資家の売却は一巡してきているのかもしれない。
テーマ型ファンドは短期で売り抜ける
外国株式でも11月は、1,800億円の大規模な資金流出になった。2018年前半以前に人気であったロボットやAIといったテクノロジー系のテーマ型外国株式ファンドからの資金流出が顕著であった。以前から資金流出基調であったが、11月は世界的に株式が好調だったこともあり、売却が膨らんだ様子である。
11月は、米国でヘルスケア改革(に伴うバイオ・ヘルスケア株の収益悪化)に対する警戒感がやや和らいだこともあり、世界的に株価が上昇する中で特にバイオ・ヘルスケア株が好調であった。実際にバイオ・ヘルスケア株ファンドは、11月の収益率が10%を超えるもの(緑太字)もあるなど、総じて高パフォーマンスであった【図表2】。
11月は、米国でヘルスケア改革(に伴うバイオ・ヘルスケア株の収益悪化)に対する警戒感がやや和らいだこともあり、世界的に株価が上昇する中で特にバイオ・ヘルスケア株が好調であった。実際にバイオ・ヘルスケア株ファンドは、11月の収益率が10%を超えるもの(緑太字)もあるなど、総じて高パフォーマンスであった【図表2】。
バイオ・ヘルスケア株ファンドは2018年後半から2019年前半にかけて投資家の人気を集めたが、11月は資金流出(赤棒)が大きかった【図表3】。バイオ・ヘルスケア株ファンドの人気自体は2019年前半に一服しており、8月以降、少額ながら資金流出が続いていたが、11月は流出金額が500億円を超え加速した。11月末時点でバイオ・ヘルスケア株ファンドの残高8,600億円と比べると流出金額は小さいが、やはり足元の高パフォーマンスを受けて売却する投資家が多かったといえるだろう。
ここで人気になった2018年後半以降のバイオ・ヘルスケア株ファンドの基準価格の推移(緑線)をみると、ほとんど市場平均(黄線)並みのパフォーマンスであり、小幅な上昇にとどまっていることが分かる。つまり、2018年後半以降に購入した投資家のほとんどが11月時点で含み損にこそなっていないものの、あまり収益を得られていない状況にあったと推察される。それでも11月に売却が膨らんだことを踏まえると、半年や1年といった短期でテーマ型ファンドを売り抜けようとする投資家が多いことが示唆される。
ここで人気になった2018年後半以降のバイオ・ヘルスケア株ファンドの基準価格の推移(緑線)をみると、ほとんど市場平均(黄線)並みのパフォーマンスであり、小幅な上昇にとどまっていることが分かる。つまり、2018年後半以降に購入した投資家のほとんどが11月時点で含み損にこそなっていないものの、あまり収益を得られていない状況にあったと推察される。それでも11月に売却が膨らんだことを踏まえると、半年や1年といった短期でテーマ型ファンドを売り抜けようとする投資家が多いことが示唆される。
国内REITは黄信号か
また、規模こそ内外株式、外国債券と比べて小さかったが、国内REITからも11月は340億円の資金流出があった。国内REITは2018年以降、東証REIT指数(線グラフ)が右肩上がりで上昇するなど好調であった【図表4:左】。それもあって2018年12月から資金流入(青棒)が続いていたが、11月は1年ぶりに資金流出に転じた。
11月の資金動向を日次でみると、5日から15日にかけて国内REITから資金流出があり、特に11日から15日にかけて大きかったことが分かる【図表4:右】。東証REIT指数は直ちに反発したものの6日から13日にかけて6%以上下落するなど国内REIT価格は一時、急落した。この急落は国内長期金利の変動(上昇)によるところが大きいと思われるが、国内REIT(ファンド)からの資金流出が国内REIT価格の下げ幅を広げていたようだ。
2019年は東証REIT指数が年初から10月までで27%上昇するなど、国内REITが特に好調であったが、ファンドからの資金流入が追い風になっていた。それが11月、特に急落時に資金流出に転じたことを踏まえると、国内REITは11月に価格が不安定だっただけでなく、これまでと状況が変わった可能性が示唆される。国内REITはファンドの資金動向と合わせて先行きに注意が必要かもしれない。
11月の資金動向を日次でみると、5日から15日にかけて国内REITから資金流出があり、特に11日から15日にかけて大きかったことが分かる【図表4:右】。東証REIT指数は直ちに反発したものの6日から13日にかけて6%以上下落するなど国内REIT価格は一時、急落した。この急落は国内長期金利の変動(上昇)によるところが大きいと思われるが、国内REIT(ファンド)からの資金流出が国内REIT価格の下げ幅を広げていたようだ。
2019年は東証REIT指数が年初から10月までで27%上昇するなど、国内REITが特に好調であったが、ファンドからの資金流入が追い風になっていた。それが11月、特に急落時に資金流出に転じたことを踏まえると、国内REITは11月に価格が不安定だっただけでなく、これまでと状況が変わった可能性が示唆される。国内REITはファンドの資金動向と合わせて先行きに注意が必要かもしれない。
レバレッジ活用ファンドの人気は続くのか
11月は多くの資産クラスで資金流出となる中、バランス型と外国REITへの資金流入が堅調であった。バランス型は1,600億円の資金流入と10月の1,900億円からやや鈍化した。これはDC(確定拠出年金)専用ファンドへの資金流入が10月の500億円から11月は100億円にとどまったことが大きく、通常のバランス型の販売は引き続き好調であった。外国REITでは700億円の資金流入と10月の400億円から倍近い流入となり、REITについては内外で明暗が分かれる形となった。
また、人気を集めたファンドをみると10本中、4本(赤太字)がレバレッジを活用したファンドであった【図表5】。まず、4月から大人気となっているバランス型の「グローバル3倍3分法ファンド」はシリーズ合計で900億円に迫る資金流入があった。それに加えて11月は新設された2本も人気であった。「マンAHLスマート・レバレッジ戦略ファンド」はマルチストラテジー型(【図表1】では「その他」に分類)、「米国株式シグナルチェンジ戦略ファンド」は外国株式のレバレッジを活用したファンドである。
レバレッジを活用すると、レバレッジを活用していない場合と比べて価格変動が大きくなる。11月人気の4ファンドについては、「グローバル3倍3分法ファンド」ならば分散効果、新設2ファンドならば機動的なポジション調整(価格変動が大きくなると見込まれているときにレバレッジを減らす)といった価格変動を抑える工夫がされている。ただ、分散効果も機動的なポジション調整も常に有効に機能するとは限らないため、予想以上に大きく価格が変動する可能性があり、注意が必要である。
過去に人気だったレバレッジを活用したファンドといえば、通貨選択型ファンドがある。選択した新興国通貨の価格変動が大きかったことや、金融庁が問題視し積極的な販売が控えられるようになったこともあり、通貨選択型ファンドの人気はすぐに収まった。今回のレバレッジを活用したファンドの人気も一時的、つまり通貨選択型ファンドと同じ道を歩むのか、それとも新たな定番となっていくのか注目される。
また、人気を集めたファンドをみると10本中、4本(赤太字)がレバレッジを活用したファンドであった【図表5】。まず、4月から大人気となっているバランス型の「グローバル3倍3分法ファンド」はシリーズ合計で900億円に迫る資金流入があった。それに加えて11月は新設された2本も人気であった。「マンAHLスマート・レバレッジ戦略ファンド」はマルチストラテジー型(【図表1】では「その他」に分類)、「米国株式シグナルチェンジ戦略ファンド」は外国株式のレバレッジを活用したファンドである。
レバレッジを活用すると、レバレッジを活用していない場合と比べて価格変動が大きくなる。11月人気の4ファンドについては、「グローバル3倍3分法ファンド」ならば分散効果、新設2ファンドならば機動的なポジション調整(価格変動が大きくなると見込まれているときにレバレッジを減らす)といった価格変動を抑える工夫がされている。ただ、分散効果も機動的なポジション調整も常に有効に機能するとは限らないため、予想以上に大きく価格が変動する可能性があり、注意が必要である。
過去に人気だったレバレッジを活用したファンドといえば、通貨選択型ファンドがある。選択した新興国通貨の価格変動が大きかったことや、金融庁が問題視し積極的な販売が控えられるようになったこともあり、通貨選択型ファンドの人気はすぐに収まった。今回のレバレッジを活用したファンドの人気も一時的、つまり通貨選択型ファンドと同じ道を歩むのか、それとも新たな定番となっていくのか注目される。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
(2019年12月04日「研究員の眼」)
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03-3512-1785
経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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