コラム
2007年09月03日

市民マラソンとボランティア

土堤内 昭雄

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今年2月に東京で大規模な市民マラソン“東京マラソン2007”が開催されたことを記憶されている方も多いだろう。新宿の都庁前を午前9時過ぎにスタートし、皇居周辺や銀座、浅草など東京の観光名所を巡り、お台場のゴールまで42.195キロを、約3万人のトップアスリートや車いすランナー、一般市民ランナーが駆け抜けた。これまで世界の主要な大都市で大規模な市民マラソンが行われるのは珍しくなく、ニューヨーク、ボストン、シカゴ、ロンドン、パリ、ローマ、ベルリンなど枚挙に暇がないほどである。

市民マラソンの大きな特徴は、市民ランナーの数の多さに加えて、ボランティアとしての参加者の多さである。“東京マラソン2007”でも3万人のランナーに対して、1万2千人のボランティアが参加した。ボランティアは会場の案内、観衆の誘導・整理、エイドステーションの給水や救護補助、ゴール地点でのランナーの誘導、その他にも会場の清掃や荷物預かりなど実に多岐にわたる仕事をこなしている。このように市民マラソンは、大勢のボランティアによって支えられ、大会の運営自体が市民を主体として行われているのである。

さらに成熟した市民マラソンでは、沿道に詰めかけた大勢の観衆がさまざまなパフォーマンスを繰り広げ、ランナー、ボランティア、観衆が一体となってコミュニティを形成していく。“東京マラソン2007”はそのようなコミュニティづくりに向けた最初の一歩だった。今後の課題は、発生するさまざまな問題に対してランナー、ボランティア、地域住民、大会運営者、観衆等が一体となって取り組み、一部の人たちのお祭り騒ぎではない、東京の風物詩として定着させていくことだろう。そして文字通り市民マラソンとして市民の手による大会運営の姿がシッカリ見えてくることが重要ではないだろうか。

コミュニティが衰退する一方で、これからの人口減少社会が活力を維持し、われわれが豊かに生きていくためには、支え・支えられる「互助」の仕組みが不可欠だ。そのような人間同士の信頼関係がソーシャルキャピタルという21世紀の新たな社会資本である。市民マラソンは従来の都市施設整備だけではなく、地域のソーシャルキャピタルという新たな社会資本整備に多大な寄与をする可能性を有している。“東京マラソン”は、新たな市民社会を築くための試金石と言えるかもしれない。

来年の2月17日(日)に開催される“東京マラソン2008”の参加者募集が8月17日に締め切られた。フルマラソンの部の定員2万5千人に対して10万人を超える応募があり、10月に抽選が行われるが、ランナーとして参加するのもなかなか狭き門である。9月3日(月)からはボランティアの募集が始まっており、こちらの方は先着順に1万2千人とのことである。あなたも申し込んでみてはいかがですか!

(2007年09月03日「研究員の眼」)

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