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- 来期予想利益成長率に注目!!~アベノミクス相場以降、高成長銘柄の株価が好調~
2018年08月15日
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1――来期利益成長率に注目
【図表1:左】から来期予想利益成長率が高い銘柄(緑線)が高パフォーマンスで、低い銘柄(赤線)は低パフォーマンスの傾向があったことが分かります。平均すると高成長銘柄は年率で2%ほど市場平均を上回る一方で、低成長銘柄は2%ほど下回っていました【図表1:右、全期間】。
ただ、「来期高成長銘柄」は安定して高パフォーマンスを上げていたわけではありませんでした。2013年度や2016年度は市場平均を大きく上回っていますが、2014年度、2015年度、2017年度はほぼ市場平均並みのパフォーマンスでした。
「来期高成長銘柄」よりもむしろ「来期低成長銘柄」のほうが、低パフォーマンスの傾向がはっきりしていました。累計超過リターンがほぼ右肩下がりで市場平均を一貫して劣後していたことが分かります。年度ごとにみても、足元の2018年度は7月末時点で市場平均を上回っていますが、2013年度から2017年度までの5年全てで市場平均を下回りました。
ただ、「来期高成長銘柄」は安定して高パフォーマンスを上げていたわけではありませんでした。2013年度や2016年度は市場平均を大きく上回っていますが、2014年度、2015年度、2017年度はほぼ市場平均並みのパフォーマンスでした。
「来期高成長銘柄」よりもむしろ「来期低成長銘柄」のほうが、低パフォーマンスの傾向がはっきりしていました。累計超過リターンがほぼ右肩下がりで市場平均を一貫して劣後していたことが分かります。年度ごとにみても、足元の2018年度は7月末時点で市場平均を上回っていますが、2013年度から2017年度までの5年全てで市場平均を下回りました。
2――「来期予想」もポイント
アベノミクス相場が始まって以降、来期予想利益成長率が高い銘柄が高パフォーマンス、低い銘柄が低パフォーマンスであった要因として、2つのことが考えられます。
まず、国内株式の市場環境です。アベノミクス相場が始まってから、企業業績は拡大基調にあります。東証一部銘柄の前期実績、今期予想、来期予想の経常利益(青線)の推移をみると、ほぼ右肩上がりで上昇していることが分かります【図表2】。それに伴って株価(赤線)が大きく上昇する中、業績拡大がより見込める銘柄が投資家から特に選好されやすかったと考えられます。つまり、高成長銘柄の株価が上昇しやすく、その一方で低成長銘柄の株価は上がりにくい市場環境であったといえるでしょう。
まず、国内株式の市場環境です。アベノミクス相場が始まってから、企業業績は拡大基調にあります。東証一部銘柄の前期実績、今期予想、来期予想の経常利益(青線)の推移をみると、ほぼ右肩上がりで上昇していることが分かります【図表2】。それに伴って株価(赤線)が大きく上昇する中、業績拡大がより見込める銘柄が投資家から特に選好されやすかったと考えられます。つまり、高成長銘柄の株価が上昇しやすく、その一方で低成長銘柄の株価は上がりにくい市場環境であったといえるでしょう。
来期予想利益成長率と同様に、TOPIX500採用銘柄を対象に毎月末に今期予想利益成長率の水準別に銘柄数が等しくなるように「今期高成長銘柄」「今期中成長銘柄」「今期低成長銘柄」に分けました。分析対象銘柄の単純平均リターンに対する超過リターンを示したのが【図表3】です。なお、予想利益は東洋経済予想の経常利益を用いており、前期実績利益が赤字の銘柄は除外しています。
今期予想利益成長率の場合、全期間で最も超過リターンを獲得したのは「今期低成長銘柄」(赤線)でした【図表3:左】。ただし、年率換算した平均超過リターンは3つとも±1%以内に納まっており、傾向がはっきりしなかったといえます【図表3:右、全期間】。年度ごとをみても、好調不調が大きく入れ替わっていたことが分かります。「今期高成長銘柄」(緑棒)は2013年度や2017年度に市場平均を大きく上回りましたが、2016年度は大きく下回りました。逆に「今期低成長銘柄」(赤棒)は2016年度に市場平均を大きく上回り、2017年度は大きく下回りました【図表3:右】。
今期予想利益成長率の場合、全期間で最も超過リターンを獲得したのは「今期低成長銘柄」(赤線)でした【図表3:左】。ただし、年率換算した平均超過リターンは3つとも±1%以内に納まっており、傾向がはっきりしなかったといえます【図表3:右、全期間】。年度ごとをみても、好調不調が大きく入れ替わっていたことが分かります。「今期高成長銘柄」(緑棒)は2013年度や2017年度に市場平均を大きく上回りましたが、2016年度は大きく下回りました。逆に「今期低成長銘柄」(赤棒)は2016年度に市場平均を大きく上回り、2017年度は大きく下回りました【図表3:右】。
3――なぜ「来期予想利益成長率」が有効なのか
より詳しくみるため、「今期高成長銘柄」「今期中成長銘柄」「今期低成長銘柄」をさらに来期予想利益成長率で3つに分けます。TOPIX500銘柄を今期利益成長率と来期利益成長率で3×3=9つのグループに分けるイメージです。なお、今期と来期の高成長、中成長、低成長の分類わけは、それぞれ分析対象全体で(つまり独立して)行ったため、それぞれのグループの銘柄数は等しくなっていません。
「今期高成長銘柄」、「今期中成長銘柄」、「今期低成長銘柄」を来期利益成長率で3つに分けた結果(パフォーマンス:左、割合:右)が【図表4】、【図表5】、【図表6】です。なお、【図表4、5、6】の左のグラフは分析対象全体(ほぼTOPIX500)の単純平均に対する超過リターンの累計になっています。
まず、今期も来期も高成長が予想されている銘柄(緑線)は、最も超過リターンを獲得していたことが分かります【図表4:左】。ただし、今期高成長が予想されている銘柄の中で、来期も高成長が予想されている銘柄(緑面)は平均すると、4割程度しかありませんでした【図表4:右】。残りの6割が来期に成長率鈍化が懸念されている銘柄であり、そのような銘柄(黄線と赤線)のパフォーマンスは低調でした【図表4:左】。前章でみてきたように、「今期高成長銘柄」全体(青線)のパフォーマンスの傾向がはっきりしなかったのは、今期は高成長でも来期に高成長が維持できないと思われている銘柄(黄線と赤線)がパフォーマンスを押し下げていたからといえるでしょう【図表4:左】。
「今期高成長銘柄」、「今期中成長銘柄」、「今期低成長銘柄」を来期利益成長率で3つに分けた結果(パフォーマンス:左、割合:右)が【図表4】、【図表5】、【図表6】です。なお、【図表4、5、6】の左のグラフは分析対象全体(ほぼTOPIX500)の単純平均に対する超過リターンの累計になっています。
まず、今期も来期も高成長が予想されている銘柄(緑線)は、最も超過リターンを獲得していたことが分かります【図表4:左】。ただし、今期高成長が予想されている銘柄の中で、来期も高成長が予想されている銘柄(緑面)は平均すると、4割程度しかありませんでした【図表4:右】。残りの6割が来期に成長率鈍化が懸念されている銘柄であり、そのような銘柄(黄線と赤線)のパフォーマンスは低調でした【図表4:左】。前章でみてきたように、「今期高成長銘柄」全体(青線)のパフォーマンスの傾向がはっきりしなかったのは、今期は高成長でも来期に高成長が維持できないと思われている銘柄(黄線と赤線)がパフォーマンスを押し下げていたからといえるでしょう【図表4:左】。
今期予想利益成長率と比べて来期予想利益成長と株価のパフォーマンスに良好な関係が見られたのは、来期予想利益成長率が企業の業績動向を的確に捉えているためではないでしょうか。来期予想の前提条件は、通常、今期予想と同じような条件で行います。今期予想と来期予想を比較する来期予想利益成長率では、為替といった外部環境の変化などによる一時的なノイズの影響が入りにくいといえます。そのため来期予想成長率は、その時点の企業の外部環境に依存しない部分の業績動向が反映されていると考えられます。外部環境の好転などの一時的な要因によって業績拡大した銘柄などが、今期予想利益成長率では問題となりました。来期予想利益成長率だとそのような銘柄を見抜くことができたのかもしれません。
(2018年08月15日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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