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- 新興国株式から逃げる投資家~2018年10月の投信動向~
コラム
2018年11月07日
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国内株式では、2,500億円に迫る資金流入がインデックス・ファンドにあった。個別ファンドでみても、日経平均株価のインデックス・ファンドに大規模な資金流入があったことが確認できる【図表2:赤太字】。10月は、月初には日経平均株価が24,000円を超えていたが、下旬には場中に一時21,000円を下回るなど、国内株式は大きく下落した。そのような市場環境の中、5日以降、インデックス・ファンドには断続的に資金流入があった。特に、日経平均株価の1日の下落幅が800円を超えた翌営業日の12日、26日には、12日に500億円、26日に300億円の資金流入が顕著であった。インデックス・ファンドの資金動向は、10月も株価急落に伴い逆張り投資の傾向が確認できた。
株価は調整するも外国株式への投資意欲は衰えず
外国株式は、10月の資金流入が3,600億円と9月の1,700億円から急増した。急増した要因として、9月はめぼしい新設ファンドの設定がなかったが、10月は新設ファンドの大型設定があったことがあげられる。10月1日設定の「フィッシャー・グローバル・スモールキャップ・エクイティ・ファンド」は500億円、「野村ACI先進医療インパクト投資」は4コース合計で770億円もの資金を集めた【図表2:緑太字】。
10月に資金流入が急増したのは新設ファンドの大型設定だけでなく、テクノロジー系のテーマ株ファンドや米ハイテク株などに投資している米成長株ファンドの人気が継続していたこともあげられる【図表2:青太字】。10月は世界的に株価が下落し、特に割高感が意識されたこともあり、米ハイテク株も大きく下落した。そのため外国株式ファンドの中には10月1カ月間で10%以上、下落するファンドが多かった。国内株式のように逆張り投資する傾向はみられなかったが、大きく調整する中でも投資家の人気は衰えず、引き続き資金を集めていた。
10月に資金流入が急増したのは新設ファンドの大型設定だけでなく、テクノロジー系のテーマ株ファンドや米ハイテク株などに投資している米成長株ファンドの人気が継続していたこともあげられる【図表2:青太字】。10月は世界的に株価が下落し、特に割高感が意識されたこともあり、米ハイテク株も大きく下落した。そのため外国株式ファンドの中には10月1カ月間で10%以上、下落するファンドが多かった。国内株式のように逆張り投資する傾向はみられなかったが、大きく調整する中でも投資家の人気は衰えず、引き続き資金を集めていた。
その一方で、新興国株式では解約が相次ぐ
確認してきたように外国株式ファンド全体でみると、新設ファンドやテクノロジー系のテーマ株ファンドなどの先進国株式ファンドが人気を牽引して、大規模な資金流入があった。ただ、先進国株式ファンドが人気の裏で、新興国株式ファンドは解約が相次いでいた。
新興国株式ファンドの資金動向を、インデックス・ファンドを含む地域分散型の新興国株式ファンド(青棒)、インド株式ファンド(黄棒)、中国株式ファンド(赤棒)、その他の単一地域の新興国株式ファンド(紺棒)に分けてみていく【図表3】。純資産残高は10月末時点でそれぞれ地域分散型の新興国株式ファンドが1兆2,000億円、インド株式ファンドが1兆1,000億円、中国株式ファンドが3,000億円強、その他の単一地域の新興国ファンドが3,000億円弱となっている(なお、その他の単一地域の新興国ファンドの中では、後述するブラジル株式ファンドが900億円弱と最大である)。
新興国株式ファンドの資金動向を、インデックス・ファンドを含む地域分散型の新興国株式ファンド(青棒)、インド株式ファンド(黄棒)、中国株式ファンド(赤棒)、その他の単一地域の新興国株式ファンド(紺棒)に分けてみていく【図表3】。純資産残高は10月末時点でそれぞれ地域分散型の新興国株式ファンドが1兆2,000億円、インド株式ファンドが1兆1,000億円、中国株式ファンドが3,000億円強、その他の単一地域の新興国ファンドが3,000億円弱となっている(なお、その他の単一地域の新興国ファンドの中では、後述するブラジル株式ファンドが900億円弱と最大である)。
地域分散型の新興国ファンドは7月以降、資金流出が続いている。それに加えて2017年に5,000億円を超える資金流入があったインド株式ファンドも2018年は年初こそ大規模な資金流入があったが、8月以降は資金流出に転じている。中国株式ファンドは、2018年前半は毎月300億円前後の資金流入があったが7月以降は流入が鈍化し、9、10月と流入が止まった。その他の単一地域の新興国ファンドで8、9月と資金流入があったが、新設されたベトナム株式ファンドの影響であり、新設ファンドを除くと若干の資金流出であった。9月以降は地域分散型やインド株式ファンドで解約が相次いでいるだけでなく、その他の投資地域の新興国株ファンドでも資金流入が止まっていることが分かる。
新興国株式ファンドは2018年に入ってから、投資地域によらず概ね下落基調にある【図表4】。特に、中国株式ファンドは年初からの下落率が平均で25%に達している。米中貿易摩擦や米利上げの悪影響や景気減速など先行きに対する懸念材料も多いことから、見切りをつけて売却する投資家が9月以降、増えているのかもしれない。外国株式全体への投資意欲は旺盛でも、投資地域や投資テーマの取捨選択が進んでいるようである。
新興国株式ファンドは2018年に入ってから、投資地域によらず概ね下落基調にある【図表4】。特に、中国株式ファンドは年初からの下落率が平均で25%に達している。米中貿易摩擦や米利上げの悪影響や景気減速など先行きに対する懸念材料も多いことから、見切りをつけて売却する投資家が9月以降、増えているのかもしれない。外国株式全体への投資意欲は旺盛でも、投資地域や投資テーマの取捨選択が進んでいるようである。
唯一、好調だったブラジル株式ファンドでも資金流出
10月にパフォーマンスが良好であったファンドをみると、ブラジル株式ファンドが総じて高パフォーマンスであった【図表5】。ブラジル株式ファンドの多くで収益率が15%を超え、先進国、新興国問わず世界的に株式が下落する中、好調であった。10月に行われたブラジル大統領選挙の結果から構造改革期待が高まり、ブラジル固有の要因によってブラジル・レアル高、ブラジル株式高となった。
ブラジル株式ファンドの資金流出入は、4月以降、10億円以下の小幅な流出入が続き、大きな資金の動きがなかった。それが10月は40億円に迫る資金流出があった。残高(900億円弱)に対して流出金額自体は小規模であるが、やや売却が膨らんでいたといえる。ブラジル株式はここ半年、乱高下していたが、投資家の中には10月の上昇を絶好の売却時と考える方も少なからずいたようである。
ブラジル株式ファンドの資金流出入は、4月以降、10億円以下の小幅な流出入が続き、大きな資金の動きがなかった。それが10月は40億円に迫る資金流出があった。残高(900億円弱)に対して流出金額自体は小規模であるが、やや売却が膨らんでいたといえる。ブラジル株式はここ半年、乱高下していたが、投資家の中には10月の上昇を絶好の売却時と考える方も少なからずいたようである。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。。
(2018年11月07日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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