2016年10月11日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~7月の下振れは一時的。底打ちの動きは継続。

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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16年8月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比4.4%増と、前月の同7.8%減から大きく上昇してプラスに転じた(図表1)。8月の輸出は全6カ国で上昇したが、7月の下振れからの反動増の影響もあると見られ、輸出が底打ちしたかどうかは次月以降の結果も合わせて見ていく必要がありそうだ。
(図表1)ASEAN6ヵ国合計の輸出の伸び率(国別寄与度)/(図表2)ASEAN6ヵ国輸出の伸び率
タイの16年8月の輸出額は前年同月比6.5%増(前月:同6.4%減)と、前月の急落から一転して増加した(図表3)。輸出数量指数も同3.0%増(前月:同4.8%減)と増加に転じた。

品目別に見ると、主要工業製品は同9.0%増(前月:同3.1%減)と2ヵ月ぶりのプラスに転じた。自動車・部品(同34.5%増)をはじめ、電子製品・部品(同1.7%増)、家電製品(同13.5%増)、機械・装置(同3.3%増)など幅広い品目がプラスに転じた。また農産品・加工品は同0.2%減(前月:同14.2%減)と、ゴム(同34.8%減)や砂糖(同21.1%減)の減少こそ続いているが、コメ(同0.2%減)を中心にマイナス幅が縮小した。さらに鉱業・燃料(同11.9%減)も引き続き前年割れながらも、石油製品を中心にマイナス幅が縮小した。

8月の輸入額は前年同月比1.5%減と、前月の同7.2%減から上昇した。結果、8月の貿易収支は21.3億ドルの黒字と、前月から12.9億ドル黒字が拡大した(図表4)。
(図表3)タイ輸出の伸び率(品目別)/(図表4)タイの貿易収支
マレーシアの16年8月の輸出額は前年同月比2.5%増(前月:同10.5%減)と、23ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表5)。前月まで減少傾向が続いていた機械類と動植物性油脂が増加に転じて全体を押上げた。また輸出数量指数についても同3.9%増と、前月の同2.0%減から増加に転じた。

品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器が同4.7%増(前月:同10.2%減)と、集積回路や電気機械・部品を中心に大きく上昇し、17ヵ月ぶりのプラスに転じた。また動植物性油脂も同22.0%増(前月:11.1%減)と、パーム油を中心に上昇してプラスに転じた。一方、鉱物性燃料は同16.2%減(前月:同15.3%減)と、天然ガスを中心に低下した。

8月の輸入額は前年同月比5.9%増と、前月の同9.8%減から上昇した。結果、8月の貿易収支は21.2億ドルの黒字と、前月から16.4億ドル黒字が拡大した(図表6)。
(図表5)マレーシア輸出の伸び率(品目別)/(図表6)マレーシア貿易収支
インドネシアの16年8月の輸出額は前年同月比0.7%減(前月:同16.9%減)と上昇した(図表7)。前月は鈍い海外需要と資源の価格低迷、レバラン(断食明け大祭)に伴って営業日数が少なかったことから急低下したが、8月は大きくマイナス幅が縮小した。また輸出数量は同7.5%増(前月:同4.6%減)と、再びプラスに転じた。

品目別に見ると、輸出全体のそれぞれ1割強を占める石油ガスが同26.3%減(前月:同29.8%減)と引き続き全体の重石となっているものの、製造品が同4.2%増(前月:同11.5%減)と機械類を中心に上昇して6ヵ月ぶりに増加に転じた。また鉱業製品も同0.9%増(前月:同25.4%減)と15ヵ月ぶりのプラスに転じたほか、農産品は同17.6%減(前月:39.5%減)とマイナス幅が縮小した。

8月の輸入額は前年同月比0.5%減と、前月の同10.6%減から上昇した。結果、8月の貿易収支は2.9億ドルの黒字と、前月から2.2億ドル黒字が縮小した(図表8)。
(図表7)インドネシア輸出の伸び率(品目別)/(図表8)インドネシアの貿易収支
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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