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最近の医療費の動向を教えて

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――はじめに ~2016年度国民医療費は42兆円1,381億円
最近の医療費の増加は、主に高齢化と医療技術の進歩によるものです。どういった医療費が高いのかは、「日本の医療費、何にお金がかかっているの?」2をご参照いただくとして、本稿では、最近の医療費の推移を紹介します。
1 2017年度の医療費については、はり・きゅう、保険証忘れ等による全額自費による支払、労働者災害補償保険等による医療費を含まない「概算医療費」が公表されており、42.2兆円となっています。概算医療費は、例年、医療費総額の98%程度であることから、2017年度の医療費は43兆円程度になることが見込まれます。
2 村松容子「日本の医療費、何にお金がかかっているの?」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター、2018年3月22日
2――医療費の伸び ~高齢化で説明できるのは伸びの半分程度
国民医療費は、医科診療(入院、入院外)、歯科診療、薬局調剤等の診療種類別に公表されています(図表1)。2016年度についてみると、およそ42.1兆円のうち、医科診療が30.2兆円(入院15.8兆円、入院外14.4兆円)で最も高く、次いで薬局調剤が7.6兆円と続いています。
2010年度からの伸びをみると、医療費総額で12.6%増加しています。診療種類別にみると、歯科、医科(入院・入院外)が10%程度の伸びであるのに対し、薬局調剤は23.5%と伸びは大きくなっています。また、国の政策により在宅医療へシフトしつつあることから、現在のところ水準は低いものの、訪問看護の伸びは135.4%と大幅に増加しています。
生活習慣病(「悪性新生物」、「糖尿病」、「高血圧性疾患」、「心疾患」、「脳血管疾患」)による医療費は2010年度以降10%程度の伸びでした。
3――最近のトピックス ~高額医薬品の登場と薬価の抜本改定による価格調整
医療の高度化の一つとして、高額薬剤の影響があげられます。がん治療薬であるオプジーボ、C型慢性肝炎治療薬であるソバルディとハーボニー等の高額薬剤が相次いで保険(薬価)収載されたことで2015年度の医療費は高騰しました3。これをきっかけに、2016年度以降、試行的な費用対効果や市場規模を考慮した値下げが行われ4、投薬で治癒したことによる患者減も相まって医療費は一時的に減少しました。2019年は消費税増税に伴って全品目の薬価改定が予定されており、2020年にはこれまで同様の通常改定が行われるので、薬価の毎年改定は、2021年以降となりますが、高額薬剤の価格が今後どの程度調整されるか注目されます。
また、最近では、公的保険給付の範囲や内容について適正化し、医療費上昇を抑制しようとする動きがあります。医薬品に対して、高額薬剤の価格調整のほか、後発品(ジェネリック)の使用や不適切な重複投薬・多剤投与等の削減を進めるのはもちろんのこと、湿布やうがい薬等5の症状の軽い患者に使う市販品類似薬を保険給付の適用外とする等の保険給付の範囲の見直しが行われています。
3 2015年度は、C型慢性肝炎治療薬であるソバルディとハーボニーを含む抗ウイルス剤で、医療費の少なくとも0.7~0.8%程度を押し上げたと推計された(厚生労働省 第336回中央社会保険医療協議会(2016年9月)等)。
4 詳細は、篠原卓也「医薬品の値段(薬価)は、どのようにきめられているの?」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター(2018年4月6日)をご参照ください。
5 2018年度診療報酬改定で、治療目的でない場合のうがい薬の処方や、1処方につき70枚を超える湿布薬の投与は、特に必要な場合を除いて制限されるようになりました。
(2018年11月06日「基礎研レター」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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