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関係先企業の株価収益率に基づく投資戦略-商流データに基づく先行研究との比較

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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1――はじめに
1 Cohen and Frazzini, 2008, Economic Links and Predictable Returns, The Journal of Finance 63, 1997-2011
2――先行研究の概要とこれまでの筆者の分析結果
2 CAPMを前提とした分析に加え、時価総額や簿価時価比率の効果も加味した3ファクターモデル、モメンタム効果も加えた4ファクターモデル、更には流動性の効果も考慮した5ファクターモデルの計4モデルに対して分析。また、販売先企業の月次株価収益率が、相対的に高い(低い)企業を時価総額に応じて購入(売却)した場合と等しい割合で購入(売却)した場合をそれぞれ分析し、計8パターンで分析・確認した結果を報告している。
3 t値は2.99~4.93。データ数にもよるが、先行研究のように十分なデータ数が確保されている場合、t値が2を超えていれば、統計的有意と判断できる。
4 基礎研レポート『株価急変による関係先企業株価への影響~企業間ネットワーク構造を用いた分析』(2018年6月1日)
3――今回の分析と先行研究との相違
分析は、金融機関を除く東証一部上場企業(2015年3末時点)を対象に、2013年4月~2018年3月の株価収益率(配当込み)を用いて実施した。但し、どの企業とも株式持合関係が確認できない独立系の企業5は分析対象から外した。その理由は、関係企業の株価収益率が算出できず、今回の分析方法に馴染まないからである。
関係企業の判定には、分析期間を通して、2015年3月末一時点の持合ネットワークを用いている6。これまでの筆者の分析結果を参考に、株式持合関係にある企業や直接持合関係にはないが間接的に関係する企業も含め、関係企業の株価収益率を算出している。ただし、株価収益率の平均値を算出する際には、企業との関係の強さを反映させるため、企業との距離7の逆数で重み付けした(図表7)。
販売先企業に着目した先行研究は、月次株価収益率を前提に、月次でポートフォリオを組み替えている。今回の分析では、先行研究と同じ月次分析に加え、日次株価収益率を前提に、日次でポートフォリオを組み替えた場合の分析も実施した。その理由は、これまでの筆者の分析結果によると、株式持合の関係企業に関するネガティブな情報に対する株価の反応は鈍いが、株価下落が進むのはその後数週間で、数週間経過後以降はほぼ横ばいとなるからである(図表1)。日次株価収益率を前提に、日次でポートフォリオを組み替えた場合も合わせて分析することで、関係企業の株価収益率がその後の超過収益獲得に役立つ期間をより細かく確認することができる。
5 金融機関を除く東証一部上場企業(2015年3末時点)と持合関係が確認できない企業を指す。他の上場企業との持合関係が確認できる企業も、今回の分析対象外となる。
6 持合ネットワークは、大株主データ(東洋経済新報社によるアンケート調査)及び有価証券報告書記載内容(コーポレート・ガバナンスの状況における株式の保有状況)を基にニッセイ基礎研究所にて作成
7 基礎研レポート『問題公表による他社株価への影響~持合ネットワーク構造を用いた分析』(2017年9月1日)参照
前月の株式持合の関係企業の株価収益率が高い順に分析対象企業を5分割(G1~G5)し、毎月初に各Gのポートフォリオを、そのGに分類された銘柄を等しい割合で保有するよう組み換える。これを繰り返した場合の月次収益率を求めた結果、販売先企業に着目した先行研究と同様の傾向が確認できた。前月までに関係企業に関するポジティブな情報が多かった企業(前月の関係企業の株価収益率が高い企業)ほど、株価収益率が高い傾向がある(図表2)。また、関係企業に関するポジティブな情報が相対的に多い企業(G1)からなるポートフォリオの価値は、一時期を除いて関係企業に関するネガティブな情報が相対的に多い企業(G5)からなるポートフォリオ価値を上回る(図表3)。しかし、先行研究と異なり、G1を購入し、G5を売却することで得られる収益率(G1とG5の月次収益率の差分)は、月率0.37%(年率4.5%)と低い。また、収益率の統計的有意性もさほど高くない(t値は1.30、有意水準10%なら、収益率が0%ではないと判断可能)。
つまり、関係企業に関するネガティブ(ポジティブ)な情報に対する市場の反応は鈍く、情報が公表された後、株価は徐々に下落(上昇)するという仮説は一応支持できるが、売買コストも考えると、超過収益獲得機会はあまり期待できないと思われる。
(2018年06月15日「基礎研レポート」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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