- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険計理 >
- 右側通行? 左側通行?-「人は右、車は左」と言われている歩行者や自動車の通行ルールについて
2017年01月11日
右側通行? 左側通行?-「人は右、車は左」と言われている歩行者や自動車の通行ルールについて
基礎研REPORT(冊子版) 2017年1月号
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
はじめに
「人は右、車は左」と言われて、何となく「歩行者は右側通行」するものだという意識が根付いている。私自身もつい最近改めて感じたのだが、「歩行者は右側通行」の意味するところが、必ずしも十分に理解できていない。そこで、歩行者や自動車の通行ルールについて考えてみた。
道路交通法の規定
「歩行者は右側通行」のルールは、道路交通法の第10条第1項に規定されているが、これはあくまでも「歩道等と車道の区別の無い道路」において適用されるルールである。歩道及び十分な幅を有する路側帯等では適用されず、法律上は、歩道及び路側帯上の歩く位置についての規定は存在しない。このため、歩道及び路側帯を歩く場合には、一般的な交通マナー等に従うことになる。この場合、「対面交通」の考え方に基づいて、歩く位置を決定するのが望ましい、と思われる。
対面交通のルール
「対面交通」とは、自動車と歩行者が対面して通行することを指すが、これにより、自動車と歩行者が相互を認識しながら通行することができる。
現在の歩行者の通行ルールは、自動車の左側通行に対面する形で右側通行となっている。
この「対面交通」のルールの考え方の趣旨に則れば、例えば、両側通行の車道の左側の歩道を歩いている場合には、歩道の左側を歩くことが適当ということになる。これにより、自動車に対向する歩行者が車道に近い側を通行することになり、例えば対向車が暴走等して、歩道に乗り上げてくるようなケースでも、それを事前に確認しやすい状況に置かれることになる。同じ理屈で、車道の右側を歩いている場合も、歩道の左側を歩くことが適当ということになる。
ただし、こうしたルールや考え方に法的拘束力があるわけではないので、状況に応じて、臨機応変に対応することが求められることになる。
現在の歩行者の通行ルールは、自動車の左側通行に対面する形で右側通行となっている。
この「対面交通」のルールの考え方の趣旨に則れば、例えば、両側通行の車道の左側の歩道を歩いている場合には、歩道の左側を歩くことが適当ということになる。これにより、自動車に対向する歩行者が車道に近い側を通行することになり、例えば対向車が暴走等して、歩道に乗り上げてくるようなケースでも、それを事前に確認しやすい状況に置かれることになる。同じ理屈で、車道の右側を歩いている場合も、歩道の左側を歩くことが適当ということになる。
ただし、こうしたルールや考え方に法的拘束力があるわけではないので、状況に応じて、臨機応変に対応することが求められることになる。
何故、歩行者は右側通行なのか-元々は、人も車も左側通行だった-
そもそも、日本も、以前は、歩行者も自動車と同じく左側通行だった。
これには、諸説あるが、例えば、
車の左側通行は、馬から引き継がれているが、以下の理由とされている。
こうした暗黙のルールが、1872年に、英国からの技術支援で鉄道が導入された時に、「鉄道は左側通行」が正式なものとなった。その後、東京で警視庁による通達が発せられ、「歩行者は左側通行」というルールが定められ、さらに、1924年に法律に規定された。
これには、諸説あるが、例えば、
- 江戸時代に、武士が左の腰に刀を差していたため、刀の鞘同士が触れ合うのを避けるため
- 心臓が左側にあるとの認識から、人間の意識の上で、左側が接触することを避ける本能があるから
車の左側通行は、馬から引き継がれているが、以下の理由とされている。
- 馬に乗るときには、刀が邪魔にならないように、左側から乗ることになるが、そのためには左側通行がよい
- 馬同士がすれ違う時に、刀が触れ合うのを避けるため
こうした暗黙のルールが、1872年に、英国からの技術支援で鉄道が導入された時に、「鉄道は左側通行」が正式なものとなった。その後、東京で警視庁による通達が発せられ、「歩行者は左側通行」というルールが定められ、さらに、1924年に法律に規定された。
何故、歩行者は右側通行なのか-GHQの指導で変更された-
それが、自動車の交通量の増加に伴い、昭和24年に、占領軍GHQの指導で、対面交通の考え方に基づいて、「歩行者は右側通行」に変更された。
当時から既に、米国では「自動車は右側通行」だったので、GHQは「自動車を右側通行」に変更するように要求したが、日本が「道路上の施設の変更や車両の乗降口の変更等に天文学的な財政支出を必要とし、また長期間を有する」との理由で反対したため、結局は「歩行者を右側通行」に変更することで了解した、とのことである*。
これだけ、米国との関係が深い日本において、なぜ「歩行者や自動車の通行ル-ル」が異なっているのか、不思議に思われていた方も多いと思うが、これで一定納得できたと思われる。
当時から既に、米国では「自動車は右側通行」だったので、GHQは「自動車を右側通行」に変更するように要求したが、日本が「道路上の施設の変更や車両の乗降口の変更等に天文学的な財政支出を必要とし、また長期間を有する」との理由で反対したため、結局は「歩行者を右側通行」に変更することで了解した、とのことである*。
これだけ、米国との関係が深い日本において、なぜ「歩行者や自動車の通行ル-ル」が異なっているのか、不思議に思われていた方も多いと思うが、これで一定納得できたと思われる。
ルールについて
世の中には数多くのルールが存在している。我々はそれらを何気なく当然のものとして受け入れている。時には、それらのルール策定に至った歴史的・文化的背景等の詳細を調べてみることも、そのルールの持つ本当の意味や奥深さを知る意味で、結構大事なことだと改めて感じた次第である。
* 道路交通問題研究会「道路交通政策史概観」
(2017年01月11日「基礎研マンスリー」)
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/25 | 欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/14 | 欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/01 | 欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/03/18 | EUがIRRD(保険再建・破綻処理指令)を最終化-業界団体は負担の軽減とルールの明確化等を要求- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~ -
2025年04月30日
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話) -
2025年04月30日
米中摩擦に対し、持久戦に備える中国-トランプ関税の打撃に耐えるため、多方面にわたり対策を強化 -
2025年04月30日
米国個人年金販売額は2024年も過去最高を更新-トランプ関税政策で今後の動向は不透明に-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【右側通行? 左側通行?-「人は右、車は左」と言われている歩行者や自動車の通行ルールについて】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
右側通行? 左側通行?-「人は右、車は左」と言われている歩行者や自動車の通行ルールについてのレポート Topへ