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子どもの骨折増加に2つの側面

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1 ロコモティブシンドローム”予備軍~」、2016年に産経新聞で「「老化」する小中学生 つまづいて骨折 和式トイレでかがめない…」、2019年に産経新聞で「子供の運動離れ 体力低下、けがの重症化懸念」等。
1――学校での骨折は30年前の1.5倍
1 学校以外での骨折を含めた分析は、村松容子(2017)「子ども・高齢者ともに骨折は増加」ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート
2――小学生は休み時間。中高生は部活動。

実施競技別にみると、跳箱、バスケットボールでの骨折が多くなっている。
中学生になると、部活動が52.3%と、もっとも高い。体育は27.5%(各教科合計で28.1%)、休憩時間は10.5%である。高校生も、部活動が56.0%と、もっとも高い。体育は27.8%(各教科合計で28.1%)、休憩時間は3.9%である。
実施競技別にみると中学生も高校生も、バスケットボール、サッカー・フットサルが多い。部活動での骨折についてみると、中学生はバスケットボールとサッカー・フットサルがそれぞれ全部活動における骨折の4分の1程度を占めている。一方、高校生では、サッカー・フットサルが全部活動における骨折の4分の1程度、野球、バスケットボールがそれぞれ2割弱となっている。競技人口の影響もあるだろう。
3――子どもの骨折増加に2つの側面
ず、1つ目の側面は、子ども時代にロコモ(ロコモティブシンドローム)が起きている可能性があげられる。
高齢期の骨折は、要介護状態となる要因の1つであり3、身体や生活の質(QOL)に深刻な影響を与えることがあることで知られている。一般に、加齢にともなう筋肉・骨・関節等のトラブルによって、バランス能力・体力・移動能力などが衰え、立ったり歩いたりといった日常動作が困難になることをロコモと呼ぶ。
一昔前までは、子ども時代の骨折を、高齢期のロコモと結び付けて考えることはなかったように思う。むしろ、男児の骨折や運動中の骨折が多いことから、骨折は、活発な証拠、といった印象すらあったのではないだろうか。しかし、最近では、テレビや新聞で、跳び箱で手をついただけで両手首を骨折した子どもや、和式トイレでかがめない子どもの話題が取り上げられているように、高齢者だけでなく子ども時代からロコモが起きている可能性が懸念されている。身体活動の減少によって筋肉・骨・関節等や、危険を回避する力が弱くなり、骨折等重症化するケースが増加していると考えられているのである
一方で、2つ目の側面として、中学生以上の部活動中の骨折が多いことから推察できるように、特定の部位のみを使いすぎているオーバーユースの可能性があげられる。身体の成長が早まったことに伴い、早くからより高度な技術を使うことも、骨折増加の要因となっているという指摘がある4。
このような背景の中、2016年度から、学校の健康診断に「しゃがみ込むことができない」「体を前屈、後屈できない」「片足立ちを5秒保てない」「関節に痛みがある」「両腕とも痛みなく、完全に上まで上げられない」などの運動器の確認項目が追加された。学校の健康診断を通じて、ロコモの兆候やオーバーユースの可能性を早い段階で発見しようとするものである。
幼少期から、個々の体力、身体の成長に見合った運動の推奨が肝要だろう。
3 厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」によると、要介護状態となった要因は、多い順に「認知症」「脳血管疾患」「高齢による衰弱」「骨折・転倒」である。
4 笠次良爾「学校管理下における児童生徒のケガの特徴について」Kansai学校安全6号(2011年)
(2019年11月05日「基礎研レター」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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