2018年04月09日

マイナス金利政策による投資家の運用資産の保有割合の変化

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹

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■要旨
 
  • マイナス金利政策導入後、日本の短期金融市場ではマイナス金利が常態化している。
     
  • 家計と確定給付年金は、現預金の保有にコストがかかるため、現預金の保有割合を減少させている。
    それ以外の投資家は、マイナス金利政策以降、現預金残高を拡大させた。
     
  • 日銀当座預金を持つ銀行等は、基礎残高からプラスの利回りを享受でき、マクロ加算残高を用いた取引により短期金融市場からリターンを得ることも可能なため、短期運用を継続しつつ現預金の拡大を一定程度受けれている。
     
  • 日銀当座預金を持たない機関投資家は短期金融市場から資金を引き上げ、現預金での保有を選択したと考えられる。
    また、債券からリターンを得るにはデュレーションを長期化させる必要があったため、現預金と合わせた全体のデュレーションを一定水準に維持または短期化させる目的もあったと考えられる。
     
  • 一方で、機関投資家において、現預金、債券と貸出金を合わせた保有割合が減少している点が共通しており、銀行等を除く機関投資家は株式、投資信託と対外証券投資を合わせた保有割合を増加させた。
     
  • 確定拠出年金では、現預金にマイナス金利のコストがかからないため、あえて価格変動リスクをとらず、元本確保や税制メリットを享受しているものと考えられる。

■目次

1――マイナス金利政策導入後の日銀当座預金残高の推移
2――マイナス金利政策導入によって生じた短期金融市場の変化
3――マイナス金利政策による投資家の運用資産の保有割合への影響
  1|現預金に対する投資家の行動選択の差異
  2|機関投資家による貸出金・債券の保有割合の低下
4――まとめ
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金融研究部   金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任

福本 勇樹 (ふくもと ゆうき)

研究・専門分野
金融・決済・価格評価

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