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日韓比較(6):非正規雇用-その2 非正規雇用労働者の内訳―短時間労働者の待遇のあり方や子育てをしている女性の働き方の改善を進めるべき! ―

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
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他方、韓国の場合は、非正規雇用労働者を大きく「限時的労働者」、「時間制労働者」、「非典型労働者」の3つに分類している。まず、「限時的労働者」とは、雇用期間が限定されている非正規職で、その中でも労働契約の期間を定めた「期間制労働者」と労働契約の期間を定めていない「非期間制労働者」に区分している。また、「時間制労働者」とは、労働時間を基準に分類した非正規職で、労働時間が短い労働者がこの基準が適用される(日本のパート・アルバイト)。最後に「非典型労働者」とは労働の供給方式を基準に分類した非正規職で、派遣労働者、用役労働者、特殊職労働者、日雇労働者、家庭内労働者に分けられる。図2は、韓国における非正規雇用労働者の内訳を示しており、日本のパート・アルバイトにあたる「時間制労働者」の割合は日本より小さく、「限時的労働者」(特に、「期間制労働者」)の割合が高いことが分かる1。
韓国では、2007年7月に「非正規職保護法」が施行される前までは、期間制労働者の長期使用に関する法的規制が特になく、企業は正規職に対する解雇規制を回避する目的で期間制労働者を多く雇用していた。そして、「非正規職保護法」の施行により期間制労働者の長期使用に関する法的規制2が用意されてからも、短期的なパートやアルバイトよりは正社員と同様に働き、賃金はパート・アルバイトより高いものの、相対的に長く働ける期間制労働者を企業は選好している。また、労働者の側も1ヶ月の安定的な収入を希望し、収入が不安定なパートやアルバイトよりは期間制労働者として働くことを望んでいるのが現状である。
日本ではパートタイムという働き方を選択する理由として、「自分の都合の良い時間(日)に働きたいから」あるいは「勤務時間・日数が短いから」3といったものが多いことからすれば、フルタイムで働けるのに雇用期間の制限のある限時的労働者の多い韓国に比べて健全のように見える。しかし日本の現状に問題がないわけではない。その一つの事象として擬似パートの問題がある。擬似パートとは、労働時間が正規労働者と同一の労働者で、フルタイムパートとも呼ばれており、パートタイム労働者の約2割から3割がその範疇にはいると言われている。擬似パートは、女性が多く、就労の実態は正社員とあまり変わらないが、賃金は時間給で賞与がないケースが多く処遇水準においては正社員と比較してかなりの差がある。同一労働同一賃金が適用されない一例だと言える。
また、子育てをしている女性の中には、育児環境の不整備が原因で、短時間労働者として働いているケースも少なくない。過去と比べて短時間や派遣といった多様な働き方が増えてはいるが、働く母親の事情を考慮した働き方は他の先進国に比べて十分提供されていない。今後、短時間労働者の待遇のあり方や子育てをしている女性の働き方の改善が切実に要求される。
1 非正規雇用労働者の3分類「限時的労働者」、「時間制労働者」、「非典型労働者」は回答が重複しており、合計が100%を上回っているので、日本の数値と直接比較することはできない。
2 企業は期間制労働者を同一事業所で2年以上勤務させた場合、該当労働者を無期契約労働者に切り替えることが義務化された。
3 厚生労働省(2011)「平成 23年パートタイム労働者総合実態調査の概況」
(2015年08月11日「研究員の眼」)
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生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
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