2016年11月10日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(11月号)~2ヵ月連続プラス 輸出回復の兆し

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの16年9月の輸出額は前年同月比12.0%増(前月:同11.8%増)と若干上昇した。主力の電話・部品が増加に転じ、輸出の勢いが再び強まってきている(図表9)。

品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同3.2%増(前月:同3.7%減)と2ヵ月ぶりのプラスとなり、コンピュータ・電子部品も同28.3%増(前月:同22.6%増)と一段と拡大した。このほか、コメ(同13.9%増)やコーヒー(同52.4%増)、水産物(同8.1%増)などの食品も好調だった。一方、織物・衣類は同2.4%増(前月:同9.1%増)と大きく低下したほか、履物は同9.7%増(前月:同12.6%増)と高水準ながらもやや鈍化した。

資本別に見ると、輸出全体の7割を占める外資系企業は同14.0%増(前月:同12.1%増)と一段と上昇したものの、地場企業は同7.5%増(前月:同11.1%減)と鈍化した。

輸入額は前年同月比5.8%増と、前月の同9.9%増から低下した。結果、貿易収支は8.6億ドルの黒字(前月から2.9億ドル増加)と、4ヵ月連続の黒字を確保した(図表10)。

なお、10月11日には韓国サムスン電子の新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」の生産の打ち切りが発表されおり、今後はサムスン製品の組み立て工程を請け負うベトナムの輸出の悪化が懸念される。
(図表9)ベトナム輸出の伸び率(品目別)/(図表10)ベトナムの貿易収支
シンガポールの16年9月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比0.9%減(前月:同3.7%増)と二ヵ月ぶりのマイナスに転じた(図表11)。輸出の伸び率は上下に振れる展開となっているものの、総じて年明け以降の底入れに向けた動きは続いていると言える。

品目別に見ると、輸出(石油と再輸出除く)全体の約3割を占める電子製品は同2.8%減(前月:同2.5%減)と小幅に低下した。PC(同17.5%増)とダイオード・トランジスタ(同10.1%増)が増加したものの、IC(同2.4%減)やPC部品(同19.2%減)、通信機器(同15.5%減)が減少した。また同じく全体の約3割を占める化学製品は同9.8%増(前月:同8.2%減)と、7ヵ月ぶりにプラスに転じた。このほか、石油化学製品が同2.7%減(前月:同12.7%減)、その他製品が同6.4%減(前月:同19.0%増)と減少したものの、医薬品が同21.0%増(前月:同14.8%減)とプラスに転じた。

総輸出額は前年同月比2.7%増(前月:同6.0%増)、総輸入額は前年同月比2.3%減(前月:同2.5%増)と、それぞれ低下した。結果、貿易収支は51.9億ドルの黒字と、前月から12.7億ドル黒字が拡大した(図表12)。
(図表11)シンガポール輸出の伸び率(品目別)/(図表12)シンガポール貿易収支
フィリピンの16年9月の輸出額は前年同月比5.1%増と、前月の同4.4%減から上昇した(図表13)。輸出の牽引役である電子製品に加え、幅広い品目が持ち直し、輸出の停滞懸念は払拭されつつある。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同3.6%増と、増加傾向を維持したものの、前月(同11.6%増)から低下した。電子製品の中では、電子データ処理機(同16.2%増)と半導体デバイス(同2.7%増)がそれぞれ低下した。一方、その他9品目を見ると、機械・輸送用機器(同3.0%減)と木工品・家具(同0.9%減)こそ減少したものの、その他鉱産物(同97.5%増)や電子機械・部品(同66.3%増)、金属部品(同18.2%増)、化学(同10.8%増)、アパレル(同10.2%増)、イグニッション・ワイヤーセット(同5.1%増)、その他製造品(同3.2%増)など幅広い品目が増加した。

輸入額は前年同月比13.5%増と、前月の同12.2%増から上昇した。結果、貿易収支は18.9億ドルの赤字と、前月から1.3億ドル赤字が縮小した(図表14)。
(図表13)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)/(図表14)フィリピンの貿易収支

(参考)仕向け地別の輸出動向

(図表15)タイ仕向け地別の輸出動向/(図表16)マレーシア仕向け地別の輸出動向/(図表17)インドネシア仕向け地別の輸出動向/(図表18)ベトナム仕向け地別の輸出動向/(図表19)シンガポール仕向け地別の輸出動向/(図表20)フィリピン仕向け地別の輸出動向
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2016年11月10日「経済・金融フラッシュ」)

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