2017年12月05日

確定拠出年金と親和性が高いロボ・アドバイザーツール

金融研究部 准主任研究員   前山 裕亮

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最近、フィンテック(FinTech)という言葉をよく耳にするようになったのではないだろうか。フィンテックとは、金融(Finance)とIT 技術(Technology)の融合を意味する造語である。資産運用の世界にもフィンテックの波が押し寄せている。その一つが、ロボ・アドバイザーツール(以後、ロボアド)である。ここ1、2年で大手の金融機関やベンチャー企業など、様々なところから提供が開始され、投資家が気軽に試せる環境が整いつつある。

ロボアドとは「インターネット上でポートフォリオ(資産配分)を提案してくれるウェブサービス」の総称である。今まで機関投資家が用いてきた投資理論や投資技術と金融機関のセール蓄積してきたノウハウをシステム化し、インターネット上で誰でも使えるようにツール化した新しいサービスといえる。

まずロボアドでは、5問から15 問程度のアンケートに答えることになる。アンケートを通じて、投資家がどのような投資ニーズを持っているのか、またどのような投資が適切か、特にどの程度価格下落リスクが許容できるか(リスク許容度)を把握するようになっている。アンケートが終わると、アンケートから推計した顧客のリスク許容度に合ったポートフォリオが提示される【図表】。ポートフォリオは、当たった外れたで一喜一憂するような短期的な予測ではなく、株式や債券などの長期的な収益率とリスクを推計し、それを基に平均・分散アプローチで最適な配分比率が提案されているものと推測される。つまり、年金基金のアセット・アロケーションの決定方法と概ね同じであると思われる。
図表:ロボアドバイザーツールサービスの流れ
ロボアドのメリットは2点、挙げられる。まず、投資家が気軽に試せる点である。既存の金融機関の窓口に相談に行くのと異なり、インターネットが使える環境であれば時間や場所に縛られることがない。また、対面だと「買わないと悪い」と感じてしまう、または「強引に売付けられるのでは」と警戒してしまうため、気軽に相談しにくいのではないだろうか。それがロボアドでは、そうした対面独特のわずらわしさがないのだ。

もう1つのメリットは、システム化によって人手がかからないサービスとなっており、お任せで運用する場合でも、小額から開始することができ、しかも運用コストも低く抑えられている点である。そのため、今まで金融機関がアプローチできなかった現役世代の投資初心者を中心に、ロボアドをきっかけに投資を始める人が増えることが期待されている。

ただ、インターネット上のサービスゆえの課題があり、期待されているほど投資初心者の利用が進まない可能性もある。そもそも投資初心者は資産運用の必要を感じているものの、なんとなく漠然と必要性を感じている場合が圧倒的に多い。そのような初心者が投資を始めるには、資産運用の必要性の訴求や投資方法の提案などをいかに工夫するかが重要になる。既存の金融機関のセールスでは、潜在的な資産運用のニーズを把握し、それに合わせて必要性を訴えることで新規の顧客を開拓してきた。また、投資を始めることに躊躇している人に対しては、時間分散して小額から始めることやよりリスクの低い運用から始めることなど、状況に応じた提案をすることも必要になる。現在提供されているロボアドは、このような既存のセールと同じように投資初心者に資産運用の必要性を訴求し、またサポートすることはできない。

本来的にインターネットでの情報提供には、限界があると思われる。インターネットは自分の関心があることを主体的に調べるにはとても便利である。その一方で、関心が乏しいことは多くの方が読み飛ばしてしてしまうためである。どんなに優れたコンテンツを公開しても、実際に漠然と資産運用を考えている投資初心者の目に留まる可能性は低いのではなかろうか。ゆえに、ロボアドで投資初心者にポートフォリオの提案と合わせて、資産運用の必要性を訴求するのは極めて困難といえよう。

以上の課題を踏まえると、ロボアドは資産運用に対する関心がある程度高まっている投資初心者と親和性が高いと思われる。具体的には、確定拠出年金の加入者である。企業型の加入者は、働いている企業が制度を導入していたため、なんとなく加入した方がほとんどだろう。また、2017年初に加入範囲が拡大された個人型(iDeCo)の加入者も、掛金の所得控除による節税に惹かれて加入された方が多いと思われる。加入理由はどうであれ企業型、個人型共に加入者は、加入したことによって資産運用が身近になった人たちである。身近になった分、資産運用を始めることへの抵抗感が薄れていることが期待できる。ロボアドで資産運用の必要性を十分訴求できなくても、加入者はロボアドの提案ポートフォリオやバランス・ファンドを積極的に活用してくれる可能性がある。また、確定拠出年金の場合には基本的に毎月掛金の積立投資である。時間分散して投資をすることが前提になっていることも、基本的にポートフォリオ提案しかできないロボアドにとってはプラスに働くと思われる。

ロボアドが確定拠出年金の加入者向けなどで活用が進み、資産運用への関心がより高まっていくことに期待したい。
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金融研究部   准主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

(2017年12月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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