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右側通行?左側通行?(1)-「車は左、人は右」と言われている歩行者の通行ルールは本当はどうなっているのか-
保険研究部 研究理事 気候変動リサーチセンター兼任 中村 亮一
はじめに
道路交通法の規定
「歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄って通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄って通行することができる。」
従って、これはあくまでも「歩道等と車道の区別の無い道路」において適用されるルールであり、歩道及び十分な幅を有する路側帯等では適用されない。法律上は、歩道及び路側帯上の歩く位置についての規定は存在しない。このため、歩道及び路側帯を歩く場合には、一般的な交通マナー等に従うことになる。この場合、「対面交通」の考え方に基づいて、歩く位置を決定するのが望ましい、と思われる。
対面交通のルール
具体的には、「自動車は左側通行」ということになっているが、このルールについては、道路交通法第17条第4項に、以下のように規定されている。
「車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄って設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。」
現在の歩行者の通行ルールは、この自動車の左側通行に対面する形で右側通行となっている。
この「対面交通」のルールの考え方の趣旨に則れば、例えば、両側通行の車道の左側の歩道を歩いている場合には、歩道の左側を歩くことが適当ということになる、と思われる。これにより、自動車に対向する歩行者が車道に近い側を通行することになり、例えば対向車が暴走等して、歩道に乗り上げてくるようなケースでも、それを事前に確認しやすい状況に置かれることになる。同じ理屈で、車道の右側の歩道を歩いている場合にも、歩道の左側を歩くことが適当ということになる。
また、一方通行の車道の歩道等(含む路側帯)を歩いている場合には、車の進行方向の左側の歩道を歩く場合には、左側通行となるが、右側の歩道を歩く場合には、右側通行ということになる。
その他にもいろいろなケースが考えられるが、あくまでも、車の進行方向を中心に考えて、それと対面交通することが望ましいということになるものと思われる。
何故、歩行者は右側通行なのか-元々は、人も車も左側通行だった
歩行者が左側通行であった理由については、諸説あるが、例えば、
(1) 江戸時代に、武士が左の腰に刀を差していたため、刀の鞘同士が触れ合うのを避けるため1、
(2) そもそも、心臓が左側にある(実際は中央にあるというのが正しく、「左心室から押し出される血液が体全体に回る」ことから、左が強く動いているので、左にある、と一般的に認識されている)ので、人間の意識の上で、左側が接触することを避ける本能があるから、
と言われている。
車が左側通行である理由については、車の前の乗り物であった馬について、
(1) 馬に乗るときには、刀が邪魔にならないように、左側から乗ることになるが、そのためには左側通行がよい、
(2) 馬同士がすれ違う時に、刀が触れ合うのを避ける、
ことから、左側通行となっていたが、それが車に引き継がれた、と言われている。
こうした暗黙のルールが正式になったのは、1872年に、英国からの技術支援を受けて、鉄道が導入された時であり、英国が左側通行であったことから、鉄道(馬車鉄道や電気トラムを含む)が、左側通行となった。その後、東京で警視庁による通達が発せられ、「歩行者は左側通行」というルールが定められた。さらに、1924年に法律に規定されたとのことである。
1 これに対して、相手が正面から右にいる時は、前方から来た武士に抜刀術(居合い)で切りつけられやすいため、これを避けるため、右側通行が一般的だった、という説もあるようである。

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