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金融政策の超長期国債金利への影響について考える-金融政策による超長期国債金利の押し下げ効果の測定

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹
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1――はじめに
そこで、本稿では日本国債金利(20年物)の分析を行うことで、超長期金利と日本銀行の金融政策との関係について考えてみたい。これまで金融政策の考慮については、日本銀行による国債買入に着目したものが多いが、本稿では物価の安定目標の効果も含めた分析方法を検討する。また、日本国債金利(10年物)がゼロ%近辺に抑制されており、金融政策による影響が異なる可能性があることから、日本国債金利(20年物)を「日本国債金利(10年物)」と「日本国債金利(20年物)と日本国債金利(10年物)のスプレッド」に分解して、金融政策と各々の関係について分析を行う。
2――モデルの設定と推計結果
第3項は、日本のマクロ経済に関する代表的な指標として実質GDP成長率予想(eGDPt)を採用しており、係数は正であることが予想される。実質GDP成長率予想が1%上昇すると日本国債金利(10年物)は0.051%上昇することを意味している。
第4項と第5項は物価の安定目標の導入効果を示すものである。2013年1月以降の物価目標である2%と期待インフレ率(eINFt)との差で、金利と金融政策の時間軸との関係を見ることを目的としており、第4項目と第5項目のダミー変数は2016年9月以降のオーバーシュート型コミットメントが導入されている期間か否かで分けている。係数がマイナスのとき、2%と期待インフレ率との差が大きくなれば大きくなるほど金利に対して押し下げ効果が働くことを意味している。オーバーシュート型コミットメントが導入されるまでは、2%と期待インフレ率の差が1%広がると日本国債金利(10年物)が0.110%低下し、導入後は0.071%上昇することを示している。ただし、オーバーシュート型コミットメント導入までは1%有意であったが、導入後は有意ではない点には注意が必要である。
第6項と第7項は、日本銀行による国債買入が日本国債金利(10年物)に与える影響を見ることを目的としている。日本銀行の全体に占める国債保有割合

第8項と第9項は、2016年2月末以降のマイナス金利政策のみの場合と、2016年9月末以降のYCCを組み合わせた場合の金融政策の効果とその違いを見ることを目的としたものである。マイナス金利政策の導入により0.160%金利が低下し、さらにYCCの導入によって0.283%(= 0.232%-0.196%)金利が低下したことを意味している。
1 「「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証【背景説明】」(P.48)のモデルで、本稿の記法を用いると、次式のようになる。日本銀行のモデルでは、実質GDP成長率予想にコンセンサス・フォーキャストを使用しており、係数に差異が生じている。なお、**は5%有意であることを示す。

2 「「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証【背景説明】」の中で、「2014年入り後に1単あたりの国債買入れ効果が減少したと考えれば、統計的に良好な結果が得られることが分かった」とあり、本稿でもその結果を踏襲している。
(2017年10月16日「基礎研レポート」)

03-3512-1848
- 【職歴】
2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
2021年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)
【著書】
成城大学経済研究所 研究報告No.88
『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
出版社:成城大学経済研究所
発行年月:2020年02月
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