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日本の医療費、何にお金がかかっているの?
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
1――2015 年度の国民医療費は42 兆円3,644 億円
一般に、日本における年間の医療費とは、病気やけがの治療に係る費用のうち、図表2の網掛けで示す範囲を指し、毎年「国民医療費」として、厚生労働省から公表されています。
保険診療が対象で、健康診断や人間ドック、大衆薬等の予防・健康増進分野、先進医療等の高度先端・研究開発分野(評価療養)、差額ベッド代等の生活サービス・快適な環境等の分野(選定療養)、介護等福祉・看護分野は含みません。
患者申出療養や先進医療は、いわゆる混合診療が認められており、保険給付外の新しい技術等は高度先端・研究開発部門と考えられ、ここで言う医療費には含みませんが、そのための検査や入院など医療の基礎的部分は含んでいます。
保険給付の範囲と比べると、患者が負担している自己負担額や、入院時の食費等標準負担額は含みます。
傷病は、大きく19の傷病に分類されます。医科診療費を主傷病による傷病分類別にみると、最も高いのは循環器系の疾患で、医科診療費の20%でした。続いて、新生物が14%、筋骨格系及び結合組織の疾患が8%でした。
19の傷病分類を、さらに細かい分類でみると、循環器系の疾患の多くを、高血圧性疾患、心疾患、脳血管疾患」(いずれも医科診療費の6%程度)が占めています。また、新生物の多くを、悪性新生物(がん)(同 12%)が、内分泌、栄養及び代謝疾患の多くを糖尿病(同 4%)が占めています。
糖尿病、高血圧性疾患、心疾患、脳血管疾患といった生活習慣病と関連の深い疾病による医療費が、医科診療費の1/4程度を占め、さらに、これに、悪性新生物(がん)を加えると、医科医療費の1/3程度にのぼります。
65 歳以上では前立腺の疾患などの腎尿路生殖器系の疾患で、女性でのみ上位となっている疾病は、15~44 歳では妊娠、分娩及び産じょくと、45 歳以上では筋骨格系及び結合組織の疾患です。
2――保険診療外の医療費
ここまで紹介してきた国民医療費では対象外となっている医療費のうち、図表1の「先進医療」実施による医療費は、2015年7月~2016年6月の1年間で、総額251.6億円でした。そのうち、67.4億円(27%)は、保険外併用療法として保険診療の対象となっており、残る184.2億円が先進医療等による医療費となっています。
先進医療はすべてが超高額であるような印象を持っている方もいるかもしれませんが、超高額な技術ばかりではありません。2017年7月時点で先進医療として認められていた技術は全部で108種類ありました1。全実施件数約25,000件の中で、もっとも多いのが、白内障の治療の1つである「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」で、年間1万人以上が受けています。この治療の場合、2015年では、1件あたりの平均先進医療費は約55万円でした。次に実施件数が多いのが、眼球検査の1つである「前眼部三次元画像解析」で、1件あたりの平均先進医療費は約3600円となっています。
しかし、もちろん、技術によっては非常に高額であったり、複数回治療を受ける必要があるケースもあります。
1 最新の報告(2016年7月~2017年6月)では、先進医療として認められた技術は102で、先進医療にかかわる総額が約277.7億円(保険診療分が70.6億円、先進医療費用の総額が207.2億円)と、先進医療による医療費も増加傾向にあります。
昨今、公的医療保険給付の範囲や内容について適正化する動きがあります。医薬品に対しては、後発品(ジェネリック)の使用を促進し、不適切な重複投薬・多剤投薬の削減を進めるだけではなく、湿布やうがい薬等2の症状の軽い患者に使う市販品類似薬を、一部保険給付の適用外とする等の保険給付の範囲の見直しが行われています。
したがって、先進医療による費用、健診や人間ドック費用、大衆薬費用などを含めて、より広義に捉えれば、医療費は、前述のGDPの8%を実態として大きく上回っており、今後も増加するものと考えられます。
2 診療報酬改定で、治療目的でないうがい薬の処方や、1処方につき70枚を超える湿布薬の投与は、特に必要な場合を除いて制限されるようになりました。
03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
(2018年03月22日「基礎研レター」)
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