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2017年01月12日
米国では、人々はどのように生命保険に加入しているのか(3)~リムラ&ライフハプンズの保険バロメータースタディより-米国の生命保険非加入者が生命保険に加入しない理由-
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3――では、米国の人々はどうすれば生命保険に加入してくれるのか
2|生命保険への加入を他者に推奨する可能性
しかし、生命保険を人に推奨するかという質問に変わると人々はとたんに消極的になる。
報告書の言葉を借りれば「86%の消費者は、ほとんどの人々が生命保険を必要としていることに同意するが、わずか28%の消費者だけが生命保険を他者に推奨する気持ちが非常にあると答えるにすぎない。」ということになる。推奨する気持ちがいくぶんかあると答える人も38%いるが、一方で推奨する気持ちはあまりないとする人が16%、推奨する気がほとんどないという人も18%いる。
ただし18歳~35歳の層では推奨する気持ちが非常にあるとする人が39%もいて、36歳~51歳の層でも推奨する気持ちが非常にあるとする人が28%もいる。より若い世代ほど、生命保険を推奨すると答える人の割合が高いのは、米国生保業界にとって明るい希望であると言えるだろう。
しかし、生命保険を人に推奨するかという質問に変わると人々はとたんに消極的になる。
報告書の言葉を借りれば「86%の消費者は、ほとんどの人々が生命保険を必要としていることに同意するが、わずか28%の消費者だけが生命保険を他者に推奨する気持ちが非常にあると答えるにすぎない。」ということになる。推奨する気持ちがいくぶんかあると答える人も38%いるが、一方で推奨する気持ちはあまりないとする人が16%、推奨する気がほとんどないという人も18%いる。
ただし18歳~35歳の層では推奨する気持ちが非常にあるとする人が39%もいて、36歳~51歳の層でも推奨する気持ちが非常にあるとする人が28%もいる。より若い世代ほど、生命保険を推奨すると答える人の割合が高いのは、米国生保業界にとって明るい希望であると言えるだろう。
3|生命保険に加入するために望まれる特徴
では人々は、生命保険がどうであれば、生命保険に加入しようと思うのだろうか。人々が生命保険または生保会社に望んでいることは何か。リムラ&ライフハプンズの調査は、さらに生命保険に加入するに当たって消費者が重要視することは何かというところに踏み込んでいる。
表4は、生命保険に加入するに当たって重要視することとして考えられるいくつかの事項から、自分が重要視する項目上位3つを順位をつけて答えてもらい、加重平均して評点を計算した結果である。
米国の人々が生命保険加入に当たって重要視することとして最も支持を集めたのは、「適切な金額の保障を獲得すること」で評点は1.36であった。続いて「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること」が評点1.29で第2位、「ベストな価格を獲得すること=最安値の商品に加入すること」は評点1.09、「生涯にわたり保証される保障を獲得すること」が評点1.05、「将来値上がりすることのない確定された価格(=保険料)を獲得すること」が評点0.98、「商品上の追加的な特典(=おまけ)を獲得すること」は評点0.23であった。
非加入の理由としては、懐具合・経済面からコストへの関心が多くの消費者の心を占めていたが、どのような生命保険に加入すべきかを考える場合には、消費者は「適正な保障額を獲得すること」、「契約を理解すること」の方を、「安い価格を獲得すること」よりも重要であると位置付けた。
「商品上の追加的な特典(=おまけ)を獲得すること」はさらに重要視すべきことではないようで、ひとり大きく離れて最下位となっている。
なお、さらに詳しく年齢階層別に見ると、総合で第1位の「適切な金額の保障を獲得すること」が総合第2位の「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること」よりも評点が高いのは実は36歳~51歳の層においてのみであって、その他の年齢層では「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること」の評点の方が高く、トップ項目となっている。36歳~51歳層の中で、「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること」の評点が1.08と、他の年齢層において評価されている評点よりも格段に低いために、全体・総合での順位を第2位に引き下げていることがわかる。リムラ&ライフハプンズは、50歳に到達した、あるいは50歳に近づいている36歳~51歳の層(ジェネレーションX)は、子供の大学授業料や年老いた両親の介護費用等の巨額の出費という打撃を受けがちな年代であるため、また退職生活を堅実に送っていけるだけの財産能力に関心を持つようになる年齢に到達しつつあるという状況にいるため、価格面に特別な関心を払うのではないかと分析している。
では人々は、生命保険がどうであれば、生命保険に加入しようと思うのだろうか。人々が生命保険または生保会社に望んでいることは何か。リムラ&ライフハプンズの調査は、さらに生命保険に加入するに当たって消費者が重要視することは何かというところに踏み込んでいる。
表4は、生命保険に加入するに当たって重要視することとして考えられるいくつかの事項から、自分が重要視する項目上位3つを順位をつけて答えてもらい、加重平均して評点を計算した結果である。
米国の人々が生命保険加入に当たって重要視することとして最も支持を集めたのは、「適切な金額の保障を獲得すること」で評点は1.36であった。続いて「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること」が評点1.29で第2位、「ベストな価格を獲得すること=最安値の商品に加入すること」は評点1.09、「生涯にわたり保証される保障を獲得すること」が評点1.05、「将来値上がりすることのない確定された価格(=保険料)を獲得すること」が評点0.98、「商品上の追加的な特典(=おまけ)を獲得すること」は評点0.23であった。
非加入の理由としては、懐具合・経済面からコストへの関心が多くの消費者の心を占めていたが、どのような生命保険に加入すべきかを考える場合には、消費者は「適正な保障額を獲得すること」、「契約を理解すること」の方を、「安い価格を獲得すること」よりも重要であると位置付けた。
「商品上の追加的な特典(=おまけ)を獲得すること」はさらに重要視すべきことではないようで、ひとり大きく離れて最下位となっている。
なお、さらに詳しく年齢階層別に見ると、総合で第1位の「適切な金額の保障を獲得すること」が総合第2位の「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること」よりも評点が高いのは実は36歳~51歳の層においてのみであって、その他の年齢層では「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること」の評点の方が高く、トップ項目となっている。36歳~51歳層の中で、「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること」の評点が1.08と、他の年齢層において評価されている評点よりも格段に低いために、全体・総合での順位を第2位に引き下げていることがわかる。リムラ&ライフハプンズは、50歳に到達した、あるいは50歳に近づいている36歳~51歳の層(ジェネレーションX)は、子供の大学授業料や年老いた両親の介護費用等の巨額の出費という打撃を受けがちな年代であるため、また退職生活を堅実に送っていけるだけの財産能力に関心を持つようになる年齢に到達しつつあるという状況にいるため、価格面に特別な関心を払うのではないかと分析している。
次の表5は、生命保険に加入するに当たって「最も」重要視する事項について聞いたものである。この調査では単一の項目を選択してもらって、その項目を選んだ人の数が全体に占める割合(%)を表に記載しているので合計数値は100%になる。
表5によれば、米国の人々が生命保険加入に当たって最も重要視する事項としては、「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること(25%)」と「適切な金額の保障を獲得すること(24%)」が拮抗している。
これらに比べれば、「ベストな価格を獲得すること=最安値の商品に加入すること(18%)」や「生涯にわたり保証される保障を獲得すること(17%)」、「将来値上がりすることのない確定された価格を獲得すること(12%)」は第二義的な意味を持ち、「商品上の追加的な特典を獲得すること(4%)」に至っては、ほとんど意味を持たないようである。
ただし年収5万ドル未満の層にとっては価格も大切で、「ベストな価格を獲得すること」が24%の支持を集めている。それでもこの層においてさえ、僅差ながら最も多くの人々(26%)が「自分が買おうとしている商品を理解していることを確信すること」が最も重要であると感じていることは、生命保険加入に当たっていかに理解を得るかということの重要性を示しているようである。
表5によれば、米国の人々が生命保険加入に当たって最も重要視する事項としては、「自分が何を買っているのか理解していることを確信できること(25%)」と「適切な金額の保障を獲得すること(24%)」が拮抗している。
これらに比べれば、「ベストな価格を獲得すること=最安値の商品に加入すること(18%)」や「生涯にわたり保証される保障を獲得すること(17%)」、「将来値上がりすることのない確定された価格を獲得すること(12%)」は第二義的な意味を持ち、「商品上の追加的な特典を獲得すること(4%)」に至っては、ほとんど意味を持たないようである。
ただし年収5万ドル未満の層にとっては価格も大切で、「ベストな価格を獲得すること」が24%の支持を集めている。それでもこの層においてさえ、僅差ながら最も多くの人々(26%)が「自分が買おうとしている商品を理解していることを確信すること」が最も重要であると感じていることは、生命保険加入に当たっていかに理解を得るかということの重要性を示しているようである。
さいごに
以上、生命保険に加入しない理由(生命保険に対する批判的な見方)から始め、生命保険への加入を促すためには何が改善されるべきポイントかについてまで、米国における調査結果を中心に見てきた。
冒頭に、80%の生命保険加入率を誇るわが国では、非加入理由を研究する意義は米国に比べ薄いかと書いたが、実は最近、わが国においても若年層の生保加入率が「保険難民」という言葉ができるぐらいに低くなっており、当該年齢層では米国におけると似たような状況が出てきているように思われる。このままいけば、将来は米国と変わらない状況に陥るという懸念もある。その意味では、米国の状況は対岸の火事というわけではなく、その調査結果を吟味することの意義は大きいと言うべきだろう。
冒頭に、80%の生命保険加入率を誇るわが国では、非加入理由を研究する意義は米国に比べ薄いかと書いたが、実は最近、わが国においても若年層の生保加入率が「保険難民」という言葉ができるぐらいに低くなっており、当該年齢層では米国におけると似たような状況が出てきているように思われる。このままいけば、将来は米国と変わらない状況に陥るという懸念もある。その意味では、米国の状況は対岸の火事というわけではなく、その調査結果を吟味することの意義は大きいと言うべきだろう。
(2017年01月12日「保険・年金フォーカス」)
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