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2016年12月09日
(政府支出、財政収支)選挙公約から規模縮小も、政府支出の増加、財政赤字の拡大を予想
10月から会計年度がスタートした17年度予算は、大枠の予算規模は既に決定しているものの、各省庁への予算配分を決める歳出法案の審議が滞っており、暫定予算で凌ぐ状況が続いている。暫定予算は、イラン、アフガニスタンへの軍事行動のための海外緊急事態作戦費用(OCO)101億ドルなどを含めた、予算規模1.07兆ドル(16年度:1.067超ドル)で、4月28日までの予算となっている。このため、4月下旬には、その後の対応を検討する必要がある。一方、債務残高上限の適用期限が17年3月に到来するため、新しい債務上限額を設定するのか、これまで同様債務上限額を適用しない期間を延長するのか、という問題も絡んでトランプ氏の議会に対するリーダーシップが試される。
一方、18年度予算については、17年の2月から3月とみられるトランプ新大統領の予算教書で方針が示される見通しだ。選挙公約で示した経済政策を、どのタイミングでどの程度実現していくのかを判断する上で非常に注目される。トランプ氏の経済政策が公約通り実施される場合には、10年間で1兆ドルとされるインフラ投資を除いても、今後10年間で財政赤字が5.3兆ドル増加するとみられている(図表16)。また、債務残高(GDP比)も足元の77%から105%へ増加が見込まれている。
このため、均衡財政を志向する議会共和党が、そのままの規模で予算編成を行うとは考え難い。これから予算教書までトランプ氏サイドと議会共和党で政策調整が行われるとみられるが、規模の縮小は不可避だろう。もっとも、規模が縮小されたとしても大きな方向性として、これまでのやや緊縮的な財政政策から拡張的な財政政策に方針転換されるのはほぼ間違いない。OECDは公約通りの財政政策を行った場合に、基礎的財政収支の赤字幅(GDP比)が16年の▲1.5%から18年には▲3%に拡大すると試算している(図表17)。
当研究所では、18年度予算の開始が17年10月であることや予算規模が縮小されることから、17年の成長率の押上げはほぼゼロ、18年でも財政規模縮小により0.3%程度に留まると予想している。
10月から会計年度がスタートした17年度予算は、大枠の予算規模は既に決定しているものの、各省庁への予算配分を決める歳出法案の審議が滞っており、暫定予算で凌ぐ状況が続いている。暫定予算は、イラン、アフガニスタンへの軍事行動のための海外緊急事態作戦費用(OCO)101億ドルなどを含めた、予算規模1.07兆ドル(16年度:1.067超ドル)で、4月28日までの予算となっている。このため、4月下旬には、その後の対応を検討する必要がある。一方、債務残高上限の適用期限が17年3月に到来するため、新しい債務上限額を設定するのか、これまで同様債務上限額を適用しない期間を延長するのか、という問題も絡んでトランプ氏の議会に対するリーダーシップが試される。
一方、18年度予算については、17年の2月から3月とみられるトランプ新大統領の予算教書で方針が示される見通しだ。選挙公約で示した経済政策を、どのタイミングでどの程度実現していくのかを判断する上で非常に注目される。トランプ氏の経済政策が公約通り実施される場合には、10年間で1兆ドルとされるインフラ投資を除いても、今後10年間で財政赤字が5.3兆ドル増加するとみられている(図表16)。また、債務残高(GDP比)も足元の77%から105%へ増加が見込まれている。
このため、均衡財政を志向する議会共和党が、そのままの規模で予算編成を行うとは考え難い。これから予算教書までトランプ氏サイドと議会共和党で政策調整が行われるとみられるが、規模の縮小は不可避だろう。もっとも、規模が縮小されたとしても大きな方向性として、これまでのやや緊縮的な財政政策から拡張的な財政政策に方針転換されるのはほぼ間違いない。OECDは公約通りの財政政策を行った場合に、基礎的財政収支の赤字幅(GDP比)が16年の▲1.5%から18年には▲3%に拡大すると試算している(図表17)。
当研究所では、18年度予算の開始が17年10月であることや予算規模が縮小されることから、17年の成長率の押上げはほぼゼロ、18年でも財政規模縮小により0.3%程度に留まると予想している。
(貿易)10-12月期以降は成長のマイナス寄与へ
7-9月期の純輸出は、成長率寄与度が+0.87%ポイントと大幅なプラス寄与となったが、輸入が前期比年率+2.1%(前期:+0.2%)であったのに対し、輸出が+10.1%(前期:+1.8%)と大幅な伸びとなったことが大きい。輸出は、大豆輸出が大幅に増加したことで、飲料・食料が+216.7%(前期:+21.1%)と異常な伸びとなった。これは米国産大豆の需要が一時的に高まったことが要因であり、持続可能ではない。
7-9月期の純輸出は、成長率寄与度が+0.87%ポイントと大幅なプラス寄与となったが、輸入が前期比年率+2.1%(前期:+0.2%)であったのに対し、輸出が+10.1%(前期:+1.8%)と大幅な伸びとなったことが大きい。輸出は、大豆輸出が大幅に増加したことで、飲料・食料が+216.7%(前期:+21.1%)と異常な伸びとなった。これは米国産大豆の需要が一時的に高まったことが要因であり、持続可能ではない。
実際、10月の貿易収支統計では。大豆輸出額(名目、季調値)が22億ドルと、最近のピークであった8月の52億ドルから半分以下となっており、減少が顕著である。その結果、貿易収支全体でも赤字幅が拡大しており、10-12月期の純輸出は、成長率寄与度でマイナスに転じる可能性が高い(図表18)。
また、足元でドル高が進んでいることもあり、純輸出は当面マイナス寄与での推移が予想される。しかしながら、トランプ氏は、主に中国に対して不公正貿易の是正や為替操作を痛烈に批判しているほか、米国の貿易赤字縮小を目指すとしていることから、中国をはじめ対米輸出の減少、もしくは米国からの輸入増加を促す政策が採られる可能性が高い。このため、18年末にかけては、成長寄与度のマイナス幅は緩やかに縮小することが予想される。
また、足元でドル高が進んでいることもあり、純輸出は当面マイナス寄与での推移が予想される。しかしながら、トランプ氏は、主に中国に対して不公正貿易の是正や為替操作を痛烈に批判しているほか、米国の貿易赤字縮小を目指すとしていることから、中国をはじめ対米輸出の減少、もしくは米国からの輸入増加を促す政策が採られる可能性が高い。このため、18年末にかけては、成長寄与度のマイナス幅は緩やかに縮小することが予想される。
3.物価・金融政策・長期金利の動向
(物価)総合指数は原油価格の上昇に伴い緩やかに上昇へ
消費者物価の総合指数は、10月が前年同月比+1.6%となり、エネルギーと食料品を除いたコア指数の+2.1%との乖離が0.5%ポイントまで縮小した(図表19)。
消費者物価の総合指数は、10月が前年同月比+1.6%となり、エネルギーと食料品を除いたコア指数の+2.1%との乖離が0.5%ポイントまで縮小した(図表19)。
これは、原油価格の下落に伴ってエネルギー価格が物価を押下げる構図が相当程度解消されてきたことを示している。実際、エネルギー価格指数は、15年の春先には2割近い下落となっていたが、10月には14年8月以来となるプラスに転じた。
当研究所では、原油価格の見通しを17年末が56ドル、18年末が60ドルと予想している(前掲図表5)。このため、18年末にかけてエネルギー価格の前年比はプラスの状態が続くとみられ、17年以降は総合指数が、コア指数を上回る状況が持続しよう。消費者物価は、17年、18年ともに前年比+2.3%と16年(見込み)の+1.2%から加速しよう。物価見通しに対するリスクとしては、トランプ氏の経済政策の結果、労働市場のタイト化から賃金インフレが顕在化し、物価が上振れすることである。
当研究所では、原油価格の見通しを17年末が56ドル、18年末が60ドルと予想している(前掲図表5)。このため、18年末にかけてエネルギー価格の前年比はプラスの状態が続くとみられ、17年以降は総合指数が、コア指数を上回る状況が持続しよう。消費者物価は、17年、18年ともに前年比+2.3%と16年(見込み)の+1.2%から加速しよう。物価見通しに対するリスクとしては、トランプ氏の経済政策の結果、労働市場のタイト化から賃金インフレが顕在化し、物価が上振れすることである。
一方、12月のFOMC会合では、FOMC参加者の政策金利見通しがどの程度変更されるのか、来年以降の金融政策を占う上で注目される。財政政策をはじめ大幅な政策転換が見込まれる中で、景気対策としての金融政策の役割が相対的に低下することもあり、FRBがこれまでの慎重姿勢を改め、政策金利引き上げペースを加速させてくる可能性はある。
しかしながら、FRBも足元では来年以降の経済政策の効果を見極めるのは極めて難しいことから、現時点での大幅な変更はないだろう。当研究所では、金融政策見通しについて、これまでの17年が年2回、18年が年3回との予想を維持している。ただし、金融政策についてもリスクは政策金利引き上げペースを加速させる方向である。
しかしながら、FRBも足元では来年以降の経済政策の効果を見極めるのは極めて難しいことから、現時点での大幅な変更はないだろう。当研究所では、金融政策見通しについて、これまでの17年が年2回、18年が年3回との予想を維持している。ただし、金融政策についてもリスクは政策金利引き上げペースを加速させる方向である。
(2016年12月09日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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