コラム
2018年11月27日

「平成」の30年を振り返って-次世代へのメッセージは、「レジリエントな社会づくり」

土堤内 昭雄

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今年のゴールデンウィークは、前半3休、中2日、後半4休のスプリット型だった。来年は10連休になりそうだ。2019年4月30日に天皇陛下が退位、新天皇が即位される5月1日が祝日になるために、その前後が休日になるからだ。あと5か月あまりで「平成」という時代が終わる。「昭和」から「平成」へと元号が変わった30年前、時代の大きな節目を迎えたことを、今でも鮮明に覚えている。

平成の30年を振り返るとさまざまな社会的変化があった。日々の小さな動きには気づかなくても、それらを積み重ねた時間を一気に振り返ると、少子高齢化や人口減少という劇的な変化を実感する。今でも多くの人の記憶に強く残っている出来事は、阪神淡路大震災と東日本大震災ではないだろうか。30年間にこれほど巨大な地震に2度も見舞われるとは、ほとんどの人が想像すらしなかっただろう。

平成7年(1995年)1月17日の未明に発生した阪神淡路大震災では、オフィスビルやマンションが倒壊し、高架の高速道路が崩落するなど、都市施設の惨状を目の当たりにした。地震発生後に生じた市街地の火災は数日間延焼し、神戸の街に焼け野原が広がった。地震による建物の倒壊と火災で6,400人以上の人が亡くなった。街の復興が進んだ現在も、震災が残した多くの人の心の傷は癒えていない。

平成23年(2011年)3月11日の午後2時46分、宮城県沖を震源にマグニチュード9.0の巨大地震が発生、東北地方から関東地方の太平洋側沿岸に押し寄せた大津波は、人も家も街も丸ごと飲み込んだ。津波の本当の恐ろしさを知った。地震後には、東京電力福島第1原子力発電所で水素爆発が起こり、放射性物質が大気中に飛散するという未曾有の大事故も発生、にわかには信じ難い事態となった。

わずか30年の間に巨大地震が2度も起こり、あらためて日本が地震国であることを痛感した。南海トラフ地震や首都直下地震は、今後30年以内の発生確率が70%程度と高い。今年は地震に加え、超大型台風や豪雨にも襲われ、多くの都市インフラが甚大な被害を被った。どれほど科学技術が進歩しても自然災害を無くすことはできず、被害想定には不確実性が残ることを忘れてはならない。

平成の30年間に巨大地震を経験したわれわれが次世代へ伝えるべきメッセージは、ポスト「平成」の時代は自然災害に対して謙虚に向き合い、二次災害となる人為的な被害を最小限にくいとめなければならないということだ。今後、日本社会が持続可能であるためには科学技術を過信することなく、巨大地震等が必ず起こることを想定した国土づくりとともに、自然災害を完全に克服できない以上、被害に対して柔軟な復元力を持つ「レジリエント(resilient)な社会づくり」を肝に銘ずるべきだろう。
 
(参考) 研究員の眼『「もう20年」「まだ20年」「やっと20年」~震災復興の道のり』(2015年1月26日)
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土堤内 昭雄

研究・専門分野

(2018年11月27日「研究員の眼」)

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