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- 2017年度のグロース相場と今後の動向
2018年08月03日
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日本の株式市場では、2016年度にPBR が相対的に低い銘柄(以後、バリュー株)の株価が、PBRが相対的に高い銘柄(以後、グロース株)を顕著に上回るパフォーマンスを上げた。それが、2017年度は一転してグロース株が優位となり、グロース株相場であったといえよう。
Russell/Nomura 日本株インデックスのバリュー指数とグロース指数の2016年4月からの累積リターンの推移をみると、2016年7月から12月にかけてバリュー指数が急反発していたことが分かる(図表1:左)。同時期にグロース指数も上昇していたものの、バリュー指数の上昇が特に顕著であったため、バリュー指数とグロース指数の2016年4月から翌2月までの累積リターンの差は10%を超えた(図表1:右)。それが2017年度に入って、厳密には2017年3月以降はグロース指数のパフォーマンスが相対的に優位になり、バリュー指数が劣後する傾向となった。1年前に10%あったバリュー指数とグロース指数の累積リターンの差は、2017年4月以降縮小して2018年3月末時点では3%になった。
Russell/Nomura 日本株インデックスのバリュー指数とグロース指数の2016年4月からの累積リターンの推移をみると、2016年7月から12月にかけてバリュー指数が急反発していたことが分かる(図表1:左)。同時期にグロース指数も上昇していたものの、バリュー指数の上昇が特に顕著であったため、バリュー指数とグロース指数の2016年4月から翌2月までの累積リターンの差は10%を超えた(図表1:右)。それが2017年度に入って、厳密には2017年3月以降はグロース指数のパフォーマンスが相対的に優位になり、バリュー指数が劣後する傾向となった。1年前に10%あったバリュー指数とグロース指数の累積リターンの差は、2017年4月以降縮小して2018年3月末時点では3%になった。
2017年度のバリュー株の劣後は、前年度の株価上昇が急ピッチだったため、2017年4、5月を中心に調整が入った影響のためと見ることもできる。また、2017年度は12月まで概ね為替が1ドル110円から113円までの狭いレンジで推移していた。それが2018年初から円高基調に変わり3月には一時1ドル105円を下回るなど、急速に円高が進行したこともバリュー株には逆風になった。輸送用機器などの外需関連株は、PBRが相対的に低位な銘柄が多くバリュー株に分類されるものが多いため、グロース株よりもバリュー株の業績は為替などの外部環境の影響を受けやすい。ゆえに、年明け以降に株式市場全体が調整する中、バリュー株の下落が特に大きくなったと考えられる。
2016年度の反動や年度末の急速な円高に加えて、2017年度はグロース株の業績拡大期待が特に高まった。TOPIX500採用銘柄(金融、不動産を除外)を毎月末にPBRの水準でバリュー株とグロース株に分けて予想ROEの推移をみると、グロース株の予想ROEの上昇幅が大きかった(図表2)。バリュー株も予想ROEは上昇傾向にあったものの、10、11月の中間決算の発表時にグロース株の予想ROEが大きく改善し、グロース株の業績拡大期待が急速に高まっていたことが分かる。2017年秋以降、バリュー株に比べてグロース株は投資家の積極的な買いが入りやすい状況にあったといえる。この業績拡大期待がグロース株の株価を押し上げ、また年明けの調整局面では下支えしていた可能性がある。
2016年度の反動や年度末の急速な円高に加えて、2017年度はグロース株の業績拡大期待が特に高まった。TOPIX500採用銘柄(金融、不動産を除外)を毎月末にPBRの水準でバリュー株とグロース株に分けて予想ROEの推移をみると、グロース株の予想ROEの上昇幅が大きかった(図表2)。バリュー株も予想ROEは上昇傾向にあったものの、10、11月の中間決算の発表時にグロース株の予想ROEが大きく改善し、グロース株の業績拡大期待が急速に高まっていたことが分かる。2017年秋以降、バリュー株に比べてグロース株は投資家の積極的な買いが入りやすい状況にあったといえる。この業績拡大期待がグロース株の株価を押し上げ、また年明けの調整局面では下支えしていた可能性がある。
2018年度に入ると、4月こそ為替が円安に反転したことなどからバリュー株が急反発したが、その後は再びバリュー株には厳しい相場となっている。この背景には、米中貿易摩擦や米自動車関税の引上げに対する懸念があると思われる。バリュー株は外部環境の影響を受けやすい外需関連株が多く、グロース株よりもこれらの悪影響を受けやすいためである。
その一方で、2018年度に入ってグロース株の予想ROEは急落しており、グロース株に対する業績拡大期待が鈍化、もしくは剥落した可能性もある。2017年秋からグロース株の業績拡大期待が高かっただけに、4、5月の決算発表や業績見通しの公表をきっかに、一旦調整したと考えられる。また、2017度はハイテク株などがグロース株の業績を牽引していた。しかし、スマートフォンや半導体の成長鈍化などが懸念されており、それらの懸念材料が新年度に入って業績予想に反映されだしているのかもしれない。いずれにせよ、2018年度に入ってもバリュー株よりもグロース株のほうがパフォーマンスはやや良いものの、前年度のように投資家が好業績からグロース株を積極的に買っている状況ではないと思われる。
今後についても、引き続き通商問題や為替などの動向に左右される展開が続くことが予想される。ただし、足元では2017年度にみられたグロース株が優位な状況から変わってきている可能性がある。やはり外部環境次第ではあるものの、2018年度は一方的なグロース株優位の相場は想定しにくいといえるだろう。
その一方で、2018年度に入ってグロース株の予想ROEは急落しており、グロース株に対する業績拡大期待が鈍化、もしくは剥落した可能性もある。2017年秋からグロース株の業績拡大期待が高かっただけに、4、5月の決算発表や業績見通しの公表をきっかに、一旦調整したと考えられる。また、2017度はハイテク株などがグロース株の業績を牽引していた。しかし、スマートフォンや半導体の成長鈍化などが懸念されており、それらの懸念材料が新年度に入って業績予想に反映されだしているのかもしれない。いずれにせよ、2018年度に入ってもバリュー株よりもグロース株のほうがパフォーマンスはやや良いものの、前年度のように投資家が好業績からグロース株を積極的に買っている状況ではないと思われる。
今後についても、引き続き通商問題や為替などの動向に左右される展開が続くことが予想される。ただし、足元では2017年度にみられたグロース株が優位な状況から変わってきている可能性がある。やはり外部環境次第ではあるものの、2018年度は一方的なグロース株優位の相場は想定しにくいといえるだろう。
(2018年08月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
前山 裕亮のレポート
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