2018年11月09日

オフィスは需給逼迫が継続。Jリートは物件の入替を積極化。-不動産クォータリー・レビュー2018年第3四半期

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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1.経済動向・住宅市場

2018年4-6月期の実質GDP(2次速報)は、設備投資の上方修正を主因として1次速報の前期比0.5%から前期比0.7%へ上方修正された。この結果を受けてニッセイ基礎研究所は、実質GDP成長率について2018年度が1.2%(前回1.1%)、2019年度が0.8%と予想する1(図表-1)。

一方で、7-9月期の鉱工業生産は前期比▲1.6%(4-6月期は1.3%)と2四半期ぶりに低下した。業種別には、自然災害による供給制約の影響を強く受けた輸送機械、鉄鋼の落ち込みが目立つ。また、電子部品・デバイスが2016年4-6月期以来9四半期ぶりの減産となった2(図表-2)。
図表-1 実質GDP成長率の推移(前年比)/図表-2 鉱業業生産指数(前期比)
9月の日銀短観によると、大企業・製造業の業況判断DIは「19」(前期比▲2)となり3期連続で悪化したが、依然高水準を維持している。大企業・不動産業も32(▲5)と悪化したが、前回の見通し30を上回った(図表-3)。

9月の完全失業率は2.3%(前月比▲0.1%)とさらに低下した(図表-4)。建設技能者の需給は、8職種全てで不足の状態が続いている(図表-5)。また、東京都の建築費指数(工事原価9月)は、集合住宅RCで118.8(前年同月比+3.4)、事務所SRCで116.5(+4.0)となり上昇が継続している(図表-6)。
図表-3 日銀短観 業況判断DI/図表-4 完全失業率と有効求人倍率
図表-5 建設技能労働者過不足率(8職種計・全国・季節調整値)/図表-6 建築工事原価指数(東京)
国土交通省によると、2018年9月の新設住宅着工戸数は前年比▲1.5%の減少で約8.2万戸、このうち全体の4割を占める貸家が▲5.8%の減少となり、全体の減少の主因となった(図表-7)。
図表-7 新設住宅着工戸数(全国)
不動産経済研究所によると、首都圏の新規マンション発売戸数(前年比)は7月▲12.8%、8月▲28.5%、9月+13.2%と振れ幅はあるものの、1-9月累計では前年とほぼ同じ水準(約2.3万戸)となっている(図表-8)。また、契約率は7月67.8%、8月64.5%、9月66.5%といずれも好不調の目安となる70%を下回った(図表-9)。
図表-8 分譲マンション新規発売戸数(首都圏・暦年比較)/図表-9 分譲マンション初月契約率(首都圏・月次)
東日本不動産流通機構(レインズ)によると、9月の首都圏中古マンションの成約件数は、前年比+0.7%となり2ヶ月連続で増加、㎡単価は前年比1.4%と69ヶ月連続で上昇した(図表-10)。一方で、9月の在庫件数は46,701件となり高い水準で推移している(図表-11)。

今後の住宅市場については2019年10月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響が注目される。
図表-10 首都圏のマンション成約件数(12ヶ月累計値)/図表-11 首都圏の中古マンション在庫件数
 
1 斎藤太郎『2018・2019年度経済見通し-18年4-6月期GDP2次速報後改定』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター 2018年9月10日)
2 斎藤太郎『鉱工業生産18年9月-自然災害の影響で2四半期ぶりの減産』(同、経済・金融フラッシュ2018年10月31日)
 

2.地価動向

2.地価動向

2018年7月の都道府県地価調査では、全国平均の地価が全用途で前年比+0.1%(2017年調査、前年比▲0.3%)となり27年ぶりに上昇した。3大都市圏の商業地は前年比+4.2%(+3.5%)と5年連続で上昇した。東京圏+4.0%(+3.3%)、大阪圏+5.4%(+4.5%)、名古屋圏+3.3%(+2.6%)は全て上昇幅を拡大した。また、地方四都市(札幌・仙台・広島・福岡)は、商業地が+9.2%(+7.9%)、住宅地が+3.9%(+2.8%)となり、3大都市圏を上回る上昇が継続している(図表-12,13)。個別の価格上昇地点をみると、商業地の1位・住宅地の1~3位に北海道虻田郡倶知安町(ニセコ周辺)、商業地2~4位に京都、住宅地4~7位に沖縄がランクインしており、外国人旅行者に人気のエリアでの地価上昇が目立つ結果となった(図表-14)。 
図表-12 基準地価(H30.7)/図表-13 基準地価の推移(三大都市圏)
図表-14 基準地価上昇率(上位)
国土交通省の「地価LOOKレポート(2018年第2四半期)」によると、全国100地区のうち、上昇が「95」(前期比+4)、横ばいが「5」(▲4)、下落が「0」となり上昇地区が前回から増加した(図表-15)。

野村不動産アーバンネットによると、2018年7-9月期の首都圏の住宅地価格変動率は、前期比0.2%上昇した(前年比+0.5%)。上昇割合は12.5%(前回8.3%)、横ばい割合は85.1%(前回88.7%)、下落割合は2.4%(前回3.0%)となり、横ばいの傾向が継続している(図表-16)。
図表-15 全国の地価上昇・下落の推移/図表-16 首都圏の住宅地価(変動率、前期比)
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年~ 兵庫県都市計画審議会専門委員

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