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- 米連邦地裁、Googleへの是正措置を公表~一般検索サービス市場における独占排除
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2025年10月22日
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■要旨
2025年9月2日、米国コロンビア特別区連邦地裁でGoogleの一般検索サービスの反競争的行為に関して措置命令が出された。これはGoogleの慣行が反競争的であるとした判決(責任裁判)を受けて、是正(救済策)を求める原告(米国や州)の求めに応じて出された判決(以下、本判決)である。
本判決では事業の一部売却など構造的な救済策の採用を否定し、ChromeおよびAndroidの売却については認めなかった。これは反競争的行為と構造的な救済策の間に「重大な因果関係」が存在することを原告が立証できなかったためであり、またより「深刻でない救済策」では不十分であることを原告が立証できなかったためでもある。
他方、単なる行為の差し止めに加えて、情報の提供を競合者に対して行うべきことを裁判所は求めた。まずGoogle検索をデフォルト設定することを条件とするGoogleと委託製造業者等との契約を差し止めた。ただし、Googleは責任裁判の判決以降、これらの排他的な配布契約を自発的に取りやめている。
また、本判決では検索インデックスデータや検索品質向上のために使われるユーザー側データの基礎部分を提供することをGoogleに求めている。さらに検索結果を競合者に提供する検索結果シンジケーションを行うことをGoogleに求めた。これらはGoogleの持つ巨大なクエリデータによって高品質化され、あるいは構築されたものであり、巨大なクエリデータによって築かれたGoogleの優位性を失わせることを目的としている。
これらのデータだけでは競合者はGoogleと直ちに太刀打ちできるわけではなく、創意工夫が必要となる。この点は本判決がイノベーションを阻害しないために行ったものである。
さらに本判決では、Googleが生成AIを自社検索サービスに組み込み、一部検索機能を果たすようになっていることにも鑑み、排除措置の中に組み込むこととした。たとえば生成AIを排他的な配布契約に含めることなどが禁止されている。
■目次
1――はじめに
1|連邦地裁判決
2|連邦地裁判決の要約
2――生成AI
1|定義
2|AIの検索機能への統合
3|大規模言語モデル(LLM)
4|生成AI市場
3――検索アクセスポイント
1|生成AIによる検索へのアクセス
2|囲って検索(Circle to Search)
3|Googleレンズ
4――Googleの配布契約(修正・権利放棄)
1|委託製造業者(OEM)
2|携帯キャリア
5――法律の結論
1|法的枠組み
2|責任裁判での判断
3|Googleの違法行為の成果
4|生成AIを含むこと
6――救済策特定にかかる結論
1|反競争的行為の禁止にかかる差止命令
2|構造的な救済策
3|追加の救済策
4|追加の行動上の救済策
5|報復防止・行政的救済
6|判決の発行日・期間
7――検討
1|構造的救済策の否定
2|実施される救済策
3|生成AI
8――おわりに
2025年9月2日、米国コロンビア特別区連邦地裁でGoogleの一般検索サービスの反競争的行為に関して措置命令が出された。これはGoogleの慣行が反競争的であるとした判決(責任裁判)を受けて、是正(救済策)を求める原告(米国や州)の求めに応じて出された判決(以下、本判決)である。
本判決では事業の一部売却など構造的な救済策の採用を否定し、ChromeおよびAndroidの売却については認めなかった。これは反競争的行為と構造的な救済策の間に「重大な因果関係」が存在することを原告が立証できなかったためであり、またより「深刻でない救済策」では不十分であることを原告が立証できなかったためでもある。
他方、単なる行為の差し止めに加えて、情報の提供を競合者に対して行うべきことを裁判所は求めた。まずGoogle検索をデフォルト設定することを条件とするGoogleと委託製造業者等との契約を差し止めた。ただし、Googleは責任裁判の判決以降、これらの排他的な配布契約を自発的に取りやめている。
また、本判決では検索インデックスデータや検索品質向上のために使われるユーザー側データの基礎部分を提供することをGoogleに求めている。さらに検索結果を競合者に提供する検索結果シンジケーションを行うことをGoogleに求めた。これらはGoogleの持つ巨大なクエリデータによって高品質化され、あるいは構築されたものであり、巨大なクエリデータによって築かれたGoogleの優位性を失わせることを目的としている。
これらのデータだけでは競合者はGoogleと直ちに太刀打ちできるわけではなく、創意工夫が必要となる。この点は本判決がイノベーションを阻害しないために行ったものである。
さらに本判決では、Googleが生成AIを自社検索サービスに組み込み、一部検索機能を果たすようになっていることにも鑑み、排除措置の中に組み込むこととした。たとえば生成AIを排他的な配布契約に含めることなどが禁止されている。
■目次
1――はじめに
1|連邦地裁判決
2|連邦地裁判決の要約
2――生成AI
1|定義
2|AIの検索機能への統合
3|大規模言語モデル(LLM)
4|生成AI市場
3――検索アクセスポイント
1|生成AIによる検索へのアクセス
2|囲って検索(Circle to Search)
3|Googleレンズ
4――Googleの配布契約(修正・権利放棄)
1|委託製造業者(OEM)
2|携帯キャリア
5――法律の結論
1|法的枠組み
2|責任裁判での判断
3|Googleの違法行為の成果
4|生成AIを含むこと
6――救済策特定にかかる結論
1|反競争的行為の禁止にかかる差止命令
2|構造的な救済策
3|追加の救済策
4|追加の行動上の救済策
5|報復防止・行政的救済
6|判決の発行日・期間
7――検討
1|構造的救済策の否定
2|実施される救済策
3|生成AI
8――おわりに
(2025年10月22日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2024年4月 専務取締役保険研究部研究理事
2025年4月 取締役保険研究部研究理事
2025年7月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
松澤 登のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/10/22 | 米連邦地裁、Googleへの是正措置を公表~一般検索サービス市場における独占排除 | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/10/15 | 芝浦電子の公開買付け-ヤゲオのTOB成立 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
2025/10/09 | ソニーのパーシャル・スピンオフ-ソニーフィナンシャルの分離・上場 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
2025/09/18 | 欧州委員会、Googleに制裁金-オンライン広告サービス市場での支配力濫用 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
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