2016年01月22日

16年1月21日ECB政策理事会: 3月追加緩和を検討。中銀預金金利再引き下げが有力

経済研究部 上席研究員   伊藤 さゆり

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欧州中央銀行(ECB)が21日に政策理事会を開催した。今回の政策変更はなかったが、ドラギ総裁は記者会見で、「下振れリスクが再び増大」していることから、3月10日開催予定の次回理事会で「金融政策スタンスを見直し、再評価する必要が生じた」として追加緩和を示唆した。

3月の追加緩和策は、基本的に12月の政策理事会で見送られた政策から検討されることになるだろう。10bpの中銀預金金利の再引き下げが選択される可能性が高く、月600億ユーロという国債等の買入れ額の拡大は、今後も市場の不安定な動きが止まらず、下振れリスクが一層増大した場合に限られるだろう。
 

3月10日の次回理事会で政策を再評価する方針を表明、追加緩和を示唆

欧州中央銀行(ECB)が21日に政策理事会を開催した。前回12月3日の政策理事会で追加緩和を決めたばかりであり(図表1、図表2)、今回の政策変更はなかったが、ドラギ総裁は記者会見で「新興国市場の成長見通しの不透明感の高まり、金融・商品市場のボラティリティ、地勢学的リスクによって下振れリスクが再び増大した」ことから、3月10日開催予定の次回理事会で「金融政策スタンスを見直し、再評価する必要が生じた」と述べ、追加緩和を示唆した。
図表1 15年12月理事会の決定内容/図表2 ECBの政策金利とEONIA

原油価格の大幅下落で避けられなくなったインフレ見通しの下方修正

12月の追加緩和策は、「期待を超える緩和」を予想していた市場の失望を招いたが、前回12月3日の政策理事会の段階では、低インフレが長期化する半面で緩やかな回復は続いていたため、大規模な緩和は正当化し難い面があった。世界の金融市場も、前回理事会の段階では小康状態にあり、FRBも事実上のゼロ金利政策脱却の一歩を踏み出した。

しかし、今年初からは世界的な株安、原油安が再燃、世界経済の先行きの不透明感は増し、グローバルな資金の流れも不安定になっている。

他方、声明文の景気判断でも明記されたとおり、ユーロ圏の緩やかな景気の回復は途切れていない。原油価格の下落が、ユーロ圏のインフレ率低下の主要因となっており(図表3)、実質所得の押し上げを通じて、ユーロ圏の個人消費主導の回復を支えていることも一因だ。

しかし、世界経済の下振れによってユーロ圏の景気下振れリスクも高まっており、原油安の影響で低インフレが長期化すれば、インフレ期待の下振れが定着し、デフレのリスクが再び高まる。

次回、3月の理事会は、ECB/ユーロシステムのスタッフ経済見通しの改定月にあたる。見通しの前提条件となっている原油価格(北海ブレント)は1バレル=27ドル台まで低下している。前回の予測(図表4)は、16年52.2ドル、17年57.5ドルを前提としており、少なくとも1%という2016年のインフレ見通しは大きく下方修正せざるを得ない。これが、「金融政策スタンスを見直し、再評価する必要が生じた」との判断につながったようだ。

ECBの追加緩和方針の表明で欧州の株式市場は反発、外国為替市場ではユーロ安が進んだ。株高の流れは米国、さらに今朝のアジア市場にも引き継がれている。
図表3 インフレ率の推移/図表4 ECB/ユーロシステムスタッフ経済見通し

追加緩和策としては中銀預金金利の引き下げが選択される可能性が高い

ドラギ総裁は会見で「追加緩和策の手段は豊富にある」と述べたが、3月の追加緩和策は、基本的に12月の政策理事会で見送られた政策が検討されることになるだろう。

1月14日公開の前回理事会の議事要旨からは、最終的に12月の追加緩和の内容はプラート専務理事の当初提案通りで決着したが、10bp以上の中銀預金金利の引き下げや、国債等の資産買入れプログラム(APP)の月600億ユーロという買入れ額の拡大、短期的な効果を高めるための買入れの前倒し、6カ月を超える期間の延長などの提案があったことがわかっている。

これらのうち、3月に実施される可能性が高いのは10bpの中銀預金金利の再引き下げだろう。議事要旨によれば、12月の引き下げ幅が10bp で決着した理由の1つは、中銀預金金利のマイナス幅を拡大し銀行等の収益が圧迫されることが、銀行の貸出利鞘の引き上げに動き、却って資金調達環境を悪化させる副作用を強めるリスクを見極めるべきというものであったが、もう1つの理由は、必要が生じた場合、一層の引き下げ余地を確保するということにあったからだ。

12月理事会では、追加緩和そのものに数人のメンバーが反対し、ドイツ連銀のバイトマン総裁などと思われる反対派は、特に、APPが、コストと副作用が大きい政策であるため、「デフレの脅威が迫るような著しい逆境にのみに限るべき」と拡張に反対したようだ。副作用を抑制するために導入時に強く求めた「(財政や構造改革などの)補完的な政策は十分に実施されていない」という見解も明記されている。

APPの拡張、特に月600億ユーロという買入れ額の拡大は、今後も市場の不安定な動きが止まらず、下振れリスクが一層増大した場合に限られるだろう。
 
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経済研究部   上席研究員

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州経済

(2016年01月22日「経済・金融フラッシュ」)

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