- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- ジェロントロジー(高齢社会総合研究) >
- 高齢化問題(全般) >
- 高齢者は何歳からか?-准高齢者に求められる65歳からの“意識改革・生き方改革”
高齢者は何歳からか?-准高齢者に求められる65歳からの“意識改革・生き方改革”
基礎研REPORT(冊子版) 2017年3月号

生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
新たな「高齢者の定義と区分」
65~74歳 准高齢者
75~89歳 高齢者
90歳~00 超高齢者
1――時代にあった的確な提言
しかし、世界はあらゆる国で高齢化が進み、その先頭を歩む日本はすでに4人に1人が65歳以上の社会となっている。また当学会が提言の中で述べているように、日本の高齢者は身体機能の“若返り”が確認される。そのことを背景に、個人差はあるにせよ、特に65歳以上の人の中でも比較的若く活動的な人に対して、高齢者扱いすること、またされることに違和感を抱いていた人は少なくないと想像する。また人生100年時代とも言える長寿時代において、65歳以上の人を一括りに高齢者として扱うことへの違和感もかねてから世の中に潜在していたと思われるだけに、今回の提言はそれらの違和感を払拭する現状を踏まえた的確な提言であったと考える。
2――注目される准高齢者(65-74歳)
考えるべき、対応すべき範囲は極めて広範囲に及ぶと考えるが、注目すべきは「65~74歳」の新しく区分された准高齢期、この10年(歳)であろう。「准」はついているものの、“74歳までは(今までの)高齢者ではない”というメッセージがここにある。個人差があり年齢で分けて物事を述べることは本来控えるべきだが、少なくとも准高齢者に該当する人に対する見方を、社会も本人もよりポジティブに捉え直すことがまず必要なことと考える。65歳を過ぎた時点で、個人も社会もしばしば“年だから”と言って、本人があきらめたり、社会が拒んだりすることがあったかもしれないが、これからはお互いにそのことは理由にできない、そうした考え方や価値観を世の中に醸成していくことが望まれる。
次に必要なことは、この65~74歳の10年間の生き方、暮らし方をどのように創造していくか、ということである。リタイアした後の標準的な生活モデルは世の中に存在していないといっても過言でなく、どのように暮らしていくかはすべて本人(及び家族)任せであり、こうあるべきという社会のメッセージも見当たらない。この提言を機に、准高齢者(期)の理想の生活モデルを社会が描き示していくことができれば、准高齢者(期)のあり方がより明確になり、個人の人生設計にも新たな示唆を与えることができると考える。どのような暮らし方や存在になるのがよいかは、様々な視点やアイディアがあると思うが、例えば、准高齢期は「誰もが就業を含めた地域活動に必ず参加する(できる)こと」を基本の生活モデルとして提唱し、社会の支え手として何らかの「役割」と「機会」を持ち続ける(続けられる)ような社会の仕組みを創造していくことも一案にならないだろうか。抽象的な表現に止まるが、いずれにしてもこの65~74歳の10年間を如何に生きていくか、長寿時代を生きる私たち及び社会に課せられた新たな課題と言えよう。
(2017年03月08日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ

生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任
前田 展弘 (まえだ のぶひろ)
研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究学)、超高齢社会・市場、高齢者就労問題、ライフデザイン、高齢者のQOL/well-being
03-3512-1878
- 2004年 :ニッセイ基礎研究所入社
2009年度~ :東京大学高齢社会総合研究機構 客員研究員
2022年度~ :東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員
2021年度~ :慶応義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター 訪問研究員
2023年度 :早稲田大学Life Redesign College(人生100年時代の大学)講師
内閣官房「一億総活躍社会(意見交換会)」招聘(2015年度)
厚生労働省「生涯現役地域づくり普及促進事業有識者委員会」委員長(2024年度)
財務省財務総合政策研究所「高齢社会における選択と集中に関する研究会」委員(2013年度)、「企業の投資戦略に関する研究会」招聘(2016年度)
東京都「東京のグランドデザイン検討委員会」招聘(2015年度)
神奈川県「かながわ人生100歳時代ネットワーク/生涯現役マルチライフ推進プロジェクト」代表(2017-19年度)
生協総研「2050研究会(2050年未来社会構想)」委員(2013-14、16-18年度)
全労済協会「2025年の生活保障と日本社会の構想研究会」委員(2014-15年度)
一般社団法人未来社会共創センター 理事(全体事業統括担当、2020年度~)
一般社団法人定年後研究所 理事(2018-19年度)
【資格】 高齢社会エキスパート(総合)※特別認定者、MBA 他
前田 展弘のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/07 | 日本の高齢社会対策の行方-高齢社会対策大綱の中身とは | 前田 展弘 | 基礎研マンスリー |
2025/02/13 | 日本の高齢社会対策の行方~高齢社会対策大綱の中身とは | 前田 展弘 | 研究員の眼 |
2023/08/08 | 官民協働による高齢化課題解決の取組視点~85歳以上1000万人時代をどう支えるか | 前田 展弘 | 基礎研マンスリー |
2023/07/19 | 官民協働による高齢化課題解決の取組視点~85歳以上1000万人時代をどう支えるか | 前田 展弘 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年03月27日
空き家所有者が「売る・貸す」選択に踏み出すためには-空き家所有者の意識変容に向けた心理的アプローチの一考察- -
2025年03月27日
経過措置終了に伴う企業の現状と今後の対応方針~東証市場再編後に残された課題~ -
2025年03月27日
「早食いは太る」は本当か~食べる速さは、肥満リスクをどの程度予測できるか -
2025年03月27日
ファイナンシャル・ウェルビーイングについて(2)-金融行動との関係性…保険商品に着目して -
2025年03月26日
語られる空き家、照らされる人生-物語がもたらす価値の連鎖-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【高齢者は何歳からか?-准高齢者に求められる65歳からの“意識改革・生き方改革”】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
高齢者は何歳からか?-准高齢者に求められる65歳からの“意識改革・生き方改革”のレポート Topへ