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医療・ヘルスケア
2018年12月04日

海外で入院、通院した場合の医療費はどうなるの?

保険研究部 研究員   岩﨑 敬子

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海外で急なけがや病気のため入院、通院した場合、健康保険の保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市町村など)が認めたときには、海外療養費として、支払った医療費の一部の払い戻しを受けることができます。本稿では、この海外療養費の概要を紹介致します1
 
1 参考) (1) 全国健康保険協会「海外で急な病気にかかって治療を受けたとき」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3120/r138 (2018/11/20アクセス)  (2) 健康保険組合連合会「海外療養費(療養費)」https://www.kenporen.com/health-insurance/kaigai-ryoyou/ (2018/11/20アクセス)
1――海外療養費とは

通常国内で病気やけがをしたときは、健康保険証を病院で提示することで、定められた自己負担割合2で治療を受けることができます。これを健康保険による療養の給付(現物給付)といいます。しかし、やむを得ない事情で療養の給付が受けられない場合でも、保険者が認めたときは、一度全額自分で支払った後に、支払った医療費の一部が療養費として払い戻されます(現金給付)。療養費として払い戻しが受けられる主なケースには、やむを得ない事情で健康保険証を提示できなかった場合、医師の指示で治療のために装具が必要になった場合、やむを得ず療養の給付が受けられる保険医療機関でない病院等で診療を受けた場合が挙げられます。海外渡航中に急な病気やけがでやむを得ず現地で治療を受けた場合もこのケースに含まれ、療養費支給の対象になります。これが、海外療養費と呼ばれます。
 
2 2018年11月時点での自己負担割合は、70歳未満は3割  (6歳未満つまり義務教育就学前は2割)、70歳~74歳は2割 (現役並み所得者は3割)、75歳以上は1割 (現役並み所得者は3割)。
2――海外療養費の支給対象

海外療養費の支給対象は、日本国内で保険診療の適用である治療に限られます。そのため、美容整形や歯科インプラントなど、日本国内で保険診療外の治療は、支給対象になりません。また、治療を目的として海外へ渡航した場合も、支給対象になりません3。さらに、現地で受診した翌日から2年以内に申請する必要があります4。2年以上が経過すると、時効により申請できなくなります。
 
3 2017年12月から、一定の条件のもと、他に助かる方法の無い海外渡航移植については、給付対象に含まれました。
4 保険組合によって異なる場合があります。詳細は加入している保険者にご確認ください。
3――海外療養費の支給金額

海外療養費の支給金額は、日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から、自己負担相当額5を差し引いた額です。外貨で支払われた医療費は、支給決定日のレートを用いて円に換算して支給金額が算出されます。
 
5 日本国内で同じ治療した場合の治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)×自己負担割合
1|海外療養費の支給金額の例
(1) 日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額 < 海外で支払った額のケース
日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額 < 海外で支払った額のケース
たとえば、現地で100万円の治療費を支払い、日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額が60万円の場合、自己負担割合が3割の人への海外療養費の支給額は42万円(60万円×7割)です。その結果自己負担の総額は58万円(100万円 - 42万円)となります。
(2) 日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額  > 海外で支払った額のケース
日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額  > 海外で支払った額のケース
たとえば、現地で50万円の治療費を支払い、日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額が60万円の場合、自己負担割合が3割の人への海外療養費の支給額は35万円(50万円×7割)です。その結果、自己負担の総額は15万円(50万円 - 35万円)となります。
2|高額療養費制度や海外旅行保険と海外療養費との関係
通常、健康保険による自己負担割合の範囲内の負担でも、医療費が高額になった場合は、高額療養費制度によって、医療費の自己負担には上限が設けられており、1か月の窓口負担額が一定額を超えた場合は払い戻しを受けることができます6。この高額療養制度は海外で治療を受けた場合にも適用されます。海外療養費の計算の際と同様に、支給額は、日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額に基づいて決定されます。
日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額
現地で1ヶ月の間に100万円の治療費を支払い、日本国内で同じ治療をした場合の治療費を基準に計算した額が60万円の場合、自己負担割合が3割の人への海外療養費の支給は42万円です。この場合、支給対象外の額を除いた自己負担相当額は18万円 (60万円-42万円) です。仮に自己負担限度額が57,600円の人の場合7は、高額療養費の適用で、海外療養費の42万円に加えて12万2,400円(18万円-5万7,600円の支給を受けることができます。その結果、自己負担の総額は、45万7,600円(100万円-42万円-12万2,400円)になります。また、任意で民間の海外旅行保険に加入している場合、海外旅行保険の支給の有無や支給額は健康保険の海外療養費や高額療養費の支給額に影響はありません。
 
6 高額療養制度についての詳細は、村松容子「医療費が高額になってしまったらどうすればいいの?」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター(2018年3月5日)をご参照ください。(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58072?site=nli)
7 年収約370万円以下の人場合になります。
4――海外療養費の申請手続きの流れ 8

海外療養費の支給を受けるまでの流れは以下のようになります。

(1) 受診した現地の医療機関で医療費を全額支払う。
(2) 受診した現地の医療機関で診療内容明細書と領収明細書を記入してもらう。
(3) 受診した現地の医療機関で記入してもらった診療内容明細書と領収明細書が日本語以外の場合は、日本語の翻訳文を用意する。
(4) 帰国後、現地での受診の翌日から2年以内に、保険者に日本語の翻訳文をつけた診療内容明細細書に加え、療養費支給申請書とパスポートの写しを提出する。
(5) 保険者が認めた場合は海外療養費が支給される。
 
現地の医療機関で記入してもらう必要のある診療内容明細書と領収明細書は、通常、加入している健康保険の保険者によって指定の書式が用意されています。これらは、同様の項目がカバーされていれば独自の書式でも構わないとしている保険者が多いですが、海外に出かける際は、万一に備えて、自分が加入している健康保険の保険者の指定の書式を持参するようにしましょう。
 
8 一般的な例を紹介しております。保険組合によって異なる場合がありますので、詳細は加入している保険者にご確認ください。
5――海外での医療費について

海外で入院、通院した場合の医療費は、一度すべて自分で支払わなければなりませんが、その額は一体いくらくらいになるのでしょうか。ジェイアイ傷害火災保険株式会社によると、たとえば盲腸(虫垂炎)の手術にかかる治療費の総額は日本で約60万円なのに対し、イギリス(ロンドン)では94万円~135万円、アメリカ(ホノルル)では約300万円と高額になります。一方、タイでは48万円、マレーシアでは10万円~12万円程度ということです9。海外では、国や医療機関によって治療費が大きく異なります。そのため、実際に現地で支払った治療費用に対して、海外療養費や高額療養費で支給される額が非常に小さい割合になる可能性もあります。海外に行く際は、現地の医療事情を確認した上で、必要に応じて民間の海外旅行保険への加入を検討しましょう。
 
9 ジェイアイ傷害火災保険株式会社「海外での医療事情」
https://www.jihoken.co.jp/data/world.html 2018.11.20アクセス
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保険研究部   研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
災害復興、金融・健康行動、メンタルヘルス、ソーシャル・キャピタル

(2018年12月04日「基礎研レター」)

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