2019年02月05日

銀行預金の東京一極集中に起因した金利低下圧力

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   福本 勇樹

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個人名義の預金(個人預金)残高は、2018年10月時点で575兆円に達した。1998年10月時点で319兆円であったことを考えると、この20年間で個人預金残高が80%増加したことになる。各地域における個人預金残高(事業所ベース)の伸び率をみると(図表1)、東京都が他の地域を大きく引き離して拡大しており(127%増加)、全国の個人預金に占める東京都の個人預金の割合は23%に達している。4分の1近くの個人預金が東京都に集中しているのである。
図表1:東京都と各地域の個人預金残高の推移
一方で、地域別の個人預金に対する貸出金の比率(事業所ベース)の推移を見ると、個人預金の伸び率と平仄を合わせて貸出金が伸びているわけではない(図表2)。法人が資金余剰主体にある中で、全国的に当該比率は低下傾向にあったが、他地域と比較して東京都の比率が最も低下している。法人預金も東京都に集中しつつある中で、貸出金競争も熾烈となって利ざやが圧縮されており、東京都周辺の金融機関は他地域と比べて貸出金からの収益は望みにくい。さらに、低金利環境の長期化により国内債券運用から十分な利回りを獲得するのも難しく、東京都に集中した銀行預金の多くは、結果的に日銀当座預金に蓄積されることになる。

日銀当座預金は、マイナス金利政策において3つの階層に分類される。マイナス金利(▲0.1%)はそのうちの「政策金利残高」のみに適用され、その他の2つの階層である「基礎残高」には0.1%、「マクロ加算残高」には0%が適用される。また、基礎残高をおおよそ一定水準に保ち、政策金利残高の規模を一定の幅に抑制しながら、マクロ加算残高の上限をコントロールする運営になっている。よって、相対的に日銀当座預金残高が他の金融機関よりも増加傾向にある金融機関は、政策金利残高に起因したマイナス金利の支払いを強いられる可能性が高まる。
図表2:東京都と各地域の「貸出金÷個人預金」の推移
マイナス金利政策が導入された2016年1月以降も、東京都の個人預金が占める割合は拡大している(+1%)。よって、法人預金も含めて、東京都の銀行預金の多くを抱えるとみられる都市銀行や東京都周辺の地域金融機関は、日銀当座預金残高が相対的に増加することで、マイナス金利を支払っていると想定されるだろう。しかし、実際は、2018年11月時点の政策金利残高の合計は平均17兆円で、その多くを、信託銀行(9.4兆円)、外国銀行(4.8兆円)とその他準備預金制度適用先(ゆうちょ銀行、大手信用金庫など)(1.7兆円)が占めている。一方で、都市銀行は2016年6月以降「政策金利残高ゼロ」を継続しており、地方銀行・第2地方銀行は340億円と、他の金融機関と比較して政策金利残高の水準は極端に低い。つまり、都市銀行や地方銀行・第2地方銀行は、マイナス金利をほとんど支払ってはいないのである。

実は、▲0.1%よりも高い金利で運用する代替手段があれば、金融機関は政策金利残高を減少させ、マイナス金利政策に伴うコストを削減することができる。例えば、無担保コールレート(翌日物)(▲0.06962%:2018年12月末)やTIBOR(1週間物)(▲0.00273%:同)などが挙げられる。日銀当座預金残高に余裕のある金融機関はマイナス金利で資金調達をすると収益が得られるため、資金調達サイドにも一定の取引ニーズがある。そのため、これらの短期の金利商品を用いて運用すれば、低リスクでコスト削減が達成される。他に、信用リスクの低い発行体による短・中期の一般債への運用なども選択肢に入るだろう。

以上の考察から、東京都周辺の金融機関は、日銀当座預金残高の増加圧力に苦心しながら、上記のような短・中期の金利商品を活用するなどして、政策金利残高を低く維持していたものと考えられる。また、東京都に銀行預金が集中するに従って、マイナス金利政策に起因したコストの削減を目的とした運用の規模も徐々に大きくなっていたものと想定される。特に、TIBORでは、リファレンスバンクとして都市銀行や東京都周辺の地方銀行も金利を呈示しているが、2018年6月中旬以降、TIBOR(1週間物)においてマイナス金利が常態化しているのが象徴的である。2018年7月に日本銀行が政策金利残高の平均水準を半減させる措置をとったとはいえ、マイナス金利政策が長期化すれば、銀行預金の東京一極集中に伴って、短期を中心に金利低下圧力が徐々に強まっていくのではないか。
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

福本 勇樹 (ふくもと ゆうき)

研究・専門分野
リスク管理・価格評価

(2019年02月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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