2024年09月20日

消費者物価(全国24年8月)-既往の円安の影響で食料(生鮮食品を除く)の伸びが1年3ヵ月ぶりに拡大

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント拡大の2.8%

消費者物価指数の推移 総務省が9月20日に公表した消費者物価指数によると、24年8月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.8%(7月:同2.7%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:2.8%、当社予想も2.8%)通りの結果であった。

全国旅行支援の反動による宿泊料の押し上げは剥落したが、既往の円安に伴う輸入物価上昇の影響で食料(生鮮食品を除く)の上昇率が1年3ヵ月ぶりに拡大したことが、コアCPI上昇率を押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比2.0%(7月:同1.9%)、総合は前年比3.0%(7月:同2.8%)と10ヵ月ぶりに3%台となった。
 
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(7月:前年比1.9%→8月:同▲3.8%)は1年2ヵ月ぶり、灯油(7月:前年比3.7%→8月:同▲0.7%)は1年1ヵ月ぶりに下落に転じたが、7月に激変緩和策がいったん終了した電気代(7月:前年比22.3%→8月:同26.2%)、ガス代(7月:前年比7.4%→8月:同11.1%)の上昇率が高まったことから、エネルギー価格の上昇率は前年比12.0%と前月から変らなかった。

食料(生鮮食品を除く)は前年比2.9%(7月:同2.6%)と上昇率が前月から0.3ポイント拡大した。食料(生鮮食品を除く)は23年8月の前年比9.2%をピークに鈍化傾向が続いていたが、23年5月以来、1年3ヵ月ぶりに上昇率が高まった。前月比は0.7%と7ヵ月連続で上昇した。既往の円安に伴う輸入物価の上昇が消費者物価に波及している。

内訳をみると、米類(前年比28.3%)、ケチャップ(同11.4%)、果実ジュース(同34.9%)などが前年比で二桁の高い伸びを続ける一方、前年の上昇率が高かった裏が出ることで、パン(前年比▲0.9%)、麺類(同▲0.7%)、卵(同▲13.6%)、食用油(同▲6.8%)など、下落する品目も増えており、食料の価格にはばらつきが見られる。

外食は前年比2.5%(7月:同2.3%)と2ヵ月連続で上昇率が拡大した。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 サービスは前年比1.4%(7月:同1.4%)となり、上昇率は前月と変らなかった。外食の伸びは高まったが、全国旅行支援の反動による押し上げが剥落したことにより、宿泊料が7月の前年比10.3%から同9.5%へと上昇率が縮小した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.94%(7月:0.94%)、食料(除く生鮮食品・外食)が0.60%(7月:0.53%)、その他財が0.57%(7月:0.55%)、サービスが0.66%(7月:0.68%)、全国旅行支援が0.00%(7月:0.03%)であった。

2.物価上昇品目数が4ヵ月連続で減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、8月の上昇品目数は387品目(7月は392品目)、下落品目数は100品目(7月は94品目)となり、上昇品目数が4ヵ月連続で前月から減少した。上昇品目数の割合は74.1%(7月は75.1%)、下落品目数の割合は19.2%(7月は18.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は55.0%(7月は57.1%)であった。

上昇品目数の割合は引き続き高水準で推移しているが、前年の価格水準が非常に高かった食料を中心に、その裏が出ることで下落に転じる品目が目立つようになっている。なお、食料(生鮮食品を除く)の上昇率は拡大したが、品目数でみれば上昇品目数の減少が続いている。

3.コアCPI上昇率は10月に2%割れの後、再び2%台へ

食料品の輸入物価、国内企業物価、消費者物価 食料(生鮮食品を除く)の上昇率は1年3ヵ月ぶりに高まったが、消費者物価の川上段階にある輸入物価の食料(飲食料品・食料用農水産物)は足もとの円高の影響ですでに伸びが鈍化している。23年春~夏頃のように消費者物価の食料(生鮮食品を除く)の伸びが10%近くまで急拡大することはないだろう。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 エネルギー価格は、電気・ガス価格の激変緩和策終了によって7、8月と大幅に上昇したが、9~11月(8~10月使用分)は「酷暑乗り切り支援策」によって、電気・都市ガス代は再び大きく押し下げられる。

コアCPI上昇率は、エネルギー価格の上昇率鈍化を主因として24年9月に2%台前半、10月にはいったん2%を割り込むが、支援策終了後には再び2%台となることが予想される。その後は、賃上げに伴うサービス価格の上昇を円高による財価格の上昇率鈍化が打ち消す形で、コアCPIの伸びは鈍化傾向が続き、25年度には日銀の物価目標である2%を割り込むことが予想される。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年09月20日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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