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米国で政争に巻き込まれる体外受精-アラバマ州最高裁判決の波紋-
保険研究部 主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任 磯部 広貴
本年2月、米国南部アラバマ州の最高裁判所は体外受精後に凍結された胚を子どもとみなすとの判決を下した。胎児は既に生命であるとの前提の下、妊娠中絶に反対するプロライフの考えに基づくものの、実際に凍結胚の破棄に法的責任が生じるとなれば医療関係者が体外受精に従事することを困難にする。この判決の後、同州内のクリニックが体外受精を見合わせる動きが報じられた。
米国では1980年代よりプロライフが共和党と結びついて政治勢力化してきた経緯がある。しかしトランプ氏をはじめ共和党の政治家はこの判決から距離を置き、体外受精を擁護する姿勢を示している。既に米国内で普及した体外受精を妨げれば本年11月の大統領選挙/連邦議会選挙で勝てないとの判断があるためだ。
一方の民主党は、バイデン大統領による一般教書演説で取り上げるなど争点化しようとしている。プロライフすなわち共和党の凝り固まった思想や宗教観のために「子どもがほしい」という思いで行われる体外受精ができなくなるとの主張は、来る選挙で民主党へ有利に働くと見越してのものだ。
アラバマ州最高裁判決が惹起した体外受精利用への不安から距離を置きたい共和党、逆に争点にしたい民主党との綱引きに引き続き注目したい。
■目次
1――はじめに
2――アラバマ州最高裁判決
3――距離を置く共和党
4――争点にしたい民主党
5――おわりに
03-3512-1789
- 【職歴】
1990年 日本生命保険相互会社に入社。
通算して10年間、米国3都市(ニューヨーク、アトランタ、ロサンゼルス)に駐在し、現地の民間医療保険に従事。
日本生命では法人営業が長く、官公庁、IT企業、リース会社、電力会社、総合型年金基金など幅広く担当。
2015年から2年間、公益財団法人国際金融情報センターにて欧州部長兼アフリカ部長。
資産運用会社における機関投資家向け商品提案、生命保険の銀行窓版推進の経験も持つ。
【加入団体等】
日本FP協会(CFP)
生命保険経営学会
一般社団法人アフリカ協会
2006年 保険毎日新聞社より「アメリカの民間医療保険」を出版
公式SNSアカウント
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