コラム
2022年12月19日

続・米国株式、円建てだと今後どうなる?~2023年前半は2022年よりも厳しい可能性~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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米国株式は円建てだと小幅下落

2022年は、S&P500種株価指数(橙線)が10月に年初来安値を付け、年初からの下落幅が一時、ドル建てで▲25%に達した【図表1】。その後、やや持ち直したが、それでもS&P500種株価指数は年初から▲15%から▲20%あたりで推移している。
 
その一方で円換算したS&P500種株価指数(灰線)を見ると、2022年は相変わらず年初から▲10%から+5%圏内で推移している。11月に入ってから為替市場(黄線)ではドル高が一服したが、それでも円換算したS&P500種株価指数は年初から▲5%にとどまっている。TOPIXとほぼ同じような動きをし続けていることが分かる。
【図表1】 2022年のS&P500とTOPIXの推移
このように2022年は日本から為替ヘッジせずに米国株式に投資している場合は3月以降の円安によって助けられている状況である中、米国株式のインデックス型投信がよく売れた。米国株式のインデックス型投信の資金流出入(棒グラフ)をみると、増加基調は2022年に入って一服してしまったが、それでも毎月1,000億円以上の資金流入が続いている【図表2】。2022年は特に米国株式が下落した月ほど資金流入が膨らむ傾向があり、11月までの累計で1.6兆円の資金流入があった。それに伴って、米国株式のインデックス型投信の純資産総額は2022年初に2.6兆円だったのが、足元では4.2兆円まで膨らんできている。純資産総額のほとんどが為替ヘッジしていないものである。
 【図表2】 米国株式インデックス型投信の資金流出入と純資産総額

円建てだと2023年前半は2022年以上に厳しい可能性

ただ、2023年前半は米国株式のインデックス型投信を保有している投資家にとって2022年以上に我慢や忍耐が必要となる可能性が高いとみている【図表3】。それは、まず現時点で米国株式に割高感があり、さらに2023年に米国企業の業績が一段と厳しくなることが見込まれるためである1

そのため、インフレがこのまま収束してもS&P500種株価指数が2,800ポイントから3,600ポイント程度、だいたい現在からドル建てで10%から30%くらい下落することを筆者は予想している。もし、インフレの鈍化が緩慢で長期化することがあると、下落幅は更に大きくなるかもしれない。
【図表3】 ドル建て、為替、円建てのイメージ
それに加えて円建ての場合はこれまで追い風だった円安が止まる可能性が高い。米国においてインフレが収まり、金融引締めの打ち止めが実際に見えてくると、これまでのドル高の揺り戻しが起き、横ばいかやや円高になることが考えられる。また、米国でのインフレが長期化したとしても米国景気の弱さを考えると、やや円安か横ばいが予想され、少なくとも再び1ドル150円を目指すような展開にはならず、2022年ほど円安は進行しないと思われる。つまり、仮に米国株式が2023年前半に2022年と同じようにドル建てで下落した場合、円建てだと2023年前半は円安の恩恵はあまり期待できず、2022年以上に下落幅が大きくなることが予想される。
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2022年12月19日「研究員の眼」)

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